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勇者の系譜~俺に勇者のスキルがなくとも~  作者: アオト
第三章 マテウス王立上級学校最終学年
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第五十八話 実家にて

 今回は何の問題はなく、ちゃんと中間休みを貰えることが出来たので、約半年ぶりに実家へ戻る事になった。

 ただ休みの後半には再びエイマーズ領へ行き、ラウレンス侯爵と話に行く事をディアナにしっかりと約束された。


「もう復讐だけの男ではありませんのでいいですか、これでいいのかな」


「何をこんな道の真ん中で言っているんだ。頭がおかしくなったんじゃないだろうな」


 嫌な者でも見ているような顔をしたイーゴリが馬上から俺を見下ろしている。

 まさかディアナとの結婚を認めて貰う為の練習だったとは言えず、口籠ってしまう。


「俺の事は気にしなくていいぞ、俺はディアナの事はもう何とも思っちゃいないんだ。それに俺には大切な人が出来たからな」


「そっそうなのか、相手は誰なんだ」


「わ・た・し・だよ」


 イーゴリに並走していたユナが言ってくる。

 並走しているので、まさかとは感ずいていたがやはり本当だったようだ。

 それにしてもこの間ユナは誰とも付き合う気は無いと言うような事を言っていたと思うのだが。


「何、変な顔してんのよ、仕方が無いでしょ、気持ちは変わるもんなの」


「お前には色々迷惑を掛けてしまったが、そのおかげでユナと話すきっかけにもなったんだ。ありがとうな」


「おっおう」


 二人は仲良く馬を走らせて言った。

 テオはこの休みの間にユナの実家に押し掛けると言っていたが、頼むから思い留まって欲しい。

 テオとは長い付き合いだが何処に実家があるのか知らなかった事を心から悔やんでしまう。


 次にテオと再会したときはどのような感じになるのか想像しただけで胸が痛んでくるようだが、考えれば考えるほど、俺の心は落ち着いて来た。


 さぁ、実家に帰ろう。


 いつものように走って実家に向かうが、このスキルを授かってから滅多に馬に乗る事が無くなって来た。

 騎士を目指す俺はこれでいいのかと疑問に思ってしまうが、全速力で走ったおかげで昼過ぎには到着する事が出来た。


「ただいま戻りました」


「おっ死神が戻って来たか」


 ソヒョン姉がいきなりの挨拶をかましてくる。


「久しぶりです、今日は遊びにいらしたのですか」


「それがね、実は此処に住んでいるんだよ、一応護衛隊の秘書になるのかな」


「護衛隊に秘書なんて必要は無いじゃないですか、それに実家は隣にあるのに何で」


「この家の広さを君は知らないのかな」


 意味の分からない事を言ってくるが、もう何を言っても無駄だろう。

 どうせ祖父が言い出した事だと思うが、四六時中、夫婦揃ってここで働くなんて、息が詰まらないのだろうか。


「アルか、ちょっと部屋に入って来い」


 部屋の中から祖父に呼ばれ扉を開けると、何故か書類の山に埋もれているクレイグの側で外の景色を眺めている祖父が立っていた。


「おじい様戻ってまいりました」


「挨拶などはいい。それよりハルバートの事は悪かったな、そうういえばあれは魔剣だって事をすっかりと忘れていた。貴様が幼い頃あれで練習させたこともあったが、今にして思えば危なかったな」


 初めて反省している祖父を見たが、それは部下であるレオニダスからも元弟子である国王様からもかなりきつく言われてしまった事にあるようだ。


 それに国王様は俺に何かしらの影響が出ていないのか調べるために、密かに聖職者を学校に派遣してくれたそうだ。


「そこまでするほどの危ない事だったんですか」


「そうらしいが、ほらっ儂は勇者だろ、魔剣如きの影響なんか気にした事も無かったわい」


「ランベルト様はもっと反省して下さい。私にどれだけ迷惑を掛けてくれたのか知っていますよね、それなのに……」


 クレイグは更に興奮してきたので、祖父は俺を連れて部屋を出てしまい、その部屋にはソヒョン姉が祖父によって送り込まれた。


「あれでいいのですか」


「気にするな、あやつはたまに感情が爆発してしまうんだ。それを鎮めるためにソヒョンの奴をこの屋敷に住まわしているんだ」


 クレイグは祖父の護衛隊長なので、本来の軍における地位はそれなりに高かったようだが、今回の事で降格になってしまったらしい。

 祖父の立場は全く変更が無いのに比べればかなりの可哀そうな処分だと思う。


 祖父はすでにそんな事はどうでもいいようで、俺を別館に連れて行くと、奥の部屋の中に大切に保管されてあるあのハルバートを見せてきた。


「ほれっ何ヶ月もかけて魔の部分を封印する事に成功したぞ、今度からはこれを使うといい」


 渡されたハルバートは色が銀から真っ白に変化して、更には突起の部分に鎖が巻かれている。


「色が変化しているのは良いのですが、この鎖は何なのですか」


「それで封印しているらしいから引きちぎるなよ、本当は捨ててしまおうと思ったが、普通のハルバートより優れているからの」


 手に取って見るとやはりこのハルバートは俺の手にしっくりと馴染むようだ。


 若干の不安はあるが、それを遥かに上回る喜びがある。

 

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