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勇者の系譜~俺に勇者のスキルがなくとも~  作者: アオト
第五章 魔国
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第百十七話 石碑

 精鋭部隊は当初の予定通り分散して魔城に潜入しているのでここからは少人数での行動になる。

 ルトロがヘイデンを柱の陰に隠しながら俺達に指示を出す。


 「さぁ直ぐに地下に向かうぞ、覚悟は良いかアル、テオ、ダルマ」


 黙って頷くと目の前にある階段を駆け下りる。


 その先にはトロールの集団がいたのでルトロとダルマが迎撃にその中に入って行った。

 俺もそこに加わろうとしたがテオにがっちりと肩を掴まれた。


「いいか、お前はスキルを使うなよ、ただ俺の後ろに付いて来い。守ってやる」


 テオの言葉は恰好が良かったが、それならば本体を見極める方法を教えて欲しかった。

 テオは三十人を超える分身をしながら戦闘をしながら進んで行くが、俺が選んでしまうのは必ず分身で敵の攻撃は分身をすり抜けて俺に当たるのであまり意味が無い。


「何やってんだよ。分身の後ろに付くなよ」


「俺もそう思ったがこれでいいんじゃないか、俺が本体の後ろに居たら敵にバレるぞ」


「…………」


 テオは全くその事を考えていなかったようで、動きを止めてしまい分身は全て消え去った。


「何を遊んでいるんだ。いいからお前は俺の後ろに付けよ」


 ダルマはメイスを振り回しながら怒鳴って来たので、俺はダルマの背中を見ながら移動を開始した。


 突入してからどれくらい時間が経ったか分からないが、幾度となく合流を繰り返して地下に入って行くが地下はダンジョンのようになっていて終わりが見えず、折角人数が増えても戦闘により、此方は徐々に数を減らしていく。


「ルトロさん、俺も前線で戦いましょうか」


「そうしてもらいたいが、スキルを使って欲しく無いんだ。もう少し待っていてくれ」


「スキルを使わなくても奴らを倒せる方法があるんですよ」


「あれか、まぁそれも一つの手だな」


「おいっお前まさか……」


 テオが何かを言いかけたがそれを無視してハルバートの力を押さえている封印の鎖を引きちぎった。

 此処には魔剣の好物である魔族しかいないのだから好きなだけその血を吸ってくれ。


 目の前にいたコカトリスを叩き斬ると、ほんの少しだけハルバートが喜んでいる様な気がする。

 左から出て来たアラクネの集団には振り回しながら突入していくと、何度も蹴られたり噛みつかれたりするが、そんな些細な事よりもアラクネの胴体を斬るのが楽しくて仕方がない。


「テオ、凄く気分がいいぞ、全て俺に任してくれ」


 重さを感じなくなったハルバートを振り回していると、後頭部に強い衝撃を受ける。


「いい加減、落ち着こうか、いくら敵とはいえ死者を弄ぶにはよくないな」


 ルトロが手加減無しに俺の後頭部を叩き、俺が気を逸らしている間にテオがハルバートに封印の鎖を付けた。


「前より酷くなっているじゃないか、どうしたんだ」


「いろんな種類の魔族の血が吸えたからこうなったんじゃないか」


 味方のはずなのにかなり引いてしまっている獣人族の方に説明をしながら歩いて行く。

 ようやく魔王を守っていた魔人を全て倒し終わったようでもう何も出で来なくなった。


 ただこの場にいるのは二十人程なので、精鋭部隊の九割を失ってしまった事になる。


 一番奥にかなり豪勢な装飾をしている扉があり、それを開けると中の石碑を守るように三体のミノタウロスが立っていたが、奴らが行動を起こす前に獣人族の男達がその首を飛ばした。


「ルトロさん、あの石碑に魔王が封印されているのですか」


「あぁそうだ。表面に文字が浮かんでいるだろう。その文字が全て消えると魔王が復活するんだとよ」


 石碑の表面にはなんて書いてあるのか分からない文字が浮かんでいて光を放っているが、よく見ると光を失った文字も書かれている。


「わざわざこんな場所まで運ぶとは随分と面倒な事をしてくれたよな、おかげでどれだけの仲間を失ったと思っているんだ」


 獣人族のオルクが叫びながら石碑を壊そうとするところをディックスが取り押さえる。


「おい、何も考えずに壊して魔王が出てきたらどうするんだ」


「そこは我々に任してくれないか、何通りか策はあるから順番に試してみるよ」


 獣人族の隊長だったオルクには伝えてあったのだが、オルクはその事を部下の誰にも伝えていなかったようだ。

 彼は自分が死ぬなど考えていなかったのだろう。


「副隊長、ではやらして貰いますけど、後の事はお願いしますね」


「任せろダルマ、ちゃんと丁寧に運んでやるよ」


 するとダルマは両手の掌を合わせて集中していく、少ししてからその掌を石碑に当てて行くとそのところか石碑は塵のように崩れて行き、そこに砂の山が出来上がった。


「うんっ」


 テオが首をかしげると同時に砂の山が地中に吸い込まれてそこに深さがまるで分らない穴が出来上がった。


「ダルマ、それもお前の仕業なのか」


「いいえ違いますよ、何だか嫌な予感がしますね」


 俺の頭の中にドラちゃんの唸り声が聞こえてくる。

 何を言っているの分からなかったが、感覚的に理解し始めた。


「ルトロさん、ドラちゃんが言うには、凄まじい魔力の物が地中から西に向かっているようです」



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