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勇者の系譜~俺に勇者のスキルがなくとも~  作者: アオト
第二章 マテウス王立上級学校六学年
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第十五話 治療院

 何かが眩しく感じて目を覚ますと知らない個室に一人で寝かされていた。

始めは何故此処にいるのか理解出来なかったが、徐々にその原因を思い出し始めた。


(みんなは大丈夫だったのか、誰が助けてくれたのだろうか)


 随分と熟睡していたようで頭はかなりスッキリし始めたのだが、身体はまるで重しを巻き付かれているように感じられ、思うように動いてくれない。

それでも喉がかなり渇いているような気がするので探しに行こうと起き上がり扉に向かうと、丁度そこにユナが入って来た。


「ちょっと脅かさないでよ、って言うか何であんたは立ってるの、いいから寝ていなさいよ」


 無理やりユナにベッドに戻されたので、せめて水でも頼みたかったが、口の中が乾ききっているせいかうめき声をあげるのが精一杯だ。


「あぁ水が欲しいのね、持ってきてあげるから大人しくしててよ」


 水差しと共にユナが戻って来ると、俺に水を飲ませながらあの塔から此処迄の事を話してくれた。

どうやらあれから三週間が過ぎてしまい、それに魔人は多分俺が一人で討伐したそうだ。

そうなるとあれは幻影なのではなく実在していたようだが、何故か実感が湧いてこない。

それでもレオニダスを助ける事が出来たのは本当に嬉しかった。


「あのさ、俺の身体はどうなっているんだ。凄く重いし感覚がまるで無いんだよね」


「あれだけオーガに蹴られていたから酷かったよ、それよりあんたの動きは何だったの」


「俺にも上手く説明が出来ないんだ」


「ふーん、まぁいいや、暫くは大人しくして身体を戻しなよ」


 ユナと話していると治療師の先生が入ってきて、いきなり怒られてしまった。

先生は俺の寝ている姿を見ただけなのに動いてしまった事を見抜いたようだ。

ただいきなり言われても、そんな説明は聞いていないのだから致し方無いと思うのだが。


「いいか、君は動くな、君のスキルは痛みを感じないらしいが、だからと言って無理に身体を動かすとどうなってしまうのか責任はとれないからな」


「アル、先生の言う事をちゃんと聞くんだよ、私は意識が戻った事を知らせに言ってくるから」


 ユナが部屋を出て行き、身体の説明を終えた先生も出て行ってから暫くするとレオニダスが入って来た。

俺は先程聞いたことを全て話すとレオニダスには和らいだ表情になった。


「まぁそれ位ですんで良かったよ、君の身体は限界を超えてしまったようだからどうなってしまうのか分からなかったからな、それよりあの力は何だ」


 そこで俺は自分が体験した頭の中の事を全て話始めた。


「私はスキルを使用する場合には塊から引き出すだけだったが、それが君だと部屋になっていてレバーを上げる事なんだろうな、ただスキルの声には全く意味が分からないな」


 この先、このような事がある度に何週間も眠るわけには行かないので、早く自分のスキルを調べたくなった。

何となく分かるのはレバーの上げた数に秘密がありそうなので次からは一つずつ調べて行こうと思う。


 翌日になるとジョンソ以外の特色課が集まった。

ジョンソは身体的には問題は無いらしいのだが、心を壊してしまったようでこの治療院の別棟で入院しているそうだ。

三人からはかなり感謝をされたが、やはり自分の事のように思えなかった。


 それから一週間が過ぎ、ようやく起き上がる事を許された俺は久し振りにベッドから降りると、感覚は元通りになっていた。

あの日から動きは最小限にしてただひたすらじっとしていた。

前の俺なら地獄のような時間だが、そんな苦痛は俺には通用しない。


 最初に歩いて行く先は決まっていて、それはジョンソの元に行く事だ。誰もが詳しく話してくれずかなり気になっていたので、ジョンソの病室を訪ねて行くと、そこは普通の個室ではなく牢屋のような部屋だった。

その部屋の片隅で膝を抱えて蹲っている。俺がいくら話し掛けても一切反応する事はない。

身体は守る事は出来たが心の中を守る事は出来なかったようだ。

付き添ってくれた治療師が言うには、見通しが全くたたないらしい。

俺が部屋を出るまでジョンソは何も反応してくれず、それは俺が退院するまで続いた。


 俺の入院中はテオ達が順番で一日置きに見舞いに来てくれ、祖父も母もたまにやって来るが、それ以外は誰一人として訪れる者はいなかった。

俺とジョンソが入院しているのは秘密となっていて、この先も何が原因で入院したかは決して話してはいけないと祖父から強く言われた。


 あの場所は魔国に近いとはいえ、城壁を越えて魔人が侵入してきたと知れれば、折角平和になったと思っている民衆がまた昔の様に戻ってしまう事を恐れているのだろう。


 あの日以来、城壁の警護は更に人員を増やして監視を強めたらしいので、それについては何も思わないが、俺とジョンソが入院した理由として、訓練先で感染力の高い病気にかかってしまった事になっているそうだ。

まぁ致し方ないとはいえ、それだと戻ってから誤解を生んでしまうのでは無いかと思ってしまう。


 それから更に二週間が過ぎ、今日はユナが来る日だと思ったが何故かテオが大きな荷物を抱えながらやって来た。


「アル、今からお前は退院するんだってよ」


「随分いきなりだな、それは嬉しいけど、それならその荷物は何だ」


 テオは何故か顔色が切ない色へと変化した。

溜息をつきながらテオは話始める。

原因はやはりレオニダスで、この前の合宿が中途半端に終わってしまったのがずっと気に食わなかったようで、俺が回復し始めたと分かると合宿先の候補を探し始めたのだそうだ。

そしていい訓練が出来る場所が見つかったので急遽行く事になったらしい。


「そんな訳だよ、だからこれはお前の荷物も入っているんだ」


 俺は退院したのに、自分の部屋の戻る事は許されず、更には学校の敷地にも入らないまま、正門の前に止まっている見覚えのある馬車に向かって行った。

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