三日目
今日も昨日と同じ方法で外に出た。
外に出る前、村長に腕時計を渡された。腕時計というのは、名前そのままのもので腕に着けることが出来る時計だ。
何もハプニングが起きなければ、午後3時に帰って来いと言われた。渡した腕時計で逐一時間を確認しろということだ。
僕も帰ってきた時に村長がいないと困るので賛成した。
本来、処刑予定の者は村の牢屋で過ごさねばならない。それを村長が無理を言い、自分が管理するからという条件で僕の牢屋入りを回避した。
だから僕は一人でいるところを村の誰かに見られたらまずいのだ。
村長は村に一人でいて疑われないのかと聞くと、お前は今までも家の中にいてばかりだったから家の中にいると言えば納得してもらえるだろうと言う。
そもそも僕を一人にしている時点でダメだと思われそうと思ったけど、良い案を思いつく訳でもないから黙っておいた。
石像に祈り外に出ると、すぐに花畑の方に向かった。
彼女はいた。
昨日と同じように、花畑の中心で一人立っていた。
まず謝った。
昨日は悪いことをしたと。
君とは仲良くしたいんだと。
「私もあんたと仲良くなりたい」
「また来てくれて嬉しい」
満面の笑顔で彼女はそう言った。
昨日は彼女の話ばかり聞いていたから、今度は僕が話す番だった。
彼女の方から僕に催促してきたわけではない。
僕も自分のことを話さないとフェアじゃないと思った。
僕は何もかも喋ってしまった。
村のこと。
祝福のこと。
僕のこと。
彼女はいちいちリアクションしてくれた。
「えー、私も住みたいわーそこ。そこなら一生働かなくても飯食えるのよね?」
「私もその祝福とかいうの欲しかったなぁ。私のはたぶん『無から金塊を作り出す』だったと思うのよねぇ」
「『触れたものの命を奪う』とかめちゃくちゃかっこいいじゃない」
そして、僕がもうすぐ処刑されるということも。
「あんた、それでいいと思ってるの?」
僕は答えた。しかたないんだと。村のルールは絶対で、僕は村が許容できる範囲を超えてしまったんだ。むしろ今まで処刑されずにいられたことが奇跡なんだ。村には感謝している。特に村長には感謝してもしきれない。と。
「いやあんたねぇ、人は殺されないくらいで感謝しちゃダメよ」
「あんたが死ぬのは仕方ないと思ってるんだったら、それは村があんたを洗脳してるのよ。洗脳ってわかる?」
「あんたのその『祝福』は、あんたの意思は関係ないんでしょ?ならあんたが責められるのはおかしいと思うのよね」
「その村長さんだけは本当にいい人みたいねぇ。」
「てか、こうやって今外に出られてるのに、このまま逃げようとは思わないの?」
彼女の言葉は、僕にとって予想外のものばかりだった。僕は悪くない?村の洗脳?村から逃げる?そんなこと、ちっとも考えたことなかった。
でも僕が逃げたら、村長が村のみんなに殺されてしまうかもしれない。と言うと、
「それなら、村長も一緒に逃げればいいじゃない。外に逃げても行く宛てがないってんなら、私が親に頼んで、あんたと村長さんを匿ってあげるわよ。私の親、余るほどお金もってるし、こういう突拍子もないことへの対応力もたぶん高いから、理解してくれるわよきっと。」
確かに、それなら村長も僕も逃げられる。だけど、それでいいのか?村のルールを破って、生き延びるなんて。それに、今の僕は生きている限り命を奪い続ける。人が生きていくには、人の助けが必要だ。でも僕は、恐らく外の世界でも大抵の人からは疎まれ、恐れられる。こんな身体で、どうやって生きていくって言うんだ。誰にも触れられない、近づくことも出来ない。ルルディにも…。
僕がそんな不安を吐露すると、
「きっと大丈夫よ!私を信じて!それに私は、あんたに触れられなくてもずっと友達でいてあげるわ!」
彼女が眩しかった。僕なんかのために、なんでこんなにも力になってくれるんだ。
「だって、私今あんたしか友達いないのよ?唯一の友達の力になってあげたいと思うのは当然でしょ?」
もうその時には、僕は彼女と暮らすこれからのことを考えてしまっていた。きっと、楽しいだろうと。村長も一緒だ。火山や、肌の色が黒い人や、海が見たい。ルルディと一緒に。
そうやって話していると、そろそろ3時であることに気づいた。
僕はそろそろ村長との約束の時間だと伝えた。
それと、逃げたい、と。
村長を説得して、明日の朝いつもの時間に、ここに来ると。
「よかった!絶対よ?絶対来てよね!楽しみにしてるわ!」
僕は彼女に一時の別れを告げ、アヒルの石像まで戻った。
村に戻ると、村長がいてくれた。
僕はすぐにルルディのことを話した。
村長は黙って全て聞いていた。
なんと村長は、僕が外に逃げようと言い出すのを待っていたということだった。
僕がまだ生きたいと思ってくれるように、自由な外の世界を見せたかったらしい。
僕がルルディと会うことは想定外だったようだけど。
村長にも村を出た後の計画はあったらしい。しかし、もし可能ならルルディの家で厄介になった方がいろいろと都合がいいということで、とりあえずルルディの提案通りにことを運ばせ、もしダメなら村長が元より考えていた計画を実行させようということになった。
村長は本当に僕のことを考えていてくれていたんだ。僕に生きていて欲しいと。
明日が本当に楽しみだ。
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