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私と、幼馴染と、  作者: 円寺える


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第49話

危険な芽は早めに摘むように、俺は翌日行動に移した。それはテストが返却され順位発表があった日だった。張り紙を見に行かずとも自分が首位であることは分かり切っているため、無駄足を運ぶようなことはしない。

張り紙を見てきた男女数名が集まっている場に迷わず入る。

よく纏わりついてくる彼等は噂好きであり完全なる俺の味方だ。


「俺も話に入っていい?」


自然な笑顔で言うと快く輪の一部を空けてくれた。


「何の話をしてたの?」

「丁度テストの話だよ。空くん今回も一位だったね、すごいよ」

「はは、ありがとう」

「俺らも今回は結構勉強したからな、点数上がってたぜ。勉強会に行った甲斐があったな」


なるほど、テストの話をしていたのか。

ならば自然と会話は俺が持っていきたかった方向に進むだろう。


「勉強会といえばさ、福永さん結構上だったね」


そらきた。


「あー、あのデブね」


その話題になるやいなや、クスクスと感じの悪い笑みを浮かべ始める。

このネタは皆好きだな。他人の不幸は蜜の味というがまさにその通りだ。この学校の生徒は皆人間味がある。


「まあまあ、福永さんってテスト範囲を詳しく教えてくれたし....」


苦笑しながら、皆を宥める様を演じる。

ここで悪口に便乗すれば俺のイメージが壊れる。やはり優しさは大切だ。どんな相手にも優しい心を見せなければ信用は得られない。


「空くんって嫌いな人とかいない感じするよね、良い人すぎでしょ」

「そんなことないよ、俺にだって好き嫌いは多少あるよ」

「心が広いよね、わたしたちとは大違いだわ」


尊敬の眼差しを受け、笑いを堪えるのに必死だ。


「でもさぁ、ちょっと思ってたんだが、福永知りすぎじゃね?何であんなにテスト範囲知ってんだよ」

「あー、先生のお気に入りとか自分で言ってたじゃん」

「は?贔屓じゃね?」

「それ思ったー、なんであいつだけ贔屓されてんの?」


これがほしかった。

俺がすべて言わずともこうやって話を良い方向へ持っていってくれるからこういう人間は楽だ。

自分たちは福永の持っていた詳細を知ることで良い点が取れたというのに、恩もなにも感じていない。それどころか何故あいつだけがあんなに知っているんだ、と非難する。

自分にとって有益だったにも拘わらずそれを棚に上げて責める様はなんとも人間らしい。


だから、威張って全て喋るとこうなるのだ。

俺はそこまでテストについて、皆に詳しく話していない。教師に聞けば誰でも答えてくれる程度のものに留めていた。もしすべてを他人に教えたとして、素直に「ありがとう」と言ってくれる者もいるかもしれないが、「何故あいつにだけ」という嫉妬までもらうことになる。


「ねぇねぇ、何の話?」


教室で比較的大人数で会話をしていると、自分も仲間に入れてくれと数人の生徒が入ってきた。


「あぁ、福永の話だよ。あいつ贔屓されすぎじゃね?っていう話」

「あ!それ知ってる、結構皆言ってるよ」

「やっぱり?つかあいつ、もう居場所ないんじゃね?」

「ウケる、だって勉強会で皆察したじゃん」

「嫌われてるよね、わたし三井さんにも教えようかな」


誰かが言った、三井さんとは学年の地味系女子の中心にいる女の子だ。

彼女も地味な見た目だが、それに反して中身はとても明るい。誰とでも話す、明るいオタク女子だ。少し話をしたことがあるが、好感の持てる人物だった。持ち物はほとんどアニメのキャラクターなのでインドアかと思いきや、運動も得意なようで体育で活躍する姿が評判になっている。

彼女のことは派手めな女子も好意を持って接しているようで、たまに派手なグループに混ざっているのを見かける。彼女はただの良い子ではなく、好き嫌いが明確に線引きされている。好きなものは好き、嫌いなものは嫌い、というそのスタンスで男女共にそこそこ人気だ。あくまで友達として。

俺は三井さんとそこまで仲が良いわけではないので彼女が福永のことをどう思っているかなんて知らないが。

その子にまで噂を流すということは、目立たない女子にまで福永は敬遠されるかもしれないということだ。


「わたし明日先生に言ってみる」

「贔屓しすぎじゃね?って?」

「そう、教師がそんなことしていいの?って言ってくるわ」

「そんなことしたら、先生も福永のこと呼び出しそうだよね」

「そうなってほしいわー」

「ここまで学年から嫌われるのも可哀想だわー」


美味しいネタになった福永のおかげで、俺は笑いに包まれた。


「あ、空くんの前で悪口言ってごめんね?こういう話苦手じゃない?」


名前も知らない女子生徒が申し訳なさそうに気を遣う。

そのことに気づいた他の女子も俺の顔色を伺う。


「いや、大丈夫だよ。好き嫌いは誰にだってあるしね。あ、じゃあ俺この後先生に呼ばれてるから、ごめんね」

「ううん、こっちこそごめんね」


悪口を言わない優しい空くんは、申し訳なさそうに「こういう話苦手じゃない?」と言われたら退出した方が似合っている。あのまま居座ってもよかったが、さすがにそういう雰囲気ではなかったので退散した。


しかし、俺の周りの人間はよく動いてくれる。こうも上手く事が運ぶだなんて自分の才能なのか、運なのか。

利用できるものは利用する、使えるものは使っとく。生きていく上で必要なことだ。


今回のことに関しては俺が何もしなくてもあの女は自爆しただろうが、念には念を。

取り合えずさっきの人間がこれから噂を伸ばしてくれるだろう。





そして見事、翌日に福永は国語準備室に呼び出されていた。

それは俺と優だけでなく他の生徒も目撃したようで、SNSで噂好きの女が垂れ流していた。

これであの女の居場所はなくなっただろう。まあ、数人くらいは友達でいるかもしれない。

と、思っていたのだが、そのまた翌日には完全に孤立していた。どうやら俺が思っていたよりも彼女と関わりたくない人間が多かったようで、あの三井さんでさえ彼女を嫌っていたのを知った。

嫌われている人間と関わって自分まで嫌われたくない、と考える人もいたのだろう。福永の周りには薄情なやつしかいなかったようだ。一人くらいは彼女を利用できる人間として隣に置く人がいるのかと思ったりもしたが、現実はそう優しくないってことだ。




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