一話~盗賊に襲われ始まる旅路~
プロローグと同時に投稿しています。御注意を。
「それじゃあ行ってくるよ」
三人の代表で村の皆に告げる。
「おう、行って来い!」
村の皆の代表として、何故か長老じゃなくて父さんが答えた。
村の皆に見送られながら、出立したルーリィたち。徒歩三日の位置にあるバーソンの町へと向かい意気揚々と歩いていく。
一日目は特に何もなく、三交代制で見張りをしながら野営した。
二日目の夕方、そろそろ野営の準備をしておこうかという時に――盗賊が現れた。
「ひへへ、金目のモンは置いてきな」
「こっちは十人もいるんだぜぇ?」
「諦めてそっちの嬢ちゃんも置いてきなぁ!」
「おれらっ」
ヒュンッ
どさり、と一人が倒れた。喉元から矢が生えてる。
ヒュウン、ヒュンッ
ドサドサッ
シャルロットの射る矢であっさり数を減らした。
「あっという間に三人減ったみたいだね、で、どうする?」
盗賊たちは目の前で目を白黒させている。
それはそうだろう。何せ、一気に三人を倒したのが成人したばかりのシャルロットで。とてもではないが、華奢なその手に握られている弓から放たれた三本の矢によるものだとは思えなかったからだ。。
ルーリィたちも既に臨戦態勢に入っていた。
「皆殺しだぁ! 嬲り殺せっ」
その言葉に触発され全員が一気に襲い掛かって来た。
「鋭き風、駆け抜けて刃となれ、ウィンドカッター」
サイたちの所に来ようとしている男二人の身体が真っ二つになった。
その脇を駆け抜けるルーリィ。
「オーラスラッシュ」
ルーリィは、いきなり真っ二つになった仲間に呆然とした表情をうかべる二人を、横一閃、一気にぶったぎった。
「オーラスラスト」
更に突き技でもう一人、ヒュカッと音たてて首と胴を泣き別れにした。
残りは親玉とその部下一人の二人だけだ。
「ま、まて。待ってくれ! 命ばかりっ」
ルーリィは魔力を通した剣で、無造作に二人の首を刎ねた。盗賊は一度身をやつしたら最後、二度ともとの一般市民には戻れない。そういうものだった。
関係無いが、成人の儀の時にルーリィの受け取った剣は羽金という特殊な物質で鍛造された剣で、魔力を通すと羽毛の様に軽くなるという、紛れも無い魔剣の類だった。
そんな剣で首を刎ねたのだから、痛みなど感じずに死んでいた。それが最後の慈悲、と言えるかもしれなかった。
アンデッドになられても困るので、盗賊たちは一か所に集めて燃やした。
そんな場所で野営する気にはなれずに、もう少しだけ進んだ後遅めの野営となった。
「しっかし、よくもまあこんな辺境で盗賊になろうなんて思ったもんだな」
食事も終わり――と言っても干し肉とパンとワインという簡素なものだったが――一休み。という時に薪を火にくべ乍らぼやいたサイ。
「そうだよな。流通だって殆どない第三九号開拓村とバーソンの間に商人なんてまず通らないし、うま味は少ないと思うんだけどなぁ」
「もしかしたら第三八号開拓村や第四十号開拓村の人たちだったんじゃないかしら?」
シャルロットが呟くように言った。
「「ああ……」」
「あり得るかもしれいな。食うに困って、てか?」
「已むに已まれず、か。やるせないね」
サイとルーリィがぼやくように言う。
「真相は分からないけどね。もしかしたらって思って」
そうは言っても、核心をついているという予感はあるのか、表情に陰りが見える。
「ま、考えても仕方ないさ。今日はもう寝るよ」
「オーケー。今日はルーリィが真ん中、二番目だからな?」
「大丈夫、覚えているよ」
「それじゃあ私も寝るわねおやすみなさい」
「「おやすみ」」
翌日、昼過ぎにバーソンの町が見えて来た。
昼時とあってか門衛の数が三人と少ない。かと思えばぞろぞろと奥から次々に門衛が現れた。丁度昼食を終えてきた様子だった。
「ようこそバーソンの町へ。何か身分を証明するものはお持ちですか?」
門前で問われ、町に入る為の身分証明――開拓村出身の証の結晶石に彫刻が成されたものを見せる。すると苦笑いされた。
「この北門に来たからもしかしてと思ったけど、やっぱり第三十九号開拓村の人だったか」
結晶に刻まれているのは数字だ。ルーリィが持っている物には三十九と刻印されている。サイのもシャルロットのもそう刻印してある。
「ほぼ流通がありませんからね」
ルーリィも苦笑いで返す。
「それなのに、途中で十人組の盗賊と出会いましたからね、世の中解らないものです」
「なんだって!? そ、それでどうしたんだ? 怪我は無いのか?」
