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水の精霊と人間のハーフです  作者: 雨粒
トリアイナ
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六話~ケルピー~

  賞金首を探しに目撃情報があった川の上流に行き、探すこと一刻(二時間)。目的の賞金首モンスターを発見した胴体にある十字傷が目印のお尋ね者のケルピーだ。

 何でも、Dランクパーティーが遭遇して、一人を残して全滅したらしい。金貨二枚というランクCモンスターにしては高額な賞金が魅力だったので狩りに行ったのだった。

 このケルピー、灰色の馬をベースに尻尾だけは魚の尾ひれになっている。

「そっち行ったぞ、ルー!」

「分かってる、ファイアボール!」

 ルーリィの放った無詠唱魔術に怯み、嘶きをあげるケルピー。そこへシャルロットの弓が狙いを定める。

「三連射!」

 ズドドド、という重い音を立て、ケルピーの足の一本に矢が三本見事に命中した。

「鋭き風、駆け抜けて刃となれ、ウィンドカッター」

 バランスを崩したケルピーにサイの魔法威力上昇の効果で強化されたウィンドカッターが首を斬り裂く。

「ぶごぶぎぐぐぐ」

 首を斬られた為、声を発することができずに、ゴボゴボと血が溢れている。

 十秒ほどで息の音が止まると、血抜きして剥ぎ取り、といきたいところだが今回は賞金首の個体かどうかを確認してもらわないといけない。血抜きが終わったらアイテムボックスに放りこんだ。


 帰りの道すがら、ふと、地面に幾つもの影がさした。空を見ると雪マグロの群れが泳いでいた。

「あれぐらいの高さならいけるかな? フライングオーラスラッシュ!」

 矢庭に剣を抜き放ったルーリィが空に向かって技スキルを放った。

「良し、一匹仕留めたっ」

「それじゃあ私も、三連射!」

 三匹のマグロに見事命中し、落ちてくる。

「マジかよ。鋭き風、駆け抜けて刃となれ、ウィンドカッター!」

 シャルロットもサイも仕留めた。計五匹だ。シャルロットの離れ業にルーリィもサイも驚いていた。

「シャル、よく三匹も仕留められたね。すごいや」

「ああ、さっきのは脱帽だわ」

「ふっふーん。遠距離では弓の勝利ね」

 言いながらマグロと矢を回収しつつ、それぞれ矢筒とアイテムボックスに入れていく。矢はこうして繰り返し使う事で血を吸わせ、強化できる。シャルロットの弓矢は彼女の両親が現役時代に使われていたものだから相当な血を吸っている。同様に剣も何の変哲もない剣だが、吸った血の量が多い為、魔剣に変化するてまえと言った所か。

 臨時収入に三人は気色満面。その美味しさを知っているから、というのもる。

 帰り道門の前に長い車列があった。あったが、貴族用の門の前だったので、一般の人が並ぶ門はたいして人が居なかった。

 すいすい進んでいく一般の人用の門。直ぐにルーリィ達の順番が来てさっと通り抜ける。後ろでは貴族らしき男の怒鳴る声が聞こえていたが、我関せずとばかりに冒険者ギルドに直行した。

 ケルピー発見と討伐の証明としてアイテムボックスから取り出したケルピーの胴体にある十字傷を見せて、違う個体ではないと証明した。

 金貨二枚の報酬を手にギルドを辞した。三人で宿に帰ってから除雪を条件に庭を借りて、訓練していた。すると、耳ざわりな怒鳴り声が聞こえた。

曰く、貸し切りにしろだの、宿賃をまけろだの、聞くに堪えない横暴な声に三人ともが顔をしかめた。

 結局他所に行ったらしいことを怒鳴り声が遠ざかっていくことで知った。正直言って三人は胸をなでおろしていた。あんなのと一緒の宿で過ごすなどご免だとルーリィも思った。

 次の日、仲良くなった冒険者との約束で、ギルドに併設された酒場に来ていた三人。向き合うは五人。その五人のパーティは赤の結社と名乗っており全員が赤いローブを着ている。

