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第5話

空の家にお邪魔し、階段を上って彼の部屋へ行く。

相変わらず綺麗な家だ。蒼井空が住んでいると言われて納得するお家。毎日お母さんが掃除機をかけているのだろう。ウチとは違って埃がない。これだから、空を自分の家へ呼ぶのは嫌なんだ。


「先に入ってて、お茶とってくる」


私を部屋に招き入れ、空はリビングへ向かった。

そこらへんの床に鞄を置き、昨日買ったゲームを箱から取り出し、彼が来る前にゲームの電源を入れた。

スカートを履いているにも関わらず胡坐を組んでベッドに縋る。


「待たせたね、はい、持ってきたよ」

「ありがとう」


小さな机にお茶とグラスを置き、私はゲーム機から一切目を離さない。


「あ、これも貼っとこうか...」

「空?」

「なに?」

「また増やすの?どんなの?」

「んー、可愛いの」


そう言って、ゴソゴソと動く空。


「よし、できた」


いつ撮ったのか分からない、まあ、隠し撮りなのだから当たり前だけど、私の写真を壁に貼った。

新しいコレクションらしい。


「なかなか、良い部屋になってきたと思わない?」


そう言われて、ゲームを中断させ空の部屋を見渡す。壁には、無数の私の写真。どこを見ても私、私、私、私、私。幼稚園に通う前の私から、今現在、恐らく昨日の私までぎっしりと貼り付けられている。

それを「良い部屋」と私に聞かれても答えにくい。


「でも、部屋に写真を貼るのってキモいらしいよ。今朝のニュース見た?」

「あぁ、幼女誘拐犯の部屋に写真が貼ってあったっていうあれ?」

「そう、クラスの子たちが話してたよ。キモい、変態、ってさ」

「ふうん、興味ないや」

「だから空はキモい変態っていう部類らしいよ」

「優はそう思うの?」

「思ってたら今こうしてここでゲームなんてやってないでしょ」


空の私好きは今に始まったことではない。昔から、こうだった。今更改めて客観的に「変だ」なんて思うことでもない。


「それにしても...」


チラリと勉強机の横を見る。勉強机の上、ベッドの下。


「収集癖の人って皆こうなのかな」


私が小学校、中学校で使っていた体操服やペン。リコーダーまである。

私の私物でナニをしているのか知らないし、知りたくもない。

想像できる範囲では、私の体操服の匂いを嗅いで興奮したり。私が使っていたリコーダーを吹いて、間接キスを味わったりと、そんなとこだろうか。

しかしこれは、空だから許されることであって、もし違う男性がそんなことをしたら私は気持ち悪くなって倒れるだろう。そう、例えば今朝の誘拐犯がやっていたら....そう考えて、やめた。クラスメイトの言う通り、あの誘拐犯が気持ち悪く思えてきた。


「ちなみに、今日は写真撮らせてくれないの?」

「え、撮るの?」

「だめ?」


きゅるるん、と可愛い目をして首をかしげるもんだからタチが悪い。

自分の容姿を知り、その使い方を分かってらっしゃる。


「いや、別に、いいけどさ。でもこういうのって、隠し撮りするから興奮するんじゃないの?」

「興奮?別に興奮というほどの興奮はしないよ。ただ部屋中に優がいて、優が俺のことを見て、俺が優を見て、それが俺の生活なだけだよ」


学校のアイドルにここまで言わせている私は随分と罪深い女だ。と、酔いしれる。

もしも、空のことが好きな女が告白し、断り文句がこれだったとき。その女は発狂し「気持ち悪い」と吐き捨てるのだろう。自分から告白しておいて、結局そう言うのだ。多分。恐らく。

空は現実が見えているから、そんなことを言って告白を断ったりしないけど。


「じゃあ撮るよ」

「待って、ポーズがまだ」

「ポーズなんて何でもいいよ、優は優なんだから」


しれっとそんなことを言って、どこからか取り出したカメラでパシャパシャ撮るのだ。

私は気にすることもなくゲームに没頭した。


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