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勇者の系譜~俺に勇者のスキルがなくとも~  作者: アオト
第五章 魔国
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第百十八話 VSアレクシア

 飛竜にまだ戦える者だけをのせ西に向かい、既に戦えなくなってしまった者はガルーダでズーランド国で治療を受けることになり、その中にはヘイデンやダルマも含まれている。


「お前らは身体が動く様になったら王都に戻ってくれ」


「分かりました。王都で良い報告を待っていますよ」


 ドラちゃんは地中を進んで行った魔力の元を見失ってしまったので、魔族と交戦している場所に狙いをつけてそれぞれが移動を開始する。


 暫く進んで行くと突然ドラちゃんが本来の目的地では無い方に方向を変えて加速していく。


「ルトロさん、ドラちゃんが魔力の元を捕えたそうです」


「そうか、他の連中にも知らせないとな」


 徐々に進行方向の先に交戦をしている場所が見えてきた。

 近づいていくと、ある一点にあきらかに魔力が膨れ上がっているのが感じられ、その魔力の中心が何処にあるのか確信へと変わった。


「ドラちゃん急いでくれ、ルトロさん、あれには俺のスキルを解放します」


「あぁ、サポートは任せてくれ」


「アル、死ぬなよ」


 直ぐに部屋の中に入って行きレバーを一つずつ上げて行く、最後のレバーを上げようとすると人型のスキルが俺に近寄って来た。

 顔の中まではっきりと確認する事が出来て、俺はその姿を見た途端に涙が溢れて止まらなくなる。


「君にはどんな姿で見えているのか知らないけれど、はっきり見えると言う事は僕の力を最大限に引き出せることが出来るよ」


「そうか、だったらあいつを倒せるか」


「あれが全ての力を使いこなせたら難しいかもね、なにせ奴には魔王と勇者の力を手にしたからね」


 石碑の中にあったのは魔王の魂の他に勇者のスキルの核がが入ってあり、本来ならば石碑の消滅と共に消えるはずなのだが、何者かが石碑が破壊されると同時に抽出出来るように細工をしたらしい。


「それでも、倒してくるよ」


「君とはもう会えないだろうね、楽しかったな、それじゃさようなら」


「今までありがとうな、またな」


 現実に戻ると、敵と味方の境の上に着いたので飛び降りた。

 身体から力が湧いて来て一度膨れ上がってから全てが身体の中に納まった。


 56


 頭の中に数字が浮かぶが、どうせ使い切ってしまうのだからどうでもいい。

 ハルバートの封印を再び解きながら地上へと降り立った。


「誰かと思ったら小物君じゃ無いか、よくもまぁ私の前に来たもんだねぇ、勇者はいない様だがいいのかい」


「その声はアレクシアなのか、何なんだよその姿は」


 アレクシアと思われる物体は、辛うじて人型はしているものの、足はひび割れながら無数に分かれていて、腕は左右非対称の七本生え、その顔は巨悪な物へと変化している。


「酷い事を言ってくれるね、仕方がないだろ、いきなり魔王と勇者の力を身体に入れたんんだ。まだ馴染んでいないんだよ」

 

 そう言いながら一つの腕をまるで虫を払うかのような仕草をすると、予想以上の衝撃波が襲いかかって来る。

 俺は両手を交差して衝撃を防いだが、俺の後方にいた味方はその衝撃波を受け止めきれず、千人以上の兵士が身体を切り刻められながら吹き飛んだ。


「お前、それは父の技だろうが」


 怒鳴りながら俺は兵士達に向けて手を翳すと光のドームが現れて兵士達の身体を治していき、かなりの数の兵士を助ける事が出来たが、即死してしまった者は手の施しようが無かった。


「あのねぇ、今は勇者の力は私の物なんだよ、似たような技を使えるのは当たり前じゃないかい」


 怒りが全身を駆け巡り、俺の気持ちに答えてくれるのかハルバートまで力を貸してれる様な気がする。


「もういいよお前は、頼むから消え去れ」


 ハルバートに光を纏わせて斬撃を飛ばすと、アレクシアには効果が無いようだが、その後ろにいる魔人共は次々と倒れて行った。


「あんたもいい加減におしよ」


 アレクシアが近寄ってきてその手を振り下ろしてくるが、俺はそれを躱しながらこの場から離れて行く。


 俺とアレクシア以外は時間が止まってしまっている様に見えるし、一切の音も聞こえない。


 俺自身は全盛期の祖父や父の力を遥かに凌駕しているのだが、そのスピードにアレクシアはついて来る。


「あんたは一体何なんだい、この前とは別人じゃないか」


「お前だってそうだろ。力を持ちすぎなんだよ」


 お互い決定的な傷を負わせることは出来ないが、かすり傷がどんどん増えて行く。

 ハルバートは俺の精神を侵害する事はなく、俺の思い通りに動いてくれる。


 何度か打ち合っている内に均衡が崩れ始め、アレクシアの腕を二本切り落とす事が出来た。


「おいおいもう疲れたのかよ、もうすぐ終わりだな」


「五月蠅いよ、もうあんたとは付き合ってられないねぇ」


 アレクシアは懐から魔石を出してどんどんと自分の身体に吸収させると、益々身体が変化し、とうとう人型から四足歩行の獣型へとベースを変えて行った。


「お前は魔人ですらなくなったのか」


「どうでもいいよ、くくっ」


 油断をしているアレクシアの首にハルバートを叩き込み深く突き刺さったが抜けなくなってしまう。


「さて、私の番かねぇ…………」


 何かしらの攻撃が来ると思ったが、それよりも前に突き刺さっているハルバートが脈を打っているかのように動き、その度にアレクシアが縮んでいく。


「何をしているんだ。今の内に魔剣を押し込むんだ」


 身体も顔もアレクシアなのだが、口から出た言葉は俺にアドバイスをくれたようだ。


「私はベンノの残り香のようなもんだ。こいつの動きを少しだけ止めるから早く」


「残り香……」


 父そのものように思えてきたが、俺はハルバートの柄を掴み力まかせに身体の中に押し込んで行く。

 何故かハルバートは大きさを変え始め、今では二倍以上なっているがそれに伴い切れ味が増したようでアレクシアの身体は二つに分かれた。

 さらにその身体を細切れにして行くと、無傷だった口が言葉を放った。


「良くここ迄強くなったのものだな、感心するよ」


 その言葉は父の残り香の言葉なのか、それともアレクシアの言葉なのか分からなかった。

 







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