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第11話

予期していた事件が起きたのは、意外にも一週間後だった。

空がSNSを始め、空のアカウントを知りたい人たちが一斉にフォローした。中には他校にいる関わったこともない人たちからも通知がきていたみたいだが、さすがに面倒だと言ってその人たちには何もしていなかった。

空と繋がっている人の中には、山本さんやミキちゃん、この前の秋田さんなどがいた。

SNSを始めると起り得る可能性の事件が早くも起きてしまった。空といると主に女絡みの事件まみれだ。絶対いつか刺されそうで怖い。


空の隣にずっと私がいるといっても、恋人という存在がいなかったわけじゃない。数えると彼女は恐らく三人か四人いたはずだ。空にしては少ないと感じていたが、本人は本気ではなかったらしく長く続いたものでも一年もたなかったくらいだ。空が私を好きなのは知っていたし、それが恋愛感情なのか定かではなかったが、幼馴染というポジションの私より格上の彼女というポジションを作った、ということに当時は驚きを隠せなかったもんだ。しかし空の彼女というポジションを作ったことで私にメリットもあった。

よく覚えている。中学二年生の頃だ。その頃はいじめが一番酷かった時期で、多感な年ごろの女子たちは私という存在が気に食わなかったらしく、空に振り向いてもらえないからと八つ当たりをしてきた。上履きを隠されたり、教科書を捨てられたり、朝早く学校へ行って私の不細工な似顔絵を黒板いっぱいに描いていたり。それはもう、学年が知っているくらいにはいじめられていた。助けてくれるような友達はいなかったし、「やめてよ!!」と大声で反抗するような性格でもなかったし、ストレスが溜まるのを感じながら生活していたとき。


空に、初めて彼女ができた。


私がいじめられていたのは知っていただろうし、それを考えての行動だったのかよく分からない。

しかし、幼馴染よりも大切にされる位置に他の女が座ったことで、私へのいじめはピタリと止まった。それもそうだ。私なんかに構っていても、恋人は他の女なのだから、いじめ損だ。くしくも、その恋人というポジションについたのは、私をいじめていたグループの一人。それ故、グループ内で争いが起きた。「抜け駆けとかありえない」「何でお前が彼女になってんの」等。標的は私からその子へと変わったのだった。


そんなこともあったなぁ。懐かしい。そのグループの女子が今どこにいるのか知らない。もしかしたらこの学校にいるのかもしれないし、そうでないかもしれない。


「ねえねえ、空くんのアカウント見つけた?」

「見つけたよ、もう速攻フォローしたもん」

「フォローしたんだけど返してくれなかった...」

「空くんと仲良くないからじゃない?ほら、わたしはよく喋ってるからさー」


クラスでもそれほど目立たない女子たちが教室の後ろで会話をしている。私はそれを聞こえないフリして、聞いていた。聞こえていた。確か彼女たちは、クラスでも「勘違い系女子」というレッテルを早々に貼られていた子たちだ。確かに、授業中も勘違い発言が多い。「蒼井くん」呼びだったはずが、四月の終わりになればいつの間にか「空くん」呼びだ。ミキちゃんはこの間蒼井くんと呼んでいた気がするが、つい先ほど山本さんとの会話が聞こえ、そのときは「空くん」と呼んでいた。

しかし、考えてもらいたい。そこまで仲良くない上に相手の名前も知らない異性に、いきなり下の名前で呼ばれたときの気持ち。気持ち悪くないだろうか。私だったらゾッとする。

中学から同じ子は確かに「空くん」と呼んでいて、それを高校からの子が真似ただけなんだろうけど。


「あいつら勘違い発言多すぎー。空くんがお前らみたいな女子と仲良くするわけねえだろ」


ギャルの部類に入るクラスメイトが、後ろで会話をしていた勘違い系女子たちを失笑する。

その言葉、そっくりそのまま返したい。


そして、事件が起きた。勘違い系女子の話は置いといて、昨夜事件が起きた。

空の部屋で寝る準備を整え、何となくSNSを見ていたとき気づいた。

空が雲一つない空を撮った写真を載せ、「空」という一文字を添えて投稿して100件以上のお気に入りをされていた。空の最初の投稿ということもあってか、三桁の数字に驚いた。さすが空だ。なんて感心していると、コメント欄に気になる書き込みがあった。



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