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水の精霊と人間のハーフです  作者: 雨粒
トリアイナ
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三話~生態調査~

 十月。季節は秋となっている。

 紅葉があちこちに見られ、落ち葉は積み上げられ、焚火をしている人もいる。

 正しく秋といった情景が広がる中。

「そっちに行ったぞ!」

「任せろ!」

 サイの警告にルーリィが答えて、雷迅閃の動きで行く手を遮る。

 慌てて方向転換しようとしたがそちらには、シャルロットが距離を詰めており、あっけなく捕まった。

<リトルモンキーの捕獲>

期限:出来るだけ早く 

報酬:金貨二枚

*ペットの為傷一つなく捕獲するように

 完了。


「今日のは流石に疲れたな」と、サイ

「あっちこっち走りまわったもんね」こちらはルーリィ

「ソナーエコーが無かったら無理だったと思うわ」ぼやくのはシャルロット

 三人は今しがたリトルモンキーの捕獲の為に町中を走り回った所だった。ギルド併設の酒場で互いの苦労を労っているとギルドの方からパタパタと駆けてくる音に気付いたルーリィ達はそちらを見ると、受付嬢のアイナが駆け寄ってくる所だった。

「すみません皆さん、ギルドからの指定依頼を受けてはくれませんか?」

「内容次第でしょうかね」

 リーダーのルーリィがそう言えば、他の二人は話を聞くのみ。

「実は、近くの森の生態調査をお願いしたいのです」

「近くの森といいますと、あの歩いて三十分くらいのですか?」

「そうです。その森で近頃、食物連鎖によってなのか分かりませんが魔物の姿が殆ど見られなくなっているというのです」

「それは奇妙ですね。あの規模の森なら魔物の存在が無くなることなどありえないはず」

「そうなんです。ですので、皆さんに散歩がてらどうなっているのか見てきてほしいのです。もしゴブリン一匹いないなどという事態であればギルドからの警戒令を発して、森への侵入は一時的に禁止とさせていただきます」

「成程、ゴブリンンは何所にでも湧く魔物なのにその姿が見えない。そうなると確かに異常事態ですからね」

 ルーリィは二人に目配せして、それぞれに頷いたのを見てから。

「お受けしましょう。その依頼、僕たちトリアイナが」

「ありがとうございますっ」

「それじゃあ、今、早めの昼食を取ってからその後に早速向かいましょう」

「え、と。急ぎの依頼という訳でもないんですけど」

「何が起こるか分からないからこそ起きる前に早期発見しなくてはなりません」

「同意見だ。早いにこしたことは無い」

「同じく、何か嫌な予感がするわ」

「と言う事ですので依頼書を持ってきてもらえますか?」


 一時間後、バーソンの町の西門を通って森を目指す一行。

 相変わらずの徒歩ではあるが、今回の目標は森井の中に関するものだ。馬は連れて行けない。近くにつないでも盗まれるのがオチというものだ。

 森に着いた所で三人とも首を傾げる。何か違和感を覚えるが、それが何なのかと言うことには気が付かない。というか、よく分からなかった。

 例のごとく薬草の収集を済ませた。(今回は二百本ほど) 

いつもより一層警戒して森に入り、即座にソナーエコーの魔術を使って周辺を慎重に探索しながら、違和感の正体を探っていた。

「あ、分かった。分かったよ二人共」

「分かったって、違和感の正体に?」

「そう、鳥や虫の声がしないんだよ。これは絶対になにかあるよ」

「「それだ」」

「確かにそうだな、つまり鳥も虫もいなくなる程の何かが居るってことだ」

 サイの見立ては正しいもので。何かは確実に起きている。それが何かまでは分からないのがもどかしそうな表情に現れていた。

 やがて水のせせらぎが聞こえてきた、と同時に前方に感あり。忍び寄って木々の隙間から窺うと――

「ぐるるる」

「ぐるぐる」

 オーガが居た。それも全身が真っ黒のエビルオーガが二体。

<エビルオーガ>

暗黒神の加護を持ったオーガ。通常種に比べ知能も身体能力も高い。


LVは二十五と二十八。格上である。

「何だってこんな大物が居やがるんだー」

「さて、ね。それは分からないけれども。脅威は間引いておくというのが依頼内容だから、狩ろうか、アレ」

 エビルオーガは本来Bランク以上の冒険者が相手するのが普通の魔物であり、決してランクCのルーリィ達が対峙できる存在ではない。本来ならば。

 腰から木剣(・・)を抜き、ゆっくりと近寄っていくルーリィ。エビルオーガたちがルーリィに気がついた。だがその察知能力は低く、サイとシャルロットには気が付いていない。

 木剣は魔力が循環しており、白い光を発している。既に戦闘態勢に入っている。

 ル―リィがエビルオーガ達に向かって走り出すのとサイとシャルロットが魔法を放つのは同時だった。

「「アイスブリット」」

「ぐるう!?」

 氷弾はエビルオーガに二発とも命中。貫通はしなかったが、サイの魔法は流石なものでその分内側からも氷が蝕んでいる。

「オーラスラッシュ」

 何の感慨も無く倒れたエビルオーガの首に斬撃をみまう。と、同時に普通の斬撃で充分そうだ、と考えていた。

 もう一体のエビルオーガが爪でもってルーリィを八つ裂きにしようと迫るが、それを躱しざま木剣を振るとエビルオーガの片腕が綺麗に切断される。

「ぐるがぁっ」

 返す刃で上段から袈裟懸けに切り裂いた。

「ぎっ――」

 最後は声にならない断末魔をあげて倒れるエビルオーガ。

「相変わらず凶悪よね、その木剣とルーリィのコンボ」

「俺も、トレントの枝を貰ったからには成長させねーとだな」

「とりあえず、剥ぎ取りしようか。魔石に角と牙と皮かな」

 ゴブリンの様な下級のモンスターには魔石は存在しないが、オーガ程のモンスターであれば間違いなく存在する。

 ルーリィの木剣は三歳の時に与えられたもので、実に十年以上もの間ともにあった。ルーリィの魔力が練り込まれたり循環されたりした結果、徐々に大きくなるルーリィに合わせて大きさが増していった。今では刀身一メートル以上のモノとなっていた。

