そのさん ハンバーグランチ
町のおいしいお店というのに出会うかどうかは割とくじ引きである。貧乏くじを引くかどうかわからない。
今回は当たりくじを引いたあとの話である。
妹が帰省中というのもあって以前行ったおいしい店に、ということになり、ハンバーグランチのおいしいお店に行ったのである。今回が二度目ということになる。
この店の名物はハンバーグと選べるもう一品のランチ。選べるのは鶏のから揚げ、エビクリームコロッケ、エビフライ、ビーフメンチカツというラインナップである。今回はエビフライを選んだ。
特徴といえばこの店のサラダである。錐のように斜に切ったキュウリの皮が虎柄に剥いてある。この虎柄、縞一つで一口くらいになるようにできている。野菜の皮は時として嚙み切りにくい場合があるのだから、こういう工夫は面白い。何の変哲もない、ごくごく一般的な具材のサラダでも、このような工夫で味わいは変わってくるのだ。
今回はスープも選べた。ホットのミネストローネと冷製のかぼちゃスープである。季節の変わり目というのがあるのかもしれない。私はカボチャのスープを選んだ。こういう店のかぼちゃのスープはいつ飲んでも甘すぎない。何らかの既製品かはたまた、どの店も作り方を知っているのか。味わっていると、コンソメの味が強いことがわかる。家庭で再現するなら、濃いコンソメと丁寧に裏ごししたかぼちゃペースト、そして生クリームとバターといった具合だろうか。甘みはアクセント程度。コンソメのうまみでかぼちゃを引き立てるのであろう。
さて、メインディッシュ。ハンバーグとエビフライである。エビフライは有頭。豪華なものだ。
名古屋といえばエビフライ、というのは1980年代にタモリが「名古屋人はエビフライをエビフリャーと言う」といったことが始まりだという。その当時のタモリの名古屋批判ネタは名古屋五輪粉砕という言葉にまでなったものの、結果として本当に落選してしまい、その後タモリはエビフライと名古屋ネタを自粛したという。しかし、全国区になってしまった名古屋のエビフライ。知多半島のまるは食堂が大きなエビフライで好評を得ていたことや坂角総本舗のゆかりなどのエビ煎餅文化、エビ消費文化があったのか、エビフライはあっという間に名古屋の食文化に紛れていき、県魚がクルマエビ(よく捕れる上に消費も多く、名前が自動車産業に通じるという側面まである)になり、だんだんと既成事実化していったのである。
十分に大きいエビフライ。それにハンバーグ。考えてもみればお子様ランチに通ずる組み合わせである。
ハンバーグのソースはデミグラスソース。このデミグラスソースはフランスではその完成度ゆえに料理人たちが味の均一化を恐れたというすさまじいものである。うまみにコク、濃厚さ、家庭でいかに再現できるであろうか。下宿時代にハンバーグを作る際にデミグラス系ハンバーグソースのお手軽な再現に血道をあげていた時期がある。いつもどこか、しょっぱかったり酸っぱかったり苦すぎたりしたのである。ウスター、ケチャップ、醤油、コンソメ、バター、小麦粉、インスタントコーヒーと試せるものは試したものの、あの味には届かなかい。ハンバーグを食べるときはいつも思い出す。
デザートとジンジャーエールで食事を終える。
こうしてみると、味の分析をしながら食べている感じがする。個人的にはお気に入りの店を切り開いていきたいという意思はあるのだが、お金がない。就職はいつになるのだか。