 実の所、赤の結社を名乗る冒険者はとても多い。彼方此方の町や村でも見かけるものたちだった。ギルドも容認する善良な者たちの集い。それが赤の結社だった。

 ただ、赤の結社だけでは個人を特定できないので、最後に数字を付け、ローブの背にもその数字があしらわれている。今、ルーリィ達と酒を飲んでいるのは十二番らしい。

 ロイ、マーカス、ジョニー、アロガン、スネップの五人との酒杯を交わし、中々に盛り上がっていた。アロガンは赤の結社の紅一点。こちらも紅一点のシャルロットと意気投合している。

 そこで聞こえるだみ声。昨日の貴族の声だというのは直ぐに分かった。

 八人全員が嫌そうな顔でそちらを見る。

 依頼もせずに、酒場の方にに顔を出し、強そうな者を見つけては、喜べ、雇ってやる。等と言い放っていた。

 当然ギルドの規範に沿わない行動をしているのだから、奥から筋骨隆々な強面のお兄さんたちが四人ばかりやってきて、両手と共に両サイドを固められた。

 当然喚く貴族。キンダー男爵家の次期当主、このナーリ・キンダー様が直々に声を掛けているのだぞ。喜びにむせび泣くくらいせんか! 等と言っている。

 トリアイナの三人も、赤の結社の五人も、知りたくも無かった次期男爵の名前を知ってしまい憂鬱になる。

 あっさりギルドから放り出されたナーリ。今度はキチンと依頼として話なさい。と強面のうちの一人が言い放った。

「なんだと!? 貴族様が直々に声を掛けてやったのだぞ、誉れに思っても良いくらいだろう!」等と宣うナーリ。貴族は人間の頂点だとでも思っているかのようなセリフばかり放つナーリ。

「そんなのは只の自己満足だ虚栄心と傲慢も混じっているがな。兎に角、ギルドに来る時は依頼として発注するか、あんな高圧的な態度での勧誘をやめるのだな」と捨て台詞を最後に強面たちはギルドの扉をしめる。

 拍手喝采は酒場スペースだけでなくギルド側の冒険者も拍手を送っていた。

 少々照れくさそうにカウンターの奥へと引っ込んでいく強面のマッチョ達。

「ああいう勘違いした貴族って大抵子爵以下の下級貴族が殆どなんだよな」

 と八人で盛り上がりながら酒杯を重ねてく。

 昼過ぎになり、そろそろお開きというタイミングでアイナが席に寄って来た。 

 また依頼だろうか? と思いつつも、アイナが発言するまで待っていた。

 すると、「赤の結社の皆さん、そろそろランンクアップの試験を受けていただけないでしょうか?」ランクアップ試験? そんなのやってないですよ僕たち。とルーリィが呟くと、サイもシャルロットも頷く。

「それはトリアイナの皆さんが特別なだけです」とだけ告げて、赤の結社の五人は黒鉄ランクから銅ランクへの昇格試験を勧めてくる。それに、赤の結社の五人は頷きを返す。

 そうですね、そろそろいい頃合いかもしれません。と、リーダーのロイが言った。       

 取りあえず、詳しい話は明日にと言う事でその場はお開きになった。五人とも頑張れ。それじゃあお先にと、激励を残しルーリィ達は去っていった。

 


数日後、赤の結社の五人はCランク冒険ん者に昇格した。

 これは祝わなくてはとトリアイナの三人で赤の結社の五人の分の飲食代は奢りと言う事にして。ささやかな祝いの席を用意して飲んでいた。

「いやあ、無事に昇格して良かったよ。五人ともお疲れ様」

 赤の結社の皆が、ありがとう、とか、ああ、とか言って相槌している。

「今日は奢りだよ、存分に飲んでくれ」

「悪いなあ、じゃあ遠慮なく。すいません、ミード下さい」

「あ、俺はエールで」

「俺もエールで」

 口々に注文し、少しして先に酒が運ばれてくる。

「かんぱーい」

「「「かんぱーい」」」

 グラスとグラスを打ち合わせる。

 鳥のもも肉にかぶりつきながらエールを片手に流し込むように豪快に食べるマーカス。流石前衛で戦う戦士、と思いながらルーリィは炒った豆を食べている。

 バカ話に花を咲かせたり、ちょっとした疑問を解消したり、と楽しくやっていると。

 まただみ声が聞こえ、全員のテンションを大幅に下げた。今回は、取り巻きの騎士たちも三人ほど連れてきている。

 曰く、折角出した依頼になぜ誰一人として引き受けようという人物が居ないのか。

 ギルド嬢がこの報酬で港町までの護衛は無理があると説明すると、ではいくら払えば適性なのかと訊いた。

 その問いに対しては「一人最低でも銀貨十枚は必要ですね。ですが今は冬、行軍が困難となり時間も掛かります。必要な食料なども多くなってくるでしょう。それに見合った報酬や食料などの物資の支援も保証しなければ、誰も動きませんよ」と受付嬢。