 トレントの魔力への親和性と長年ルーリィの魔力が沁み込まれている為、魔力を通せばそれだけで一流の剣士が振るう剣と遜色ない、もしやするとそれ異常の切味をもつに至った。

 三人とも手慣れたもので、三十分とかからずに。剥ぎ取りが終わった。

 残りは全て焼き、消し炭にした。アンデッドになる恐れがあるから死体は残せないのだ。

 そのまま歩いて三時間。かなり念入りに調べてみたものの特に何もなかった。いや、無さ過ぎた。アイナの言ったゴブリン一匹居ない状況とはこれの事か。と思っていたら西の山脈の方から人が歩いてきていた。

 否、それは人と呼ぶにはあまりに大きく、単眼、一本の角。体表は緑で眼球は黄色い。威容。

 森の中から窺っていると三体のサイクロプスは手傷を負っていた。

 いずれも、片手や片足と言った部分が欠けており。這う這うの体と言った様子だった。そこに追い打ちをかけるルーリィ達

「左端任せた、真ん中いく。シャルは右ね」

「「了解」」

 真ん中のサイクロプスは片足が無く、左右のサイクロプスに支えられていたが、

「せいっ」

 ルーリィの斬撃でもう片方の足も斬られ、一気に体勢を崩す。それは両端のサイクロプスを巻き込んで転倒するという状況が作り出された。

 低い位置に居れば、急所にも手が届く。

 二人共それぞれサクロプスの心臓目がけ攻撃している。

「さて、と。悪いが人間を食うような奴にはこの世からおひきとりしていただくよかわりに僕らが君らの肉をいただくよ」

 言うと同時に首を断ち切った。


 角と目玉、そして皮を剥がして剥ぎ取り終了。皮を剥がすのに時間がかかっていた。というより、幾ら手負いとはいえ、サイクロプスを倒してしまうトリアイナもトリアイナである。

 もうじき日が暮れるという所で山脈の方からアイアンウルフの群れが寄って来た。

「これは、いったん退くしかないようだね」

「そうね、流石に連戦続きであの量を相手にするのは骨が折れるわ」

「仕方ねーな。サイクロプスの肉はやつらにくれてやるか」

「位相の門よ開け、アイテムボックス」

 ルーリィはサイクロプスの方腕を切断し、アイテムボックスに放り込んでいた。

「よし、逃げよう!」

「「おー」」




「と言う事で原因はあの山脈にあるようです」

「・・・・・・ホントにエビルオーガを二体も倒しているしサイクロプスも三体倒してる」

「あのー、聞いてますか?」

「あ、はい。失礼しました。少々お待ち下さい。」

 そう告げて奥に引っ込むアイナ。

「お待たせしました。で、どうですか?」

 後半は奥から連れて来た上役に対してだ。

「うーんこれは、上げた方がいいと思うな」

「そうですよね、やっぱり」

「それじゃあ君たち、今日からランクBね」

 戸惑うトリアイナの三人。代表してルーリィが訊いてみた。

「あの、登録してからまだ二、三日ほどなんですが・・・・・・?」

「大丈夫です。ギルド長も公認ですから」

「「「え」」」

一旦フリーズする三人。やはり一番最初に再起動したのはルーリィだった。

「あの、護衛の類は受けたことが無いんですが。その辺のちぐはぐさはいいんでしょうか?」

「問題ありません。護衛となれば、複数の冒険者が集まりますから。手ほどきをを受ける事もあるでしょう」

 改めて居住まいを正して、一言。

「では皆さん、これがランクBの銀証です。お目出度うございます」

「「「はあ、ありがとうございます」」」


 ギルドを後にして三人とも釈然としない表情をしながら、今日の稼ぎを思う。

皮以外は全て売ってしまったのだが。生態調査の間引き分として金貨が3枚出た。かわりに初めの報酬である銀貨一枚は無しになった。増えているんだから文句は無い。そう思うルーリィ。それに素材を売った分を合わせると金貨5枚のお仕事となった。

 内訳はサイクロプスの眼球が一つ銀貨五十枚で金貨一枚と銀貨五十枚。角はサイクロプスの角は一つ銀貨十枚で三十枚これにエビルオーガの角が一対銀貨二十枚で合わせて銀貨五十枚で合計金貨二枚、依頼分と合わせて金貨五枚、という結果になった。

 そこに更に魔石が売れる。エビルオーガの魔石は其々それぞれ金貨二枚で擦れたし、サイクロプスの魔石も三こで計金貨三枚。

 本日の稼ぎは金貨十枚、である。ついでに受けた薬草採集では二十マール、十二万二十マールが今日の稼ぎだ。平均的なランクB冒険者の一日の稼ぎとしては上々な金額であった。


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