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勇者の系譜~俺に勇者のスキルがなくとも~  作者: アオト
第二章 マテウス王立上級学校六学年
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第三十四話 晩餐会で

 晩餐会の行われる会場は奥にダンスフロアがあるくらいのとても広い会場だ。

 

 その中でも上座と思われるテーブルに俺と母は座らされ、その同じテーブルには王妃と二人の王子が座っているので何とも言えない緊張感が漂っている。

 このテーブルには残された席は二つだけしか無く、それは勿論、祖父と国王様が座る席だろう。

 母は先程から王妃と談笑をしているが、何でそんな風に普通でいられるのかは俺には全く理解する事が出来ない。


「君は卒業したら直ぐにランベルト様の秘書にでもなるのかね」


 第一王子であるフィンレイが親し気に話し掛けてくる。


「いいえ、私は国境警備隊に志願しようと考えております」


「それはまた珍しいな、何だったら私の近衛兵に推薦してもいいのだがな」


 何て答えたら失礼に当たらないか考えていると、第二王子でもあるハミッシュも会話に参加してきた。


「兄上、それは無理でしょう、彼のスキルだと良い盾にはなると思いますが、それだけではありませんか、仮に彼を優遇いたしますと、ランベルト様に取り入ろうとしているのが見え見えですよ」


 どうやら第二王子は俺のスキルが好みでは無いらしい。


「すまんなアル君、こいつは何も君の事を分かっていないんだ。情報は大事だとこいつに何度も言っているのだが、やはり理解する頭が無かったようで残念だよ」


 柔らかい口調のフィンレイ王子だったが、それが余計に気に障ったようで俺の事をさておいてどんどんヒートアップしてきてしまっている。


「騒がしいぞ貴様らは、ランベルトの祝いの席だというのが分からんのか」


 二人の王子を怒鳴りつけながら国王様が席に座った。

 俺と母は急いで立ち上がり挨拶をしようとするが、国王様は手で座るように合図を出してきた。


「気にしなくていいから気を楽にしなさい。もうすぐランベルトも来ると思うぞ」


 俺達には優しく微笑みかけるが、二人の王子には鋭い視線を見せて睨みつけている。

 初めてこんな近くで国王様を見たが、遠目からの印象だとおっとりとした人物のように思えたが、実際は目の奥に鋭さを持っていた。


「国王様、早くメシを食ったらこいつと狩りにいきたいのだが、行っていいかね」


 普段と同じような態度で国王様に話し掛けながら祖父が席に着いた。


「そんな事は明日でも良く無いか、それとも今日でなければならない理由があるのか」


「こいつの為にハルバートを作ったんだよ、変わった形状をしているし扱い方があるから儂が直に教えたいのだが、こいつは明日になると学校に戻ってしまうからな」


「ならばレオニダスに任せればいいではないか、頼むから今日は大人しくしていてくれないかね」


 国王様は子供に聞かせるように話している。祖父の態度は臣下とは思えない程気楽にしている。それを国王様も王妃や王子までもが何も思っていない様だ。それどころか王子に至っては畏怖をはらんでいる様な視線を祖父に向けている」


「やはり駄目か、じゃあ明日、孫の代わりに王子を連れて狩りに行こうかの」

 

 その瞬間に二人の王子の顔色が悪くなったような気がする。


「申し訳ありませんが、明日は公務で手一杯ですので」


「行きたいのですが、一日中会議に参加しなければなりません」


 二人ともあからさまな言い訳で、祖父の目を見ようともせずに答えている。

 多分、二人とも祖父と狩りを言った事があって、その時にかなりつらい思いをしたに違いない。

 

 そんな話をしていると目の前には豪勢な料理が並べられ、全てのテーブルに行き渡った後で国王様の掛け声で晩餐会が始まった。

 このテーブルでは国王様と祖父が話をしているのを周りが黙って聞いていて、たまに話を振られるといった感じで時間が過ぎて行く。

 その中で祖父と国王様と関係性が段々と掴めてきた。


 どうやら国王様が就任するまでの間、かなりの長い期間に渡って師弟関係にあったようだ。


 突然、音楽隊が演奏を始め、ダンスホールに向かって客達が移動を始める。

 それに伴って挨拶回りも本格的に始まったようで、祖父の周りにも挨拶の為の列が出来始めた。

 流石に国王様には列が出来る事は無く、近衛兵が順番に挨拶をしたい人間を連れてくるようになっている。

 普段ならこんな近くで国王様に話す事など出来ないものだから。このような機会は絶好のチャンスなのだろう。


 国王様とは違って、王子の二人は積極的に各テーブルを回って話し掛けている。

 何だか大人の世界を垣間見たような気がする。


 俺の周りにも訪れる人がいるのだが、俺に関心があるというよりも、祖父と繋がりを持ちたいという気持ちが透けて見えるような気がして、何だか居心地が悪い。

 他のテーブルでは若い男女がダンスのペアを決め始めている様だ。

 俺には避けて通りたい時間が始まってしまったようで、あえて周りと視線を合わせるような事はしないようにした。

 

 それでも何人かの女性が俺の元を訪ね。ダンスを踊らないかと誘ってくるが、母や王妃が何故か俺よりも早く断りを入れてしまい、俺は何も話さないまま座り続けている。


「暇そうにしてるね、少し散歩でもしない」


 ディアナが学校で見る姿とは全く違って、ドレスアップされた姿で話し掛けて来た。


「ディアナさんは大丈夫ですの、アル君と一緒にいるところをお父様が見たら何と思うのかしら」


「王妃様、ご心配は無用です。別に私はマイヤー家に取り入ろうとしているのでは無くて、ただの学友として話すのですから、エイマーズ家とは関係ありません」


 王妃は今まで断った女性と同じように拒絶している訳ではなさそうで、ただディアナの立場を心配しているようだった。

 さりげなく目線をディアナの父であるラウレンス侯爵の方に送っている。


 それに気が付いたラウレンス侯爵は何とも言えない表情で俺達を見ている。 




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