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第23話

最近、空が後輩に絡まれているのをよく見かける。

「イケメンの先輩」で一年の間では有名なのだとか。中学の頃よく空に懐いていた男の子の後輩が教えてくれた。ついでに、私は目の敵にされていることも教えてくれた。

私がもう少し美人で空と並んでも見劣りしない外見であれば彼女たちも納得して「お似合いの二人だな」なんて、慕われたりもしたのだと思う。そして入学して間もないのに「空先輩」と呼んでいる一年生に同級生はあまりよく思っていない。

空のクラスが校庭で体育をすると、一年の教室からいくつもの視線。授業が終わり、校庭から教室に戻ろうとする空に向けて「お疲れ様」コール。最近、だんだんと一年生が調子に乗っているという話をよく耳にする。これは何か起こりそうな予感がする。前兆があるだけまだ良い。


次の授業は移動教室のため、教科書と筆記用具を持って廊下を歩いていると前方から空率いる男女数名が楽しそうに歩いてくる。空はこちらに気づき笑顔をくれた。その他の同級生とは友達ではないといえ、空と仲良くしているので必然的に私ともたまに交流がある。挨拶や世間話をするだけだ。


「あっ、空先輩!」


私の横を通り過ぎ、青い上履きの一年生たちが空を発見し駆け寄った。

校則はまだ守っているようで黒髪の初々しい姿。


「空先輩は部活とかしてないんですかー?」

「うん」

「えー、何か入らないんですかー?」

「はは、うん」


きゃっきゃと楽しそうにする一年生とは逆に、空と一緒に行動していた同級生は無表情だ。

しかもここは二年生の階であり、滅多なことがない限り一年や三年が来ることはない。

それでもこうして堂々と来るのだから、周りが見えていないのかそれとも勇気があるのか。


「あっ、藤田さんじゃん!!」


痺れを切らしたのか、空の隣にいた女の子がこっちを見て大声を出した。


「空くん、藤田さんいるよ」

「本当だね、移動教室かな」

「ほら、幼馴染が待ってるよ!行こう!」


待ってないけど。

一年生から逃げるためか、空の手を引いて私の元までやってくる。

それを見た一年生は不満そうだった。顔に「えっ、あの地味なのが幼馴染?」と書いてある。正直だ。

しかし次には「あれには勝ってる」という安堵した表情が見えた。


「藤田さん、移動教室?」

「うん、理科室に行くから」

「へえ、化学?」

「いや、生物だよ」

「あ、藤田さん文系だったか。文系の人は生物と地学だもんねー」


一通り話が済んだところでばいばいした。

もう一度前を向くと、そこに一年生の姿はなかった。

少女漫画のような高校生活に憧れているのか、学校のアイドルに一生懸命近づこうとする必死な姿が何とも言えない。同級生は同じ階に空がいるし、見ようと思えばいつでも拝める。

一年生にとっては階が違う上に、空と関わる機会なんてない。空が部活でもやっていれば違ったかもしれないが、生憎帰宅部だ。帰りに話しかけても空の横には私がいるため独占できない。偶然なんてほぼない。少女漫画では偶然に良い出会いが訪れるのだろうが、現実は違う。

必死こいて出会わなければ、何も始まらない。空が自ら一年と出会おうなんてこれっぽっちも思ってないため、恥を捨てて二年の階まで来なければならない。校内のどこかで本当に偶然会うかもしれないが、確率は低い。二年の階に行けば高確率で空がいるのだから、こちらに賭けるのが利口だ。

ただし、二年女子は良い顔をしない。「私たちの空くんを一年がキャーキャー言うなんて立場考えろよ」と。後輩がしゃしゃりでてくんじゃねえぞ、と。放課後、空き教室で愚痴っていたのを耳にした。空と一緒に。





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