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勇者の系譜~俺に勇者のスキルがなくとも~  作者: アオト
第二章 マテウス王立上級学校六学年
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第三十七話 イフナースの愚行

 俺の巻き添えになってしまったディアナは、特に機嫌が悪くなっている様子は無いのだが、俺の方が少し気にしてしまう。


「何でディアナまで帰らなくてはいけないんだろうな、俺のせいですまないな」


「別に私はどうでもいいわよ、あんな事を言うお父様とあれ以上一緒に居たくないと思ったから丁度いいわ」


 俺とイフナースが出て行くように言われた特に、ディアナも当事者だからと、一緒に帰る事を言ったのだった。


「それより帰る間際になってフィンレイ王子と何やら話していたけど、何を話していたの」


「大したことじゃないよ、それより父とラウレンス侯爵が親友だった何て知っていたか」


 俺にとってはそっちの事が気になってしまう。

 てっきり祖父のせいでラウレンス侯爵が俺の家を嫌っていると思っていたら、亡き父のせいだったようだ。

 しかも、親友だったと言うのだから訳が分からない。


「私も初めて聞いたよ、あんたに近づくなと言われていたから、余程ランベルト様の事が嫌いなんだと思っていたけどね、二人の間に何があったのかしら」


 学校に戻る為には大通りを使えばいいのだが、俺達は途中で脇道に入って農場を通過して行く。

 道は整備されていないが、この道が早く学校に着くという事になるし、それ以上に道が暗くなっているのが都合がいい。


「止まれよ、こんな道を選んでこのまま無事に帰れるとは思っていないよな」


 先程の護衛が、更に人数を増やして俺達の背後から声を掛けて来た。

 彼等の更に後ろには木の陰に隠しきれていない身体が見える。

 はっきりとは分からないが、イフナースに違いない。


「分かりやすい程の馬鹿なんだな、俺とディアナを殺したら直ぐに疑われるとは分からないのかね、それで大臣の息子とは呆れてしまうよ」


「お前の死体は見つからないように燃やし尽くしてやるよ、それにお嬢ちゃんは楽しませてもらった後で記憶を消してやるから、そんな心配しなくていいんだよ」


 記憶を消す事が出来るなど聞いた事は無い。

 こいつらの中にそれが出来る貴重なスキルの持ち主がいるのだろう。

 折角のスキルの持ち主を失ってしまうのは残念だが、この場合は仕方が無い。


 ディアナには決してこの場から動かないように言いながら、俺は背中からハルバートを取り出す。

 月明かりに輝く相棒は怪しい光を纏っている様だ。


「そんな物を振り回している間に殺してやるよ」


 六人全員が俺を殺す為にやる気になっているようで、先程の戦意喪失したと思えない程、威勢よく俺を睨んでくる。

 武器もあるし、人数も増えたというのが自信の表れなのだろう。

 それにこの状況で、大振りなハルバートを持つ相手になら簡単に殺せると信じ切っている様子が俺にとっては哀れでならない。


 俺は振りかぶりながら一番近くにいる男に振りかぶりながら近づいて行く。

 そいつはハルバートの動きに集中していて、振り下ろしたら躱して俺に攻撃してくるだろう。


「一人じゃねぇんだよ」


 いきなり背後から斬りつけられるが、俺には効くはずもない。

 振り向くと同時に斜め振り下ろし、剣もろとも叩き斬った。

 そいつの剣は刃こぼれしている様子はなかったので、普通の状態の俺の身体は木剣は砕く事が出来ても、鉱物の剣は壊す事が出来ないらしい。

 

 そんな事を考えながらも、俺は防御は一切スキルに任せてただひたすらハルバートを振り回した。

 奴らは躱す事だけに集中すれば死ぬことは無いと思うが、俺に攻撃をするたびに隙が生まれるので、俺はそこに付け入ればいいだけだ。

 相手の攻撃を躱す必要がないのだから、端からみたらおぞましい事になっていると思うが気にしていられない。

 

 俺は顔色一つ変えずに一人ずつ斬り殺していく。

 ただ、それだけだ。


 唯一この場から逃げ出した護衛の男は何処からか投げられた投剣によって心臓を貫かれてしまっている。

 そして、全ての護衛が死に絶えたとほぼ同時に、木の陰に隠れていたイフナースはフィンレイ王子の近衛兵によって捕らえられていた。

 いつの間にか現れた近衛兵を見て、ディアナは理解が追いついていない。


「いつの間に現れたの、それに何なの」


「フィンレイ王子の護衛の方々だよ、俺も何処見ているのか分からなかったけど、この事はフィンレイ王子から聞いていたんだ。じゃないと俺がディアナをそのままにして戦う訳ないだろ、俺のせいで怪我なんかさせてたまるかよ」


 ディアナは俺の言葉に何も返してこず、後ろを向いてしまっている。言わなかった事が不味かったのだろうか。


「ちょっといいかな、私達はこいつを連れて戻るが、君達も当事者としてくるかね」


「いえ、宿舎に戻ろうと思います。戻ったところでそいつが泣き叫ぶ姿を見なくてはいけませんから」


 黒装束の近衛兵の方達はイフナースを連れて去って行こうとしたが、その中の一人の男が俺に近づいて来た。


「君は自分のスキルをまだ信じていないようだね、攻撃を受ける時にほんの少しだけ身体が強張ってしまって動きが止まってしまっていたよ、効かないのであれば動きを止めない方がいいと思うし、このくらいの相手でスキルに頼りきりでは後々対処が出来なくなってしまうよ、まぁ君の歳にしては出来ていると思うけどもっと頑張りな」


 たったあれだけで、よくここまでのアドバイスをくれたと思う。

 やはり、王子の近衛兵だけあって普通とは違う様だ。


 今回はハルバートに身体が振り回されてしまって、こんな無粋な戦い方を選んでしまったが、もう少し力をつけなくてはいけないと思う。


 イフナースは国王様の逆鱗に触れてしまい、弁明をする時間を全くあたえてもらえないまま、その場で処刑されてしまった。

 大臣は辞任させられて、爵位の降格になってしまったので、この国で唯一の領地持ちの男爵となってしまった。


 翌日、レオニダスに呼び出され、ディアナと共にその事を聞かされたが、特に喜びはないし、何の感情も湧かなかった。

 


 

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