「落ち着いてください。撃退しましたから」
「撃退!? 君らがかい? どうやって? たった三人でかい?」
あれ、とルーリィは思った。信じてもらえてないな、と。
「普通に剣や魔法ですが? あっけなかったですよ。数を頼りに襲い掛かって来たので、始めは弓と、魔法で。その後は剣で」
「うーん…・・・一応、審査の石版に手を当てて貰えるかい?」
「ええ、分かりました」
門と併設の詰め所に行くと、そちらには既にサイとシャルロットが居た。審査の石版に手を当てている。
審査版で分かるのはレベルと違法行為を行ったかどうか。実にシンプルだ。
「兵長! もの凄いです! 男の方はLV17、女の方はLV19です」
それを聞いた兵長は驚きに顔を染めている。
「そう言えば君が彼らのリーダーなのかい?」
「ええ、そうなりますね」
「それじゃあ、審査版に手を置いてくれるかい」
「はい」
浮き上がった文字はLV20と書かれている。
「「「うおおぉぉぉぉお!?」」」
「二十だ、遂に二十レベルの大台が出てきやがった! まだ十五歳なのに!」
沸き立つ詰め所だったが。
「おまえたち、興奮するのは分かるが言葉使いには気お付けろ」
一喝というほど大きな声ではなかっただが、効果は覿面。
「し、失礼しました」
「それで、もういいのでしょうか?」
「ああ済まない。一人銅貨十枚払ってくれ。そうしたらもう行っててもらっても大丈夫だ。それにしても驚いた。三人とも成人したばかりのレベルとは思えない」
三人とも自分の財布の中から銅貨を取り出した。
「では、失礼しますね。あ、冒険者ギルドの場所教えてもらえますか?」
「この道の先にあるT字路を左に行って更にあるT字路を右だ。看板があるからすぐに分かるだろう」
「有難う御座います」
始めの突き当りを左、もう一回突き当りで今度は右へと進路を変える。すると、大きな看板が見える。
(あれがそうか。大きな看板だなぁ)
「私、緊張してきたかも」
「奇遇だな俺もだよ」
「立ち止まっていても仕方がない、二人共、行くよ。
躊躇っている時は、大体ルーリィが方針を決めて来た。そんな所が三人の中で一番リーダーシップを発揮していると見えるだろう。
「さあ、行こう」
「おう」
「うん」
ルーリィを先頭にギルドの中へ入っていく。ギルド一階には酒場が併設られている。父親のジャックや開拓村の皆の話によれば、ギルドの中は必ずと言っていい程に酒場を併設していると言っていた。もちろん例外も存在するが。
ルーリィ達三人がギルドの中に入ると香木のにおいがした。
中は小奇麗になっており、照明も煌びやかであった。
三人がギルド内を見物しながらカウンターに近付くと、受付をしているらしき女性に訊ねた。
「冒険者ギルドのギルド証を作りたいのですが」
「え!? は、はいわかりました」
一瞬固まった受付嬢はすぐさま再起動する。
何故一瞬止まったのかと言えば、三人の歴戦の勇士の様な貫録を受けて、きっと名のある冒険者だろうと思えたからであり、ルーリィ達が初心者だとは思えなかったからだ。
既定の書類の注意文を読み、納得すればサインを記入し、いよいよギルドカードを作る、となった段階から徐々におかしくなっていった。
「では、この石版に手を置いて下さい」
先ずは門にあった審査の石版の様なものにてをあてる。チクリとした痛みが指先に伝わる。
(例えばこの針が毒針だったら成すすべなく死ぬな)
などと考えていたルーリィだったが。そんな心配は全くの杞憂である。
「では皆さんに――え、え、嘘、何これ」
受付嬢は混乱したように右往左往している。何か問題でも起きたようだった。
「あの、まだ手、はずしちゃまずいですか?」
「まだです! いいって言うまで手を離さないで下さい!」
そう言って奥にひっこむ受付嬢。妙に慌てていた。
「こっちですこっち。早く早く」
「分かった分かった。そう慌てるでない」
奥からさっきの受付嬢と年配そうな男の会話が聞こえてくる。
「うそ!? まだ終わってない!!」
「どれどれ、おー、これは凄まじいのう」
そんなやり取りを訊きながら、ルーリィが訊ねた
「あのー、何が起こっているのか説明してほしいのですが」
「なんじゃ、説明しておらんかったのか」
呆れ気味に初老の男性がぼやく。
「す、すみません。一刻も早く来てもらわなければと思いまして」
仕方ないのう。と呟きながら説明してくれる。
