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私と、幼馴染と、  作者: 円寺える


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第83話

「そういえば住之江さん見なくなったね」

「あぁ、彼女なら華ノ女子に転校したみたいだよ」


突然現れ嵐のように去っていった女の名前を出せば、どうやら空は知っていたようで淡々と話してくれた。

登校中の女子生徒が数名、空に声をかけ空もそれに対して笑顔で応える。


「そうなんだ、知らなかった。空のこと気に入ってたみたいだったけど」

「俺を、っていうよりは俺が持ってる物が気に入ってたんでしょ」

「そうなの?」

「優は馬鹿だなぁ」


わしゃっと髪の毛をいじられると同時に馬鹿と言われ、ムッとする。

じゃあ、あの嬉し泣きはなんだったんだろ。私にはよく分からないが、どうやら空は知っているようだった。どうしてそこまで住之江さんについて詳しいんだ。


「いいじゃん、もう会うこともない人間のことなんて」

「そうだね」

「それより、そろそろ文化祭だね」

「そうだね」

「一緒にまわろうよ」

「いいよ」


住之江さんに気を取られて忘れていたが、もうそろそろ文化祭の時期だ。

うちの学校は文化祭を二日間行う。


「今日のホームルームで文化祭の出し物を各クラスで決める予定だったよね。忙しくないやつがいいな。俺、皆で協力とか嫌いだし」

「私も」

「忙しくなったらさ、俺が中心になって作業することになるんだよ。それをチャンスだと思ってるのか知らないけど女からの攻撃が鬱陶しい」

「それこそ文化祭の醍醐味じゃん」

「やだやだ、行事だからイケると思ってるのかな。俺は今までお前らに靡いたことないだろ、いい加減気づけよ。行事だろうが普通の日だろうがそれは変わらないっての。ねぇ?」


文化祭などの行事は空にとって少し邪魔なものだ。いつもに増して女に絡まれ、触られ、告白される。それが毎回毎回続けば鬱陶しいものにしかならないだろう。

去年も中学のときも、行事の日はイライラしていた。


女子の気持ちも分からなくはない。いつもと違う日、わいわい楽しむ日。そんな日は普段よりテンションが上がり、なんでもできそうな気がするのだ。

しかも、いつも以上に女子がたくさん空に群れるのだから、今日くらい勇気を出して近づいてみようという輩まで現れる。モテる男は大変だ。


「今年の文化祭は最後までいる?」

「食べたら帰る」

「だよねぇ」

「残りたいなら残れば?」

「俺を盛った猿の中に置いてくつもり?」

「顔、怖いよ」

「あー、やだやだ。これだから文化祭は嫌だ」


本気で嫌らしく、周りに生徒が数名登校しているというのに顔を顰める。いいのか、学校のアイドル。


でもまあ、私も空と一緒に文化祭をまわるのだ。そうなると当然、被害は私にも及ぶ。

去年の話を持ち出そう。

二人でフランクフルトを買いに行ったときだ。フランクフルトを売っていた女は空の知り合いらしく、親し気に会話をしていた。私はさっさと購入し、次へ行こうと思っていたのだが、どうやら女は空を放したくないらしく、ずっとずっと喋っている。挙句の果てには「お客さんいるから、こっち来て話そう」と言い、テントの中に空を引きずり込もうとしていた。私は呆気にとられ、空を助けようという気も起らなかった。


他には、他校の女が空を独占しようと腕を引っ張っていたり。売り子の人がチャンスとばかりに絡みに来たり。


去年も散々だった。


文化祭に行かないという選択肢もあるが、美味しそうなものがたくさん売ってあるし買って帰るだけだし、母が楽しんで来いと言うし、参加している。


「ねぇねぇ、今年はどんなのをやるんだっけ。忙しいやつかなぁ」

「三年が飲食、一年は展示、二年は...何だろう」

「二年も展示ってアリかな?」

「さぁ、でも空が言ったらアリになるんじゃない?」

「俺、あんまり口出ししたくないんだよね。それでなくても中心になるんだから、発言なんてしたら尚更俺が中心じゃん」

「発言してもしなくても変わらないなら、すれば?」

「俺が発言しなかったら文化委員に色々任せられるけど、発言したら文化委員に、これどうすればいい?って聞かれる立場になるじゃん」

「じゃあ楽なやつ選べば?」

「楽なのが良いんだけどねぇ、どうかなぁ。多分女の方は皆で協力して達成感を得る、みたいなのを望むからね」

「.......あぁ」


楽な出し物にしてしまうと、クラスメイトは空と関わる時間が減る。文化祭までの準備で空と協力してゆくゆくは、と考える人が多いだろう。それこそ展示なんかにしたら「じゃあこれを展示しよう、はい終わり」で呆気ない。空と青春したい人はたくさんいるだろうから、恐らく空のクラスは忙しくなるだろうな。


「今から憂鬱」


可哀想に。


「でも帰りは一緒に帰ろうね、できるだけ」

「私を盾にしないで」

「だって絶対、一緒に帰ろうとか言われる。夜道を女と帰るとか、俺襲われるじゃん」


文化祭の準備は外が暗くなるまでやるのが青春だから。


「そんな時間まで私に残れと?」


屈託のない笑顔で頷かれた。


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