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勇者の系譜~俺に勇者のスキルがなくとも~  作者: アオト
第二章 マテウス王立上級学校六学年
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第二十二話 非情なレオニダス

 門番をしなくてはいけない兵士は何処に行ってしまったのかマグロフは気になったが、レオニダスに聞けずにいると、隊舎の前で兵士達がふらつきながらも素振りをしている姿が見えた。

 レオニダスはその兵士に近寄って行く。


「何だいもう疲れてしまったのかい。弛んでいる様だから日が暮れるまで続けるんだよ。もし諦めるようなら除隊してもらうからね」


 レオニダスの顔は真剣そのものだ。

 こうなっては何を言っても無駄だと分かっているはずだが、マグロフはこの村を守る責任の意地があるのかレオニダスに意見を言う。


「レオニダス様、彼等は一体何をしたのでしょうか」


 その言葉を聞いて、レオニダスは無表情に変わる。

 マグロフは危険が近づいていることに全く気が付いていない。


「弛んでいるからに決まっているだろう。大体ね、オーク如きで本部に連絡を入れる何でどうかしているんじゃないか、まぁそのおかげで彼等の訓練になったからいいものの、そうでなかったら賞罰ものだよ」


「お言葉ですが、この村を守る兵士の数が少ないので、何日も離れてしまって良いのか判断を仰いだだけです」


 マグロフは大粒の汗を流しながら必死に訴える。

 彼等はオークが怖いのではなくて、ただその間に村に何かがあってはならないと思っただけだ。


「それ位はやりくりしたまえよ、それ位出来ないと、君は一生そのままだけどいいのかな、君の慎重さは褒めるべきところもあるけれど、時と場合によるんだよ」


「申し訳ありません。ただ一つだけ聞いて頂きたいのですが、彼等には反省をさせましから仕事に戻らせてもいいでしょうか、申し訳ないのですが、レオニダス様は学校の教師になられたのですよね、それならば命令をするなら私を通して欲しいのですが」


 未だ大量の汗を流しながら顔は青覚めている。

 教師になったとはいえ、軍の上層部にいたレオニダスに意見を言うにはかなりの勇気がいるのだろう。


 レオニダスはめんどくさそうに自分の胸に付いている印を指さした。


「その印は総司令官の証ではないですか、この時期に何が起こったというのですか」


「ランベルト様の我儘に決っているだろ。自分は退いて領主の仕事に専念するのだそうだ。それだけならいいのに後任を勝手に私だと国王様に報告したんだよ」


 祖父は何を考えたのか、いきなりその事を直訴したそうだ。

 原因ははっきりした事は分からないそうだが、それを受け入れる代わりに国王様は祖父を新たに宰相という地位に付けて、それは国王様の相談役としてだけなので忙しくならないように取り計らったようだ。


 更には地位は上がるので伯爵から侯爵に格上げされる事も決定した。

 必然的に俺は侯爵家の跡取りとなってしまった事になる。

 この急展開に頭は混乱しているが、テオは何故か満面の笑みを浮かべている。


「それでは先生は教師から退かれるのですね、残念ですが今までありがとうございました」


 今迄に経験した事が無かった地獄の日々が終わりを迎える事になるので、その意味を知ったユナもグレタも若干、顔がほころんでいる。


「何だか君達は嬉しそうじゃ無いか、私の出世を喜んでくれるのは有り難いが、君達の事は責任もって卒業まで面倒を見るよ。そもそもアル君の為に教師にさせられたんだから止めさせて貰える訳は無いのだがね、国王様のこの老人に対して酷い仕打ちだよ」


 レオニダスはため息をついたが、テオ達はかなり落胆をしている。

 俺も同じく落胆をしているが、理由はレオニダスが教師を続けようがそうでは無いにしろどうでもいい。


 俺にとっては避けたいと思っていた貴族の世界にどっぷりと浸かる事が決定してしまったのでその事が気になってしまう。

 祖父なら自由に生きていけるが勇者で無い俺にはそれは決して許される事では無いだろう。


 その話が一通り終わった後で、今回の討伐の状況をマグロフは詳細に報告を始めた。

 報告が終了するとマグロフ達は退室して、俺達はレオニダスの出す答えをひたすら待っている。


「まぁ完璧には程遠いが及第点はあげるとしようか、もうすぐ中間休みに入るからディアナ君とテオとユナは学校に戻りなさい。ただグレタには補修が必要だね、アルもその補修に付き合うんだよ」


「先生、私の何が間違っていたのでしょうか、ちゃんと指示は出せたと思うのですが」


「君も状況を見ていたんだよね、だったらユナの伝言だけでは無くて自分の考えも言わなければ駄目だよ。それとも君はこの先も伝書鳩の役目しかしないのかね」


 レオニダスのきつい駄目だしにグレタは言葉を失ってしまった。

 その意味をグレタには痛い程思い当たる事があったからだ。


「さぁこの二人以外はさっさと帰るんだ。帰り道は自分の脚で帰るんだからね、早くしないと休みが減ってしまうよ」


 テオ達は項垂れているグレタに声を掛けようとしたが、レオニダスに睨まれたために黙って部屋を出て行こうとした。


「そうだ君達は荷物は持たずに帰るんだよ、荷物は私が運んであげるから心配しなくていいからね」


「手ぶらで帰るのですか」


「武器だけは持っていいよ、後は全て調達しながら帰るんだよ、それ位理解してくれないと困るな」


 余りにも酷い仕打ちにディアナは文句を言いそうになったが、テオに口を塞がれ無理やり部屋から連れ出された。

 テオはレオニダスの機嫌を悪くしてこれ以上酷い状況のなるのを避けたかった。


「さて、君達は出かけようか、私も色々あってね、そんなには此処にいていられないんだ」


 ほんのついさっきこの村に戻って来たばかりなのだが。

 もうどこかに連れていかれるようだ。



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