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村長の日記より一部抜粋

17××年5月3日


フランが処刑された。

彼は誰も傷つけていない。

なぜ殺されなければならない。

俺はこの村を許さない。

だが今この思いを悟られる訳にはいかない。

時間をかけて村の信頼を得て、確実に、村を滅ぼす。

幸い、俺の祝福は「長寿」だ。

いくらでも時間をかけて、復讐してやる。









17××年9月7日


やっと、今日村長になった。

これからだ、私の復讐は。


村長になると同時に、前村長から、ある真実を伝えられた。


神は、いなかった。

私たちが信じている、信じさせられている、神という存在。

私たちの先祖が契約し、私たちに祝福を授けるとされている存在。


そんなものはいなかった。

私たちはただ、ただ特別な民族だった。

いや、私たちではなく、この村が、か。

迷いの森に囲まれている、この村で生まれたものは皆、この世の理を越えた能力を手にする。

神という存在は、村を統治しやすくするために作られた偶像であった。


安心した。

私は神が憎かった。

神がいるなら、フランを助けるべきだったと思っていた。

神にさえ復讐したかった。

だが神はいなかった。

私が憎むのは村だけでいい。




18××年12月29日


ジョンという少年を助けた。

彼は私に一生を使って恩を返すと言った。


彼の祝福は有能だ。

それに、彼も村を恨んでいる。

だから私の計画を打ち明け、味方にすることにした。


元は自分一人でやるつもりの復讐だったが、協力者はいた方がいい。

子供を使うのは気が引けるが、そもそも村の人間を皆殺しにするつもりなんだ。














18××年6月6日


今日、やっと見つけた。

私の復讐のための子供。


彼の祝福は「肌で触れたものを殺す」

これが強化されれば、村を皆殺しにすることも不可能ではないはずだ。

まず、私が育て、私をかけがえのない存在だと認識させる。


そして私がジョンに殺されることで、村に復讐したいと思わせ、また、祝福の「覚醒」を促す。覚醒には、著しく大きな感情が必要だ。


私も恐らく、フランを殺された時に覚醒している。


死ぬ覚悟はできている。


もし私が死んで覚醒しなくても、処刑を前にすれば覚醒するのではないだろうか。


正直、運を天に任せる計画である。

村との交換条件で、彼を生かす代わりに、彼の祝福が強化されてしまえば、彼は処刑される。


彼にものごころがつく前、彼が私を大切な人間だと定義する前に彼の祝福が強くなってしまうと、この計画は為し得ない。


また、彼の祝福が強くならない、または覚醒しないということもありうる。

祝福が強くならなければ処刑さえないのだから、覚醒しない可能性は高くなる。

その場合は新しいシナリオを考えてもよいが。


彼が復讐などしない性格に育つという可能性もあるな。


なんにせよ、かなり穴のある計画ではある。

一番の問題点は、私が復讐を見れないことである。


だが、村にジョンしか味方がいない以上、やれることは限られている。それに、復讐を見ることは目的ではない。復讐が達成されればそれでいい。


やっと手にしたチャンスである。

不意にしないよう最善を尽くす。


両親が外にいるため、彼の名前は私がつけることになった。

『ウルトル』と名付けた。

ラテン語で「復讐者」である。




18××年6月6日


ウルトルの3回目の祝福変化の日。

今回も強化されなくて安心した。

復讐を託すにはまだ幼すぎるからな。

3回連続変化なしには驚いたが、私にとっては今は変化なしが一番都合がいい。


正直、彼に愛着が湧いてきてしまっている。

この感情と、どう折り合いをつけていくかも、今後の課題である。






18××年6月6日


ウルトルの7回目の祝福変化の日。

なんと今日も変化なしであった。


喜びたいところであるが、このままずっと強くならないまま10年経つと計画に支障が出るので問題である。


さすがに、彼の祝福は変化しないと決まっている訳では無いと思いたいが、7年連続変化なしなど前代未聞すぎてどうなるか分からない。

あらゆる可能性に備えた計画を練る必要がある。


最近、彼のことを息子のように思い始めてしまっている。

私としか話をさせていないのが功を奏してか、彼は私にとても懐いている。慕ってくれている。


私は彼を道具として使うつもりなのに。


だが、私は復讐をやめるつもりはない。




18××年6月6日


ウルトルの9回目の祝福変化の日。

もう驚かない。

9回連続変化なし。


最近の私は、もういいのではないかとも思い始めてしまっている。


というか私は、まだ何もしていない。

今のところずっと待っているだけである。

大量虐殺どころか、人1人殺したこともない。

ただの心の優しい村長である。


今ならまだ、罪を犯さずに死ねる。


あれだけ強く決意したのに、こんな風に決意が揺らぐのは、歳のせいだろうか。


いや、なぜかは分かっている。

ウルトルだ。

彼はこんな私に育てられたのに、本当に優しくて、いい子に育った。


私はそんな彼を、愛してしまっている。


復讐心は、まだ強く燃えている。


ウルトルに、人を殺す道具になって欲しくない。


私とジョンだけでは、村を皆殺しにするなんて到底不可能だが、ウルトルには希望がある。


この矛盾だらけの感情を、私はどうすればいいのだろうか。



10回目の祝福変化で、強くならないのであれば、ウルトルには自由に生きてもらおう。

そして、私も復讐を諦めよう。

ジョンも説得すればわかってくれるはずだ。


だがもし、祝福が強くなるのであれば、ウルトルには復讐をしてもらう。




18××年6月6日


強くなってしまった。それもかなり。

嬉しいとは思えない。

だが、復讐をしよう。

やっと、やっと復讐ができるんだ。

ウルトルには悪いが、仕方がない。

お前しかいないのだから。


まず、今のウルトルには村を憎むという気持ちが全くない。

処刑まで五日しかないのに、彼の気持ちを変えられるだろうか。


分からない。分からないが、やるしかない。

ウルトルは悟ったようなことろもあるが、村の外については興味津々である。


考えていた計画通り、ウルトルに外の世界を見てもらい、ウルトルに迷いが生じたところで、私がウルトルに外に出ないかと誘う。そして外に出る寸前にジョンに私を殺してもらう。


本当にすまないと思っている、ウルトル。




18××年6月9日


私は今日、殺される。


ウルトルはしっかり、外に逃げたいという気持ちが高ぶっている。

ルルディという少女に感謝するしかない。


この調子なら、きっと覚醒してくれるだろう。

そして、彼がこの村に終わりをもたらすんだ。


今までありがとう、ウルトル。

本当に息子のように思っている。


そして、どうか私の願いを叶えてくれ。








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最後まで読んで下さると嬉しいです!

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