表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
94/122

第94話

よくある質問のうちの一つだ。どいつもこいつも同じように「好きなの?」「付き合ってるの?」と。

ふわっと浮かんだ質問をした。ただの会話の延長。喋ることがなかったから。色々理由があるだろう。しかし聞かれた方からすると「またか」とうんざりしてしまう。


「まあ、幼馴染だし」


好きか嫌いの二択であるなら好きと答えるしかないだろう。例え「(恋愛的な意味で)好きなの?」と問われても、幼馴染だからという無難でグレーな答えを出す。


「そっかぁ、いつも一緒にいるから付き合ってるのかと思ったよ」


へらりと笑う滝さんに私からも質問をする。


「滝さんも他の子から付き合ってる、って思われてそう」


語尾に疑問符を持ってきていないため自分の感想を言っただけだが、答えてくれる人がほとんどだ。


「そんなことないよ。わたしよりも藤田さんの方が付き合いも長いし」


焦ったように、けれど少し嬉しそう。

これは、どっちだ。


見れば見る程、知れば知る程空に似合う人だと思う。空は空でも表向きの空、だけど。

いやでも、こういう子を可愛がる空も想像できる。部屋中に写真を貼って、自分の膝にのせて頭を撫でる。二人のいちゃこらシーンを思い浮かべた途端、心がドス黒い霧に覆われる。


そこにいるのはお前じゃ駄目だ。


「藤田さんはさ」


名前を呼ばれ、ハッと意識を戻す。


「空くんに大事にされてるよね」

「……….幼馴染だし」

「うん、そうだね。でもね、凄く羨ましいな」


眉を八の字にし、どこか寂しそうだ。

羨ましい、というと。


「わたしね、空くんのこと好きなの」


は。


気まずいのか、私の方を向かず作業をしながらそんなことを告白された。

だから私に好きかと聞いたのか。

これは何。牽制か何かだろうか。

自分は空のこと好きなんだから、はっきり好きだと言わなかったお前は引けとでも言っているのか。


「あ、別に、だからどうとかいうわけじゃなくてですね。えっとですね….」


沈黙に気付いた滝さんは必死に言い訳を探す。

混乱しているのか焦っているのか、喋り方がさっきと違う。


「付き合おうとか告白しようとか、そんなこと思ってるわけじゃないんだよ。藤田さん、空くんのこと好きでしょう?否定しても分かるよ」

「......いや」

「好きだけど、そういうことをしようと思ってないから、安心してねって言おうかと」


この子、計算高いんじゃなかったっけ。無意識系女子じゃなかったっけ。

どうなの、空、これは何。私は何を試されてるの。どういうこと。


「えと、つまり?」

「あー、うー。文化祭の準備とかで空くんと一緒にいるときが多いけど気にしないでって、そう伝えようと…」


ふむ。

「わたしは空くんのことが好きだけど、恋人どうこうになるつもりはない。文化祭の準備でべたべたしちゃうけど、付き合うつもりはないから安心して!!え?何でこんなこと言うかって?だって藤田さん空くんのことが好きなんでしょ?不安にさせないために言ってるんだよ!」

と、つまりはこういうことかな。


余計なお世話。


それに何より意味が分からない。


「それなら私に好きってこと言わなかったらいいんじゃないの?」

「そうなんだけど、わたし、嘘は嫌いだから」


先程から話していて素直であることはなんとなく伝わっていた。

きっとこういうところが気に入られるんだろう。


「…私がこのこと言いふらすかもしれないけど」

「藤田さんはそんなことしないでしょう?」

「何を根拠に言ってるの?」

「空くんの幼馴染だから」


余計意味が分からない。

嘘を吐きたくないというのは目が語っているので分かる。そういう性格の子なのだろう。恐らく。

けれど、だから、何。


好きだなんだと言って、だから私にどうしろっていうの。

よくある恋バナとして済ませてもいいのか。いやでもそれをスルーした結果「何で協力してくれないの」と反感を買ったこともある。今回は違うと思うが、この人に心配しないでと言われる筋合いがない。


不安にさせるかもしれないって、私を下に見てるよね。

自分には人望もあって顔も可愛い、男女ともに好かれるしこんな子が空くんの傍をうろちょろしてたら、それはそれは不安になるよねってことでしょ。

わたしみたいな人気者女子が空くんの傍にいるけど、告白するつもりなんてないからブスな藤田さんは安心して今まで通りいてくれていいよってことでしょ。


私が卑屈なのは百も承知している。

実際、滝さんが性格の悪い女に見えなくもない。そんな自分が一番性格悪いんだけど。


「あの、藤田さん?」

「......何?」

「え、えっと!」


不機嫌なのが全開だっただろうか。機嫌を損ねてしまった、と滝さんの顔に書いてある。


「す、好きって言ってもほら!他の子たちと一緒で空くんいいなって思ってるだけだから!!あんだけ凄い人なのに惚れない方がおかしいというか!だ、だから別にそんな、大層な期待もしてませんので!」


わたわたと両手を必死に動かし、目が回る勢いで言い訳をする。


あぁ、嫌だ。


何を言っていようが、誰に好かれていようが、天然系の良い子だと思われていようが、お前も私と同じ。性格悪いよ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