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勇者の系譜~俺に勇者のスキルがなくとも~  作者: アオト
第三章 マテウス王立上級学校最終学年
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第五十七話 三ヶ月後

あれから魔剣について調べたりレオニダスに相談した結果によると、父の剣は溶かされてしまった事で魔の力を抑えられていたようだが、地竜の魔力に触れた事によってその力を取り戻したのだろう。


 レオニダスはあの後で俺の異質な姿を見てしまった生徒に対し、あれは全て魔剣が引き起こした結果だと説明をしたが、それでも俺に対する恐怖心は簡単に拭えるのもではないようだ。


 その原因の一つである地竜は俺の読み通りブレスを放てないようにしてあったそうだが、ヴィーランド少尉の憶測よりも遥かに回復力が高かったそうだ。


「邪竜に落ちてしまった地竜は判断付きにくいな」


 そのように少尉は説明をしてくれたが、俺にはあれが何故に邪竜と呼ぶのか分からなかった。


 レオニダス達の考えではヤーヒムが風魔法で地竜の動きを止めて、その間に俺が体力を削り、弱ってきたらメノンが地竜を支配すれば簡単に決着がつくと思っていたそうだが、連携の取れていない俺達には無理な話だ。


「何をたそがれているんだ、死神さん」


「テオ、その呼び名はどうにかならないのか」


「俺は良いけど、周りは無理だろうな。あの時のお前の行動は凄まじかったからな、そう簡単には全て魔剣のせいだとは思わないんじゃ無いか」


「卒業するまで言われ続けるんだろうか」


「まぁ余り気にしなくていいんじゃないか、あの地竜はマシマ地区で相当な被害を出したそうじゃ無いか、だからあの地区出身にとってはお前はヒーローだよ、それより早く行かないと遅刻するぞ」


 この間から戦闘訓練は戦術課と合同で行うことになっている。

 自動で発動してしまう以外のスキルの使用は禁止されており。俺の相手は殆どがイーゴリが行っている。


「ほらっ立てよ、どうせ痛く無いんだろ」


「お前、スキルを使っているんじゃ無いか、身体の動きが異常だぞ」


「ヴィーランド少尉が見張っているのに使用する訳ないだろ、俺の基礎能力がお前より上なんだよ」


 イーゴリはあの時から何故か俺に対しての態度がまた変化したように思え、昔のイーゴリなら俺が立ち上がるのを待たずに攻撃を仕掛けてきたが、最近はそんな事を一切して来ない。


「お前何かあったのか、最近変わったな」


「言いたくないがあの時のお前を見て思ったんだ、周りに奴はお前が楽しそうに攻撃をしていると思ったらしいが、俺には泣いているように見えたんだ」


「まさか…………」


 イーゴリはスキルの力で視力を上げる事もでき、その目で見ると俺の顔は確かに笑っていたが目の奥は泣いているように見えたらしい。


「俺はお前の事がずっと嫌いだったし、憎んでいたかもしれない。だから俺はずっとお前を見ていたからな、ディアナを奪ったお前の肩は持ちたくないがそれが事実なんだよ。他の奴らはお前の事を死神と呼んでいるが、この課では誰も言っていないはずだ。俺が決して許さないからな」


「有難うな、それにしても俺は泣いていたのか……」


「考えるのは後にしろよ、俺の相手はもうお前にしか務まらないんだからな」


 俺はあの時理性を失っていたので、はっきりとは思い出せないが事実はどこのあるのだろう。

 思考の深みに落ちて行ってしまいそうになったが、これ以上イーゴリを待たせる訳にはいかないので訓練の続きを行なった。


 合同訓練が終わった後で、テオに先程の話をしてみる。


「なぁあの時俺が泣いているように、イーゴリは見えていたらしいが、テオはどう思う」


「どうだろうな、あいつみたいに視力が良くないとあの距離からだと目の奥なんか見える訳無いよ、まぁその可能性のあるんじゃないか」


「どうしてだ」


「お前は復讐心を無くそうとしているんだろ、それなのにあんな風に戦うなんて、本当のお前だったら抵抗はしてもおかしくは無いんじゃ無いか」


 それからも二人で真剣に考察したが結局は明確な答えは出る事は無かった。

 ただ、イーゴリは俺に対して敵対心があるはずなのに俺を庇う行動に出ていたことが意外でならなかった。


「あなた、訓練お疲れ様」


 ディアナがいきなり背後から抱き着いて来る。

 俺達の側を通過する生徒からは冷やかしの目を向けられるがディアナはそんな事を全く気にしていない。


「あのな、その言い方はよしてくれないか」


 ディアナ胸を背中に感じているので名残惜しい気もするがそっと腕を振りほどく。

 ディアナは俺の呼び名が蔓延するようになってから、どんどん積極的になってきたような気がする。


 嬉しい反面もあるが、照れくささの方が遥かに勝っているのでユナ達に相談すると、実はディアナは俺が怖いだけの人間じゃないと周りにアピールをする為に行っている様だった。


 随分と浅はかな考えだと思うが、それを聞いてからは優しく振りほどく様にしている。


「お前ら相変わらずだな、独り者の俺には羨ましいよ」


「あんたはユナを早く諦めなさいよ、もてない訳じゃ無いんだから」


「嫌だよ、俺の事を認めてくれるまで俺は待つんだ」


 テオは涙目になりながら走り去って行った。

 そんな平和な時間を過ごしながら俺達は学生最後の長期休みを迎えるのであった。 

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