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私と、幼馴染と、  作者: 円寺える


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85/122

第85話

ここ数週間は空の家にお泊りをしていなかったので、今日は久々にお泊りセットを持って空の部屋に乗り込んだ。

部屋は綺麗に片付いており、埃一つ見当たらない。

お泊りセットを部屋の隅に置いてベッドに凭れて胡坐をかく。


「空、元気だして」


隣で落ち込んでいる空の肩をぽんぽんと叩いて励ます。


「俺、俺…」

「うん、わかってる」

「何で門の飾りなんか…」


文化祭の出し物について、学校から帰っても愚痴を言っている。


「文化祭までの俺の時間、終わった」

「頑張って」

「絶対準備中、香水ぶっかけてる女に挟まれる」

「仕方ないよ」


そんなに嫌なのか。

まあ、その予想は裏切られることはないのだろう。

肉食系なんてそんなものだ。


「でも珍しいね、空がそんなに凹んでるなんて」

「行事のときは毎回こんな感じだよ」

「そうだったっけ」

「あー、やだやだ。せめて顔が良くて聞き分けの良い女なら、そんなに文句もないんだけどなぁ」


そもそも空が言う「顔の良い女」はレベルが高い。

今テレビで話題になっている千年に一人の美少女ですら鼻で笑っていた。

誰がどう見ても可愛くて、事故画もない。あんな美少女と付き合えたなら世界で一番幸せだと実感するだろう。

今まで空が可愛いと褒めた女はいないはずだ。私の記憶にはない。良くて「まあまあかな」という評価だ。世間一般で見たら可愛いのだろうけど、俺とは不釣り合いだ。そう言っている。


「空、大学はもっと人が多いんだよ。今そんなこと言ってたら大学入ったとき困るよ」

「そうなんだけどさぁ」

「猫被るの得意じゃん、ほら、頑張って」


私は何故応援しているのか。

女に言い寄られるのが嫌だという幼馴染に頑張ってと言う女もそういないだろう。

他の男子が聞いたら泣いて発狂する。贅沢を言うなと。


「じゃあ、膝枕して」


不意にそんなことを言い始めた。


「は?なんで?」

「応援してくれるなら態度で示して」

「いや、意味分かんない」

「いいじゃん膝枕くらい」


じりじりと寄ってくる空に疑問符ばかりが浮かぶ。

いや、急にどうしたんだ。

脈絡が全然ない気がする。

どういう思考になったら膝枕なんて単語が出てくるんだ。


無駄に良い顔で詰め寄ってくる。


「今更照れてるの?」

「そうじゃないけど」

「じゃあ、いいじゃん」

「いやいや」

「何、他に何かしたくない理由でもあるわけ?この俺を相手に?」

「また急に、どうして膝枕とか」

「特に理由はないけど」

「ないんかい」

「前ならすんなりやらせてくれたよね、何でしてくれないの?」


以前にも膝枕をしたことは何度かある。

だから今回も問題ないだろう、と。


だが、何というか、気持ちの問題だろうか。

あまり気乗りはしない。

はっきり言うと照れがある。

前はこんなこと、なかったんだけど。


「意味分かんない、何なの、俺を拒否するわけ?」

「そういうわけじゃない」

「明日から獣の群れに無抵抗で放り投げられるんだよ?ちょっとくらい甘えさせてくれてもいいんじゃない?」

「う、うーん」

「最近あんまり触ってないしさぁ」


変態か。


渋る私に痺れを切らしたようで、不満顔だったものが更に不満顔になる。


「じゃあエロい写真撮らせてくれんの?ねえ、壁に貼りたいんだけど」

「は!?」


馬鹿じゃないの!?

と、言いたかったが言葉にならず口をぱくぱくと動かすだけになった。


「健全な男子高校生が持ってるエロ本なんて俺は持ってないけど、そうだな、優の本なら作りたいよね」

「ちょ、ちょ、ちょ」

「服ひん剥いて写真撮られるのと膝枕、どっちがいいか言ってみろ」

「膝枕です」

「よし」


これは所謂脅迫ではないのか。

しかも目が本気だった。


あまり考えたことはなかったけど、まさか私のことをそんな風にも思っているのか。

確かに健全な男子高校生なら誰しも、そういうことを考えるのだろう。

空も例外ではないということか。

そういえば、空は高校生になって彼女は作っていない。ということは、未経験か。

いやでも中学のときは数人いたし、そのときにもう済ませている可能性も否定できない。

けれど中学生でそんなことするのか。それは一般的なのか。いや、そんなわけないか。中学生は多感な時期だけど、まだ子供だし、まさかそんなことはないだろう。


「ねぇ、腕邪魔」


正座になった私の膝に自分の手を乗せていたら払い落とされた。

ごそごそと動きながら、邪推している私の膝に頭を乗せる。


「はぁ、俺も罪な男だよな。顔が良いばっかりに」


吐いたため息が膝に当たってくすぐったい。

サラサラの髪を右手でいじりながら、空の自画自賛を静かに聞いていた。


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