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私と、幼馴染と、  作者: 円寺える


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第90話

 学校から帰るとそのまま空の家に行き、ベッドに縋って座りこんだ。

 遅くまで学校に残ってクラスメイトと会話や指示をしたりして、疲労が溜まっているのか空は重いため息を吐いた。人望が厚いとこういうとき一番重い荷物を背負わなければならない。


「大変そうだね」


 まあ、私には関係ないけど。そんなニュアンスが入ってしまった。


「はぁ、本当に疲れるよ。ちょっとは自分たちの頭で考えてほしい。何のために脳みそがあるんだよ」

「考えるっていうか、空と話したいんでしょ。気持ちは分からなくもない」

「迷惑。イベントだからって調子乗ってるんだよね。普段なら話しかけてこないような奴も話しかけてきてさ」

「良いチャンスだし、話しかけたいっていう乙女心よ」

「クラスメイトだけじゃなくて、他のクラスからも声をかけられるんだよ。いや、君誰?って感じの子が多くてね。なんか見たことあるような顔の子もいたけど、誰が誰だか分かんない」


 私だってこの文化祭っていう一大イベントで空くんと仲良くなりたい!今まで話す機会がなかったけど、イベントなら話しかけても変ではない!これから少しずつ話すきっかけを見つけて仲良くなっていこう!と、可愛らしい乙女心で話しかけた結果、空には「君誰?」と鼻で笑われる結果に。あの空くんがそんなことを言っているなんて夢にも思ってないだろう。きっと今夜は「空くんに話しかけちゃった、キャーー」と悶えながら良い夢を見て眠りにつく。知らぬが仏というやつか。


「そんなに疲れてるなら、文化委員の子に手伝ってもらえばいいじゃん。滝さんだっけ。彼女、空に全部任せてる気がするんだけど」

「あぁ、それなら問題ないよ。彼女はきちんと仕事してくれてるし、結構助かってるから」

「そうなの?」

「問題なのはもう一人の委員かな。男なんだけど、全然やる気なさそう。まあ、俺が委員みたいなことしてるから、若干不満があるように見えるなぁ。俺はやりたくないから、頑張ってほしいとことだけど。俺より人望のない奴がやる気無さそうにしてたら、誰も頼りにしないよね」

「嫉妬してるのか」

「簡単に言えばそういうことだねぇ。イケメンで人望もあって行動力のある俺を前にして嫉妬なんて、誰もがするに決まってるでしょ」

「うわー、言うよね」

「だって本当のことだし。そんなに目立ちたいならリーダーシップをとれって話じゃん。俺はやりたくてやってるわけじゃないし。人気者も疲れるねぇ」


 ふぅ、と言いながら前髪をかき上げる空は男前だ。これに勝てる男なんているのか。いや、いない。どの角度から見てもイケメンで、写真も常に事故画はない。こんな人間がクラスを仕切っているのだから、押しのけて前に出る勇気はその委員の子にはないだろう。


「そういえば今日、滝さんに話しかけられたよ。気を遣ってくれたのか迷惑だと遠まわしに言われたのか、よく分かんなかったけど」

「滝?あぁ、そういえば話しかけてたね」

「見た目は可愛い子だよね」


 可愛い、だなんて言いつつも滝さんはなんだか空の嫌いな類の人間のような気がする。

 よく空に話しかけてるし、ふわっとした髪が空に接近していたし。空は彼女を馴れ馴れしい女認定していそうだ。


「滝は嫌いじゃないな」


 意外だった。まさかの返答に口が開く。

 あれ、でも、空の嫌いなタイプだと思ったんだけど。

 だってあんなに近くにいるし四六時中話しかけてるし。どういうこと。


「そ、そうなんだ。意外」

「滝は結構気が利くよ。これをやったら鬱陶しいと思われる、っていう線引きができてる。あれは上手いね」

「線引き....?」


 空が女を褒めるなんて何年ぶりだろうか。

 あの空が、あの空が、褒めている。


「委員の仕事も、俺が苦労してるように見えるけど裏方はほとんどやってくれたり暇な奴等を言いくるめて仕事させたり、なかなか出来る女だよ」

「へ、へえ」

「他の女と違って適度っていうものを知ってる。ここら辺で引き上げないとウザい女、鬱陶しい女だと思われる。そういうのが分かってる奴。そういう計算ができる女は好きだね」


 好き、だと。

 あの空がここまで言うなんて。

 そこまでイイ女には見えなかったけど、この空がここまで言うんだ。イイ女なのだろう。


「多分あの学校で一番モテる女は滝だな」

「.....随分高い評価だね」

「あれは凄いよ。同性とかその辺の男から見たら、特別イイ女には見えないだろうけど。目が肥えた人間にはそう見えるんだよ」


 褒めちぎる空に私はあまり良い気はしなかった。

 関わりは少ないから滝さんのことを詳しく知らないけど、顔が可愛いだけの印象だ。クラス内で動く滝さんも見たけれど普通の女子と何ら変わらないように見えた。空が言う程の人間とは思えない。


「あれを無意識にやってるとしたら、相当な強者だね。あの子は多分、将来でかい魚を釣るよ。そして釣った魚がでかいと知っているから、絶対に逃がさない。そんな女だね」


 でかい魚を空に変換してしまった。一般的に見たら性格がクズである空が、国宝級のイケメンである空が。大物が、大物を捕まえることは可能と言っているのだ。

 大物を捕まえることができる滝さんも大物。そんな女が空と同じクラスで、一緒になってイベントのために奮闘している。フラグがポッと、立ったような気がした。


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