浜辺の唄
朝、何を考えてか出掛けた浜辺の思い出が、噴水のように溢れて懐かしく思う今。
流れる風も波も雲も音を立てて、相変わらず呑気に流される。
足元に転がっている貝をしゃがんで手に取り、それを耳にあててみるも音はせず、ただ痛いだけの白い何かだった。
貝を放り投げ、その場に立ち尽くして夕陽が沈むのを待ち、それまでの間は放心した自分がその場に溶け込んで佇み、ふと思い出だした愛しい人の事を夕陽が沈むとともに思う。
その中の立つ私は、愛しい人が患った大病が今では気にしなくてもいいと、もう居ない人を思うと同じで足を前に進め続けて後を追うのが合うはずだ。
連れたブルーシートが貝にぶつかって小さく跳ねると、愛しい人が楽しく後をすごせている事を願って水の冷たさを堪え、次に願いを向けるだけ。