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勇者の系譜~俺に勇者のスキルがなくとも~  作者: アオト
第二章 マテウス王立上級学校六学年
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第二十六話 訓練しないと

 レオニダスから出された課題はどうにか一月程でクリアをする事が出来たが。

 その間、俺の方はずっとグレタの操り人形に過ぎなかったので何も進歩はしていないように思える。


「どうしたんだ、学校に戻れるのに何で浮かない顔をしているんだ」


 何かをする訳でもなく、ただ外を見ている俺にマグロフは気にかけてくれている様だ。


「もう少しここにいて、今度は俺のスキルの訓練をしたいんですよね」


 そんあ俺訴えを聞いて、マグロフは呆れた顔を見せてくる。


「あのな、ここは訓練施設じゃないんだぞ、そんな事は学校でやれよ、焦り過ぎなんだよお前は」


 ここに来てから魔獣と戦う事しかやっていなく、通常の研修でやるべき事は一切やっていない。

 本来ならば兵士の日常の仕事を学ばなければいけないのだったと思い出した。


「そうでしたね、グレタが余りにも一気に成長したので羨ましく思ってしまいました」


「まぁたまにスキルを覚えると、お前みたいに空回りする奴がいるんだよ。確かに解釈次第では可能性が広がるスキルだからな」


 その夜は簡単な送別会が開かれ、翌朝には学校に戻ることになった。

 特に指示が無かったので今回は馬で帰ることになり、端からみれば無言の二人が乗っているようだが、俺達はずっと会話をしている。


(ねぇ元気がないけど大丈夫、中間休みが無くなったのがそんなにショックだったの)


(そうんなんじゃないよ、今度は俺が狩りをしてスキルを伸ばしたかったんだよ、学校での訓練は所詮訓練だからな、実には敵わないよ)


(そうなんだ、じゃあ、帰る前にあいつらをやりなよ)


 グレタが指を刺した方角には草原の中をゴブリンが三体歩いている。見つけてしまったからには駆除しておいた方がいいだろう。


「ちょっと言ってくるけど、仮に何かあったら俺の事は気にしなくていいから逃げるんだぞ」


「大丈夫だよ、その何かがあるようならアルに駆け付けてもらうよ、その時は抵抗しないでね」


 俺は馬から降りて草原の中に足を踏み入れた。

 テオみたいに音を立てずに近づく事は出来ないが、なるべく静かにしていたのに向こうは早くも俺の姿を発見して、その醜い顔を更にゆがめながら俺の方に向かって来る。

 俺は息を整え集中すると部屋の中に入る事が出来た。

 

 グレタの操り人形の時に暇つぶしとして練習していたので、部屋に入ることは簡単に出来るようになっている。


 俺は直ぐに一つ目のレバーを上げた後で、その隣も上げるか考える。

 一つ目のレバーを上げるとスキルの効果が強化されるとの予測だが、果たして二つ目を上げるとそれがどう変わるのか試したいような気もする。


「ねぇそれも上げるのかい」


 久しぶりに聞こえて来た声だった。ここのところ、いくら部屋の中を歩いても声は聞こえてこなかった。


「久しぶりだな、聞きたいんだが、これを上げると何が起こるんだ」


「早くしなよ、眠いんだからさ」


 相変わらず俺との会話をする気はないようだ。

 ただこのまま戻ってもつまらないので試しにレバーを上げて見る事にした。力を使い切らなければ酷い事にならないと信じて。


(ねぇ何してんの、隠れ切れていないからね)


(もちろん知っているよ、今から討伐するからさ)


 俺の頭には数字が浮かんでいる。


 67


 ゴブリンが迫って来たので一度距離をとる為に離れることにした。

 身体の動きはいつもと変わらず、それだけでは数字は減っていかない。やはりこの数字は使用しないと減らないのだろう。

 ただ何かが変わったような感覚はなく、何をすべきか考えてしまう。


(力を纏わせるんだよ)


 部屋の中で聞こえた声が、初めて現実の世界でも聞こえて来た。


「レオニダス様のようにか、それとも身体になのか」


 ゴブリンから逃げながら答えを待つが返答は返って来ない。

 諦めて剣を握り絞め、レオニダスがやった時の仕草を思い出しながら試すと、俺の剣が光を纏い、光の剣が長く大きくなっていく。


 体の中から何かが抜けて行く様な気もするが、まだ行けるだろうと判断して大木の様になるまで光の剣を育ててみた。


(アル、さっきから何をしてるの、ほら剣を見てないで前を見ないと)


(なぁそれより俺の剣は凄く無いか、こんなに輝いてるのに眩しく無いんだぜ)


(何を言ってるの、いいから早くしなって)


 グレタには俺の剣の輝きは見えていない様だ。

 俺は剣を掲げたり構えたりしているが、重さも特に変わってはいない。


 その間に俺はゴブリンの攻撃を食らっているが、何の痛みを感じる事が無いどころか傷一つついていない。

 レオニダスのように斬撃を飛ばす事が出来るかも知れないと思い、またしてもこの場から逃走を図る事にした。


(何やってんのよ、もう)


(次はちゃんとやるよ)


 ゴブリンとの距離が開き、迫って来る奴らに対して横薙ぎに剣を払う。軽くしてしまったせいなのか、それとも飛ばす事が出来ないのか知らないが、光の剣は剣と同じ動きをしながらゴブリンを両断していく。


 離れているゴブリンに対して斬撃を飛ばそうとするが、光は飛ばず、仕方が無いので光の剣の間合いで切り伏せた。


 切れ味は合格だが、これではただ剣を伸ばしたに過ぎない。もう斬るべきゴブリンはいないので剣を元に戻そうとすると、頭の中の数字にようやく気が付く。


 8


 もっと数字があったはずなのに、これはどういう事だろう。更に数字は減り続け、剣を元に戻すとほぼ同時に数字はなくなってしまった。


 0


 俺の身体は急激に力を失うと共に身体全体に激痛が走る。


(アル、どうしたの大丈夫)


(……ごめん、助けて……)


 グレタは意識の無いアルを苦労して馬に乗せて、またしてもムスタホ村に逆戻りした。 





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