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勇者の系譜~俺に勇者のスキルがなくとも~  作者: アオト
第二章 マテウス王立上級学校六学年
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第三十一話 少しの進歩

 そのゴーレムに祖父はなにやら詠唱を唱えると、ストーンゴーレムの額に文字が浮かび上がり動き出した。


「ほれっさぁ戦うんだ。お前のスキルを見せて見ろ」


 そうは言われても、俺の剣は領主館に置きっぱなしなので戦いようがない。


「すみませんが、武器を貸して貰えませんか」


「何で持っていないんだ。身に付けていない貴様が悪いんだ。どうせ痛くないのだから素手で戦え」


「アル、がんばれー」


 簡単に言ってくれるが、俺は貯めた苦痛を使い切ってしまってからそれ程時間が経っていない。

 どうせなら祖父に説明したかったが今更聞いては貰えないだろう。どうやって戦うか考えが纏まらない内に、俺の目の前まで迫って来た。


 ゴーレムは右手を振りまわしてくる。俺はあえて躱す事をしないでそのまま顔で受けると、痛みはかんじないものの、衝撃で後ろに飛ばされて倒されてしまう。

 そのままゴーレムは太い脚で俺の身体を何度も踏みつけて来た。その威力は中々で俺の身体は地面にめり込んで行く。


「何をしておる、早く反撃せぬか」


 祖父は俺がただやられているように見えるかも知れないが、俺には考えがあって踏みつけられている。

 俺は頃合いを見て部屋の中に入って行った。もうこの部屋に入る事は手慣れてきたようでただ思うだけで入れる。


「さて、ここからどうすべきかな」


「あんな奴早く倒せばいいのに」


 またしても声が聞こえて来たので部屋を見渡すと、初めて部屋の片隅にうっすらと光る物体が見えた。


「君はスキルでいいんだよな」


 その物体に話し掛けながら近づこうとするが、俺が一歩近づくとその分離れて行ってしまう。

 小さな部屋の中なのでそんな訳はないはずだが、何故か距離は縮まらない。


「早く決めちゃいなよ、それともこのまま出て行く」


 やはり会話はしてくれないので、俺は諦めてレバーを上げる事にしたが、想像通りにそのレバーは重たかった。

 上まで押し上げると同時に視界は現実の世界に戻って行く。


 6.


 予想より貯まっていると思う。

 それでも直ぐに数を減らしたくないので、踏みつけてくる脚を避けながら穴を抜け出した。


 今度は無茶苦茶に腕を振り回してくるが今回は受ける事は止めて、すべて躱していく。


「逃げているばかりではつまらないじゃないか、早く反撃をして見ろ」


 祖父のスキルとは違って、俺のスキルには段階が必要なのだから黙って見ていて欲しい。

 だが決して文句は口に出さず、いよいよ反撃をしてみようと思う。


 ゴーレムの攻撃は威力はあるがかなり遅いので、振り回している腕を潜りこむようにして、拳を腹の部分に当てる。

 感触は感じなかったが、たった一度の攻撃でその腹にいい感じの穴を開ける事が出来た。


 5.


 後ろに回り込みながら思いきり飛び、その後頭部を思いきり殴りつける。俺の手は簡単に貫きて顎全体を削り取った。


 4.


 かなりのダメージを与えたのを確認してから部屋に戻って行き、初めて使い切る前にレバーを下ろす事が出来た。


 現実の世界に舞い戻ると、ゴーレムはその身体が崩れ始め、只の無機質な石へと変化していった。


「凄いじゃない、素手でゴーレムを倒すなんて、アルは意外と強くなったんだね」


 ソヒョン姉は俺の背中を叩きながら喜んでくれるが、俺は嬉しさよりもちゃんと自分の身体が動いてくれるか確認を慎重に始めた。


「どうしたんじゃ貴様、何かあったのか、体調でも悪くしたのか」


「いえ、そうではありません。力を使うと身体がいつも動かなくなってしまうので、確認をしていました」


 考えてはいた事だったが、頭に浮かぶ数字が無くなる前にレバーを下ろすと、ただ普通の状態に戻る事がようやく証明された。

 数字の理由は完全に理解出来た訳では無いが、今回の事を思い出すと力を使うたびに一つ減っていくのだろう。


 まぁ二つ目のレバーを上げた時はそうとも限らないが。これからは一つずつゆっくりと調べて行くしかない。


「素手で此処まで出来るとは大したものだな、次は二体同時に戦ってみるか」


「おっいいねぇ、アル今度も負けるんじゃないよ」


「あの、ちょっと待ってもらえますか、俺のスキルは有限でして、もう余力が余りないので出来れば次回にして欲しいのですが」


 祖父は余り納得はしてくれなかったが、しつこく説明するとしぶしぶ諦めてくれた。

 この状態では俺のスキルを調べる事は無理だが、それでも俺は心が弾んでいる。


 何故なら俺のスキルに形がある事が判明したからだ。まだ会話になっていないし、形もぼんやりとしたものだが、この先スキルを使いこなして行けばもっと姿がはっきりと分かるようになるかもしれないし、会話も出来るかも知れない。


「何だ、もう終わりなの、それだったら次はダンスの練習をしないとね」


「へっ何を言っているんだ」


 ソヒョン姉がいきなり訳の分からない事を言ってきたが、何で俺がダンスの練習をしなければいけないのだろうか。


 だがまたしても俺の意見は無視され、祖父が戻ってしまった後はただひたすらこんな場所でダンスの特訓が続けられた。


 何時間も教えられたか分からないが、俺にはセンスの欠片も無いようで、とうとうソヒョン姉は諦めてしまった。


 





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