「馬鹿な、たかだか平民の食事など何故用意せねばならない。次期男爵の権威をなんと心得るのか。平民に渡す金も食料も持ち合わせていない。不愉快だ、帰る!」

 そう言って帰っていくだみ声男。(多分三〇代)

 水をさされた八人、いや、酒場スペースの皆。これはいけないと思ったルーリィは昇格試験について尋ねて見る事にした。

「そう言えば、ランアップ試験では何が課題だったんだい?」

「え、ああ。モンスター退治だよ。グランガチっていう大きいワニみたいな魔物さ。鱗が生えていたんだけどその鱗がまた硬くてね、苦戦したよ」

 苦笑するロイ。釣られて他の面々も苦笑いした。

「グランガチか。あの魔物は早々に頭を狙って潰すに限るな」

 とサイが訳知り顔でひとりごちる。

「そうなんだよ、でもグランガチは口から炎を吐きだしてくるし、一番危険なのは正面なんだよな」

「でもスネップが、炎を吐き出そうとしたグランガチの口にファイアーボールを打ち込んで誘爆させたの」

「そうしたら動きが止まって、その隙に皆で頭を重点的に攻撃して、仕留めたって訳だ」

「やるじゃないかスネップ! 見直したよ」

 ルーリィがスネップをほめると皆が同調した。あの時のスネップは輝いて見えたとか、一瞬の判断で流れを作ったのが凄い、とか。


 そんな風に盛り上がって、次の日は全員仲良く二日酔いとなったのだった。

 ◆

名前:ルーリィ・グルブ

種族:人間と精霊とのハーフ 性別:男性 年齢:15 LV29

称号:湖の麗人の子

特殊:水体化 雷属性無効化 無詠唱魔術行使

常時型スキル

身体能力強化LV5 保有魔力増加LV3

発動型スキル

魔力制御LV5 オーラスラッシュLV5 フライングオーラスラッシュLV3 

オーラスラストLV4 雷迅閃LV2 次元斬LV3 鑑定LV3 疾風突LV2 火炎斬LV1(新)

魔法

ヒーリングライトLV4 アンチドートLV10 ライティングLV2 ティンダーLV3 ウォーターLV2 ファイアボールLV2 アイスブリットLV2 アイテムボックスLV4 エナジードレインLV1 フレイムランスLV1 アイスランスLV1 ピュリファイLV1 エクストラヒールLV1(新)

 ◆

名前:サイ・コッツ

種族;人間 性別:男性 年齢:14 LV28

称号:無し

特殊:無し

常時型スキル

身体能力強化LV2 魔法威力向上LV4 保有魔力増加LV1(新)

発動型スキル

魔力制御LV4 魔力撃LV3 鑑定LV3 トライエッジLV1

魔法

ライティングLV2 クレアボヤンスLV3 ソナーエコーLV2 ファイアアローLV3 アイスアローLV3 ウィンドカッターLV2 ファイアボールLV2 アイスブリットLV2 エクスプロージョンLV1 サイクロンLV1 インプロ―ジョンLV1ピュリファイLV1


  ◆

名前:シャルロット・ベイカー

種族:人間 性別:女性 年齢:14 LV30

称号:美人姉妹の妹の方

特殊:回復魔法強化

常時型スキル

身体能力強化LV5 鷹の目LV4 

発動型スキル

オーラスラッシュLV2 オーラスラストLV3 三連射LV4 アローレインLV2 速射LV2 クロスエッジLV1

魔法

ライティングLV1 ヒーリングライトLV3 アンチドートLV2 ウィスパーボイスLV3 ソナーエコーLV3 ファイアアローLV2 アイスアローLV2 アイスブリットLV3 アースウォールLV3 ファイアウォールLV1 フレイムランスLV2 アイスランスLV1



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