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私と、幼馴染と、  作者: 円寺える


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第86話

文化祭の準備が少しずつ始まった。私のクラスに準備という大層なものはしない。展示するものを持ってきて当日までロッカーに入れる。前日に飾りつけをすれば、はい完成。なんと簡単で手抜きなことか。他のクラスからは楽しそうな声がし、作業の音も聞こえてくる。

ホームルームは文化祭準備の時間になったのだが、私のクラスだけはすぐさま解散となる。


「ねぇねぇ、空くんのクラス見に行かない?」


解散になった途端に女子の声が聞こえた。空のクラスの女子は楽しんできゃっきゃしているだろうから、他クラスの女子が割って入れば激怒するに違いない。


「空くんと同じクラスの女子いいなぁ」


解散してもいいというのに、クラスの女子は半分躊躇っているようだった。空に会いに行こうか、でも他クラスだし。そんな思いで一歩が踏み出せない子たちは固まって悩んでいるようだった。

私はというと、空に「先に帰るな」と念を押されたため、帰るに帰れない。


「藤田さん、ちょっといいかな」


空のクラスが終わるまで読書をしようと、新刊を手にした瞬間クラスメイトの女子に話しかけられた。


「何?」

「空くんが呼んでたよ」


どこか嬉しそうに言う彼女たちは、恐らく空に直接頼まれたのだろう。

扉を見るが空の姿はない。


「分かった、ありがとう」


何の用だろうか。


本を机の上に置いて、手ぶらで空の教室まで行く。

多分どうでもいいことだろうな。やっぱり先に帰って、とか。しかし空の方から来ないということは、何か意図があるのかもしれない。


空のクラスの前まで行き、中を覗いてみると机を全部前に寄せ、教室の後ろで皆が作業をしていた。男子も女子も楽しそうにしている。その中心にいるのは言わずもがな、空だ。


直接空に話しかけるのは気が引けるので、誰かに空を呼んでもらおうと、きょろきょろ教室を見渡していると私に気付いた男子が「あっ」と声を上げた。

空の付属品だと気づいた彼等は一斉に空の元へ行き、私を指して話している。

彼等のお陰で私の存在に気付いた空はこちらを向き、大声で言った。


「優!!ごめん、これが終わるまで待っててくれる!?」


空が中心となり作業をしていて、恐らく手がはなせないのだろう。こちらに歩み寄ることなく叫んだ。


なるほど。


空の周りを囲むようにして女子がいる。彼女たちの目は空にしか向いていない。私だけに聞こえるように言うのではなく、皆に聞こえるように言うことで「俺は優と帰るから」と彼女たちに伝えている。「俺はお前らとは帰らないぜ。ランデブーなことは期待するなよ」ということを暗に伝えている。


「分かった」


いつもより硬い声で答えた。


空も大変だな。

空の隣にいる女子は髪が長く、しかも巻いている。ふわふわに巻いているその髪の毛は、空に少しかかっているようにも見える。

これは帰ったら即愚痴モードだ。以前満員電車に乗った際「女の髪が当たってキモかった」と、ゲッソリして言っていたのを思い出した。好きでもない女の髪の毛は空にとって汚いようで、「おえっ」と髪の毛が当たった部分を拭いていた気がする。


「あ、藤田」


そろそろ自分のクラスに戻ろうと思っていると、後ろから誰かに声をかけられた。


「あれ、宮田くん」


「おう」と言いながら宮田くんが立っていた。


「藤田のクラスここだっけか?」

「ううん、ここは空のクラス。ちょっと用があってね」

「そうか」

「宮田くんは?空に用?」

「いや、追い出されたから他のクラスでも見ようかと思って」


聞くと、どうやら宮田くんのクラスの女子たちは張り切っているらしく、使えない男子は出ていけと追い出されたらしい。なんとも気の強い女子たちだ。


「藤田のクラスは展示だったか」

「そうだよ、宮田くんは?」

「子供向けのゲームだ。詳しくは女子しか知らん」

「そ、そうなんだ」


宮田くんを追い出すとはなかなかやるな。宮田くんも空と仲が良いだけあって顔面の偏差値は高めだ。空のように綺麗というわけではなく、イケメンというよりハンサムって感じだ。


「蒼井は大変そうだな」

「まぁ、空だから」

「蒼井はよく輪の中心にいる。カリスマ性というやつだな」

「宮田くんもカリスマ性あるよね」

「そう思ったことはないな」


などと、することがない私たちは空の教室の前で談笑していた。

他クラスの前で話すのもどうかと思い、場所を変えないかと宮田くんに案を出そうとしたところ、高めの声にかき消された。


「あれー、宮田くんだ!」



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