「いま、その石版から、こっちの大きな石版に情報が伝達されておるのじゃが、何の情報かいうと、ギルドに登録する前に倒した魔物や獣、盗賊等じゃな。
お主等はレベルも高いし、この量も納得だわい。お、そろそろ終わりじゃのう」
さりげなく鑑定持ちをにおわせたギルド長が、大きい方の石版を見ながら言った。
「む? 最深の記録が盗賊になっておるな。しかも一人は賞金額が少ないが指名手配犯じゃな」
「え? これって倒した相手の名前までわかるんですか?」
「うむ、盗賊の場合は名前の前に盗賊であることを示すマークが出る」
何となく置いたままになっていた手をおろす三人。
「驚いたぞ、お主等全員が一五歳だったとは。成人した直後からホーンスネークを倒せるほどだというのもな。冒険者ギルドはお主等を歓迎するぞい」
言いながらギルド証を渡していくギルド長。
「有難う御座います。って、あれ?」
「え?」
「あれ?」
三人が驚いてギルド証を持ったままフリーズする。
「あの、コレ、ブロンズ証、何ですけど」
ルーリィは片言っぽくなりながら訊いた。
「うむ、あれだけの戦闘経験のある有望株を、最下層で燻らせておくのは勿体ないからのう。この調子でシルバーになってくれるのを期待しておるぞ」
そう締め括った男性は最後に自己紹介をしようとしていた。だが――
「ちょっとまちやがれ! なんで俺様がEランクスタートでそんなガキ共がCランクからなんだよ!!」
そこに妙な横やりが入った。
「ボントルか、この三人は全員がお主のレベルの倍以上のレベルをもっておるぞ。何よりお主は戦闘経験が少なすぎる。諦めて地道に頑張れ」
「なんだとこのじ、じいっ!?」
ボントルと呼ばれた男がいきなり両脇から抱えあげられる。酒場の方で飲んでいた冒険者たちだ。
「な、なんだお前らっ。関係無い奴は引っ込んでろ!」
そのままギルドの扉を開きぽいっと捨ててしまった。
「酒が不味くなる。今日の所は早々に消えな」
バタンと閉じられるドア。
「有難う御座います」
ルーリィが頭を下げると、「気にしないでくれ」と爽やかに言われた。
コホンと、咳払いした男性は、
「わしはこのギルドのギルド長で、ショージという今後も何かあれば気軽に相談してくれると嬉しいのう」
と、自己紹介をした。ルーリィ達も合わせる様に返す。
「ルーリィ・グルブです」
「サイ・コッツです」
「シャルロット・ベイカーです」
「うむ今後ともよろしくな」
「「「こちらこそ」」」
綺麗にハモッた
因みに受付嬢の名前はアイナというらしい。一応聞いておいた
「どうする? 昼前だから何か依頼を受けていくか?」
「そうだね、私も今日の宿の心配は無くなったけれども。懐には余裕が欲しいし」
「なら、手ごろな依頼が無いか探してみようか」
早速依頼を受けるつもりの三人はあーでもないこうでもないと言いあいながら和気藹々と依頼書を見比べるのであった。
◆
名前:ルーリィ・グルブ
種族:人間と精霊とのハーフ 性別:男性 年齢:15 LV20
称号:湖の麗人の子
特殊:水体化 雷属性無効化 無詠唱魔術行使
常時型スキル
身体能力強化LV5 保有魔力増加LV3
発動型スキル
魔力制御LV4 オーラスラッシュLV4 フライングオーラスラッシュLV2
オーラスラストLV3 雷迅閃LV1
魔法
ヒーリングライトLV4 アンチドートLV10 ライティングLV2 ティンダーLV3 ウォーターLV2 ファイアボールLV2 アイスブリットLV2 アイテムボックスLV4
◆
名前:サイ・コッツ
種族;人間 性別:男性 年齢:14 LV17
称号:無し
特殊:無し
常時型スキル
身体能力強化LV2 魔法威力向上LV4
発動型スキル
魔力制御LV4 魔力撃LV3 鑑定LV3
魔法
ライティングLV2 クレアボヤンスLV3 ソナーエコーLV2 ファイアアローLV3 フリーズアローLV3 ウィンドカッターLV2 ファイアボールLV2 アイスブリットLV3 アースウォールLV3
◆
名前:シャルロット・ベイカー
種族:人間 性別:女性 年齢:14 LV19
称号:美人姉妹の妹の方
特殊:回復魔法強化
常時型スキル
身体能力強化LV3 鷹の目LV2
発動型スキル
オーラスラッシュLV2 オーラスラストLV2 三連射LV3 アローレインLV2
魔法
ライティングLV1 ヒーリングライトLV3 アンチドートLV2 ウィスパーボイスLV3 ソナーエコーLV3 ファイアアローLV2 アイスブリットLV1