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勇者の系譜~俺に勇者のスキルがなくとも~  作者: アオト
第二章 マテウス王立上級学校六学年
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第十六話 ムスタホ村に向けて

 俺は退院したばかりなのでワゴンの中に入ろうとしたら俺の肩をがっしりとレオニダスは掴んできた。


「何で入ろうとしているんだ。君は充分すぎる程休んだのだから走るに決まっているだろう。それとも馬の代わりに馬車を曳きたいのかね」


「いえ、ちゃんと走らせてもらいます」


 俺とテオ以外はワゴンの中に乗って出発したが、少し経つと騎馬が馬車を追い駆けて来た。

俺達を抜かすときに怪訝な表情をしていたがそれでも馬車の前に回り込み、レオニダスに話し掛けた。


 暫く二人で何かを話しているようだが、突然レオニダスは方向転換をして再び学校に向けて進み始める。


「君達すまんな、少し問題が起こってしまったようなので少しの間待っていてくれないか」


 俺達は正門の前でただレオニダスが返って来るのを待っていると、先程の騎馬が二本の旗を手に持ちながら戻って来る。


「今からこの旗を馬車に取り付けるから手伝ってくれ」


 その騎士はレオニダスの代わりに操縦席に座っているテオに話し掛けた。


「分かりました。けどこの旗は王国軍の旗ですよね、私達の馬車に付けてしまってもいいのでしょうか」


「ちゃんと申請してきたから問題はない。だがなこれは大事な物だからなるべく汚さないでくれよ」


 簡単には外れないようにしっかりと取り付けていると、レオニダスが馬で帰ってきて、更にその腰に凄く不機嫌な顔をしたディアナが荷物を背負いながらしがみ付いていた。


「私は残念ながらいけなくなってしまった。だけどね道中怪我をしてもいいように魔法課から優秀な子を連れて来たぞ」


 ムスタホ村までは普通ならば二日程かかるので、学生だけで向かわせるのは心配なので回復魔法が使えるディオナに声が掛かったらしい。


「ほらもう行きなさい、その旗があれば危険な事に巻き込まれないと思うが注意していくんだよ、ムスタホ村にいる、マグロフ小隊長には連絡してあるからな」


 レオニダスはテオに小隊長に渡す手紙と通信魔道具を渡してきた。

 その魔道具で指定されたところと連絡を取る事は出来るのだが、そんな繊細な魔力操作をいつの間にかテオは身に付けたのだろうか。


「それでは行ってまいります」


 テオの掛け声でムスタホ村に向けて再出発した。俺は相変わらず馬車の後ろを走らされているので、学校の姿が見えなくなってくるとワゴンからディアナが顔を出してきた。


「アルは病気明けなんでしょ、そんな無理しなくてもいいじゃない。相当酷い伝染病だったんだってね」


 そんな設定だったと思い出したが、正直に答える訳にはいかず、苦笑いしながら曖昧に答えた。

 病気に関しては誤魔化す事が出来たようだがディオナは段々と不機嫌になって来た。


「ねぇ、いつもあの先生はあんな感じなの」


「どうした、何か言われたのか」


「どうしたじゃないよ、講義を受けている最中にいきなり入って来てうちの先生と話したと思ったらいきなり連れ出されたんだよ。直ぐに荷物をまとめろとだけ言って質問しようとしたら睨みつけるんだよ、もう一体私は何処に連れていかれるのよ」


 今にも泣きだしそうなディアナに同情したグレタが俺の変わりに優しく今回の事を話し始めた。

 するとディアナは何かに気が付いたようだ。


「ねぇもしかして貴方達のなかで通信魔導を使える人がいないんじゃないの、そうでもないと私がここに居る意味が分からないんだよね」


「テオに渡したんだからテオが使えるんじゃないか」


 前の方から「使える訳がない」と返事が返って来た。ユナやグレタも同様で使えるどころか、練習すらした事がないらしい。


「やはりそうじゃない。ワゴンの中に回復薬があるからおかしいと思ったんだよ、あの人はただ私を道具扱いするつもりだったんだね」


「ごめんね、私のスキルがもっと長距離まで届けば良かったんだけど、見える範囲しか届かないからね」


 グレタのその言葉にディアナは何も言えなくなってしまった。

 どう考えてもグレタのスキルは外れだと思ったので、何て言ったらいいのか分からなくなってしまった。


「ちょっとディアナそんな顔をしないでよ、通信としては問題はあるけど意外と戦闘に使えるんだよ。ちょっと見せてあげようか」


 グレタはテオに言って馬車を止めさせた。

 俺には何が起こるのか分からなかったが、グレタは一人で先を歩いて行く。

 ユナはディアナに真顔になって注意を促した。


「いい、どんどん強くなっていくから無理はしないでね、直ぐにグレタに言って止めさせるから早く教えるんだよ」


 ユナはこれから何が起こるのか理解しているようだ。

 テオを半笑いしながら俺だけを手招きした。


「面白い事が起こるぞ、アルが入院している間に俺達は先生にはかなり鍛えられたんだぜ」


 グレタがかなり離れた場所から手を振って来る。

 いよいよ何かが始まる様だ。


「何これ、ぎゃぁー」


 ディアナが最初に不安な表情を浮かべていたが直ぐに頭を押さえながら叫んで倒れ込んだ。

 ユナが急いでグレタに合図を送ると、ディアナはフラフラと立ち上がった。


「大丈夫かディアナ、一体どうしたんだ」


「勘弁してよ、頭の中に声が響いてきて割れてしまうかと思ったわよ」


 グレタは声をただ届けるだけではなくて、その音量を変えられるようになったようだ。

 俺達は移動を開始してグレタに向かって行く。

 途中でディアナは馬車から飛び降りてグレタに向かって行く。


「どう、意外といいスキルでしょ」


「意外じゃどころじゃないよ、このスキルは無敵じゃないの」


 ディアナは絶賛してくれ照れ臭くなってしまったが、グレタはちゃんと誤解を訂正する。


「そうでも無いんだよ、ユナにはまだ通用するけどテオや先生にはもう効かないんだよね、それにアルには最初から通用しなかったようだしね」


 グレタは俺に対しても仕掛けていたようだが、確かに折れにはグレタの言葉は届かなかった。

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