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勇者の系譜~俺に勇者のスキルがなくとも~  作者: アオト
第二章 マテウス王立上級学校六学年
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第十三話 VSオーガ&ハーピー 二幕

 俺の目にはレオニダスが段々と生気を失っていくのがはっきりと見えた。

テオはユナ達を助ける為にハーピーに向かって行くが、ハーピーは物を投げるようにしてユナとグレタをテオに投げつけ高笑いをしている。


 俺はこんなにも怒りを感じているのに何故か衝撃波が出て来ない。

俺のスキルは何の役にも立たないのだろうか。

すると俺は自分の中に入ってしまったような感覚になり、目の奥からオーガ達を見ている様な視線になる。


 俺が見ているオーガは全く動いていないように見えるが、よく注意して観察すると微かながら動いている。

もしかしたらこれが死ぬ前に見える風景なのかも知れない。


 俺の視界は変わらないのだが、俺の周りの風景が変化し小部屋の中に入ってしまった様だ。

俺は薄暗いこの中で死ぬまで何をすればいいのだろうか。

ここで奴らの動きを見ていても仕方がないでは無いか。

もう屋上には立っている人間は誰一人としていなく、誰もが倒れている。このままでは全員が殺されてしまう。


 するとまたしても視界が変わり目の前に窓が二つ見える。

一つはオーガを捉え、もう一つの窓からはハーピーがゆっくりと足を上げ、倒れているテオ達の方へ向かう様だ。


 このままではどうしたらいいのか分からず、部屋の中を見渡すと壁にレバーのようなものが五つあり、その全てのレバーは下がっている。


 意味は全く分からないが、まず一つ目のレバーを上げて見た。すると部屋が少しだけ明るくなり、二つ目と三つ目のレバーも上げると益々部屋は明るくなってきて、部屋の全貌が見えてきた。

だがその部屋にはこれといって他には何も見当たらない。


 続けて四つ目のレバーは先程までより重たかったが何とか上げる事が出来た。

最後のレバーに手をかけようとすると頭の中に声が響いた。


「それは今の君では上がらないよ」


 今まで聞いたことが無いような透明感のある声だ。

辺りを見渡すが誰も居ない。


「誰なんだ、此処は何処だ、俺は一体どうしたらいいんだ、教えてくれ」


「もう十分過ぎるよ」


 俺の質問にはまともに答えてはくれず意味が分からない。

俺は声を無視して最後のレバーを上げようとするが、どれ程の力を込めてもレバーはびくともしない。


「だから、もう戻りなよ」


 すると部屋がどんどんと遠ざかって行ったと思ったら、直ぐに俺の視界は現実の世界へと戻った。

ただ俺の頭の片隅には数字が浮かび、その数はどんどんと減っていく。


 156,154,153……。


 俺の身体に力がみなぎり痛みも全て消え去った。

どうやら「苦痛変換」のスキルが発動しているようだ。

俺の蹴ろうとしているオーガは油断しているのか俺を見ているだけなので、立ち上がると同時に顔面を殴るが、何も手ごたえは感じないままオーガの頭は風船のように破裂し始めた。


 123,122,121……。


 このオーガは幻影の様だったが俺には確かめる時間もないので、そのままテオ達を眺めているハーピーに向かって行く。

身体が自分の力では制御が出来ず、そのまま体当たりの様になってしまったが、俺の身体はハーピーを突き抜けた。

またしても幻影のようで、一体俺は何を見せられているのだろうか。


 97,96,95……。


 テオ達は恐怖で縛られてしまっているのか全く微動だに出来ない様だ。

俺は足元に落ちていたジョンソの槍を拾い、振り向きながらオーガに投げつける。

槍はオーガの胸を貫いたと同時に空中で止まり、貫かれたオーガは自分の身体を確認するようにゆっくりと下を向き始める。


 77,76,75……。


「な、ん、だ……」


 最後のオーガであるパドゥは人を馬鹿にしたように一言ずつ言葉に出すが、俺は気にせずに落ちているメイスを拾い上げ、パドゥに近づいて行き脳天目掛けて振り下ろす。

またしても幻影なのか何の手ごたえの無いままパドゥの身体をメイスが通過し、俺はその勢いのまま地面に大穴を開けて、前のめりに倒れ込んでしまった。


「ふざけろよ、お前らは何処にいるんだ」


 61,60,59……。


 立ち上がると奥に背中を見せながら空中で止まっているハーピーの姿が見えた。

あれがこの原因だと期待を込めながらメイスを投げつけると、ハーピーは四股を空中に残したまま消え去り、身体があった場所の先にはメイスが止まっている。


 46,45,44……。


「ふざけていないで、俺と戦ったらどうなんだ」


 周囲を見渡すが魔人が再び現れる様子はない。

どこに隠れたのか知らないが卑怯な奴らだ。

俺は魔人を探す事を諦め、今にも命が消えてしまいそうなレオニダスの元へ駆け寄った。

レオニダスを抱え起こすが、大量の血を目の前にしてどうすればいいのか分からない。


「何やってんの、早くしないと死んじゃうよ」


 頭の中に先程の声が響いて来る。


「どうすればいいんだよ」


「今回だけ特別だよ」


 よく分からないが、俺の両手の掌がどんどん熱くなってきている。

俺はその掌でレオニダスの傷口を押さえ込んだ。

するとレオニダスの身体が光を放ち始め身体の穴が塞がっていき、顔色も良くなってきている様な気がする。


 10,9,8……。


(何だ、不味い、魔人がまだいるのに)


 急速に身体から力が抜けていく。

それと同じくして身体全体に激痛が走って、俺は意識を手放した。



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