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勇者の系譜~俺に勇者のスキルがなくとも~  作者: アオト
第二章 マテウス王立上級学校六学年
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第十二話 VSオーガ&ハーピー 一幕

 オーガは寝っ転がったまま俺達の方を面倒くさそうに見て、女性の身体を持った鳥の魔人のハーピー達はよだれを垂らしながら俺達を見てきた。


「こいつらが若い人間を食べに行くって言うからさ、ついでに俺達も暴れたくなったんで運んでもらったんだ。たまには人間相手に遊ばないとつまらないだろ」


 オーガの中でもひと際身体の大きいオーガが胡坐に体勢を変えながら言ってくる。

俺は恐怖で固まってしまっているグレタにそっと肘で合図をした。

どうにか冷静になってグレタのスキルでレオニダスに知らせて欲しい。


「意味が分からない事を言うなよ。また戦争でも始めるつもりなのか」


 話に意味は無いのかも知れないが、せめて此処にレオニダスがいないとどうにもならない。

それまでは時間稼ぎをしなくてはならない。


「馬鹿なのかお前は、お前らだって魔国に侵入しているだろう。こんな事はお互い様なんだよ」


「そんな訳ないだろう、誰が魔国に渡るんだよ、それに何でこんな人がいない場所で休んでいるんだ」


 胡坐をかいているオーガが一羽のハーピーを呼び寄せ、いきなり頭を叩いた。


「こいつがこの島には、人間の若い奴らが沢山いるって言うから来たのに、全然いなかったんだよ」


「しょうがないでしょ、いないんだから、だったら他の場所に行こうって言ってるのにパドゥが疲れたって言ったじゃないの」


「お前がもっと優しく運んでくれないから肩が痛いんだよ」


 何が可笑しいのか、オーガ達は会話を聞きながら腹を抱えて笑い出した。もう俺達に注目している奴はいない。

俺は小声でユナ達に階段に近づくように言った。


 すると一羽のハーピーが低空飛行で一番端にいたジョンソを狙って飛んできた。俺は急いでジョンソとハーピーの間に入ると、ハーピーは爪を伸ばして俺の身体を貫こうとした。

だが俺の身体はハーピーの爪を弾きいたまでは良かったのだが、ジョンソを巻き込みながら階段とは離れた方に吹っ飛ばされてしまう。


「アル、ジョンソ大丈夫か」


 テオがすかさず駆け寄って来るが、俺はテオが来る前に起き上がりジョンソに近づいた。


「テオ、ジョンソを見てやってくれ」


 頭から血を流して気を失っているジョンソをテオに任せ、俺はハーピーにゆっくりと向かって行く。

まだ恐怖心は湧き上がって来ないので、こいつの攻撃なら耐えられそうだ。


「いきなり何をす…………」


 いつの間にか近づいて来た長身のオーガが渾身の力で俺の顔を殴って来た。

俺は仰向けに倒れたので直ぐに立ち上がろうとしたが、左足が震えて言う事を聞いてくれない。


「お前、どんな身体をしているんだ。普通の人間なら穴があくだろ」


 そのオーガが話している最中にまた先程のハーピーが今度はユナとグレタに向かって飛んで行く。

俺はまだ言う事を聞いてくれる右足だけの力でジャンプして二人を付き飛ばせたが、今度はわき腹に爪をたてられる。


「手前らの攻撃なんか効くかよ」


 かなり身体が動きにくくなってしまったが、剣を杖代わりにしてハーピーに向かって行く。

それを遮る様にオーガが拳を振り下ろしてきたが、前回りのような形でその拳をかわし、その勢いのまま目の前にいたハーピーに対して剣を振り下ろした。

剣は肩口から入り胸の辺りまで切り裂いた。

直ぐに振り返りオーガにも同じように剣を振り下ろすが、オーガの硬い身体に俺の剣は負けてしまい折れてしまった。


「人間にしてはやるじゃねぇか」


 拍手をしながら胡坐をしていたオーガが近づいて来る。

先程パドゥと呼ばれていたオーガだ。そいつだけは笑顔なのだが、それ以外の魔人はそれまでの雰囲気とは違い殺気を放っている。


「ばぁごぉ」


 何が起こったのか分からないが俺の頬に鈍い痛みが走り、俺はまたしても吹き飛ばされてしまう。

無理やり頭を持ち上げられ俺の腹に何度も拳を打ち付ける。

長身のオーガも参加して俺の背中を蹴っているようだ。

段々と痛みを感じてきて思わず叫びたくなってしまう。


 次に俺は転がされ全身の至る所を蹴り上げられている。

俺の視界は徐々に狭まっていき、意識が飛んでしまいそうになる。


「ぐぅわぁ」


 俺の視界の端にユナ達を襲おうとしていたハーピーが何故か切り裂かれた。

更に俺の目の前を斬撃が飛び、俺を見下ろしていたオーガが切り裂かれた。


「私の生徒なんだけどな」


 レオニダスが怒りの表情で立っている。

そのレオニダスに向け一体のオーガが手にしているメイスを投げつけた。

レオニダスはそのメイスを簡単に避けるが、その先には階段に続く扉がありメイスが当たった途端に瓦礫と化して階段は塞がれてしまった。


「残念だったな、これでお前らに……」


 レオニダスは斬撃を飛ばし、入口を壊したオーガの首をはねる事は出来たが、その先にいるパドゥにはメイスで斬撃を弾かれてしまう。

かなり体力を失ってしまったのかレオニダスの額からは大筋の汗が滴り落ちている。

ジョンソを守る形で震えながら立っているだけのテオにレオニダスは声を掛けた。


「テオ、アルは私が何とかするから君達で逃げる事だけを考えなさい」


 位置的には下に降りる階段に一番近いのがユナとグレタで、そこから少し離れた所にテオとジョンソがいるが、瓦礫をどうにかしなければ逃げる事など出来ない。

鍵はジョンソが意識を取り戻す事だと思う。アルも一緒に助けたいが離れた所で三体のオーガに囲まれてしまっている。


「ねぇその武器を離さないとこの子を食べちゃうよ」


 レオニダスが振り向くと切り裂かれたはずの二羽の内の一羽のハーピーが、血だらけになりながらも立ち上がり両手でユナとグレタの首を掴んで持ち上げている。


「貴様、その手を離さんか」


 そう言いながらハーピーに近づこうとした途端に、後ろからオーガの投げた槍によってレオニダスは貫かれて大量に血を吐きながら倒れてしまう。まだ、ハーピーが二羽、オーガが三体いるのに。

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