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異世界借金返済記  作者: 入江九夜鳥
第二章 奴隷とオークの涙のオークション和え  ~大商人の腹黒仕立て~ 
19/20

19. 急募 奴隷職 若干名

大変お待たせいたしました。


リアルの諸事情で滞っておりましたが、

周1、2回ほどの頻度で更新再開いたします。




  †



「さて、どうしたものか」


 館に戻って来た俺たちは、ソファに向かい合って座りながら持ち帰って来た話を検討していた。いや、戻って来る道中でも話し合いはしていたのだが、結論は出なかったのだ。


 クラサの借金、10億エズ。

 その債権者である、大商会のトップであるリオール・ジャネイレーラによって提案された、奴隷を購入しないか、という誘いである。


 ――この世界において、奴隷という存在は珍しくは無い。


 下層階級というのに違いないが、俺が元居た世界で抱かれていたような虐げられる存在『だけ』ってことはないのだ。


 と、言うのもこのサイリーフェア王国においての奴隷とは、一種の雇用契約であり、その契約によって幾つかの違いがあるからだ。


 一つは、犯罪奴隷。

 文字通りの犯罪者が刑罰の一環として受けるものだ。鉱山労働や公共工事など重労働を担うことが多い。場合によっては戦争に駆り出される事もある。


 一つは、借金奴隷。

 犯罪奴隷が国や領主に隷属するのに対し、こちらは個人や事業主に対し隷属する。文字通り借金のカタに売られた、という奴だ。ただしキチンと法律で保護されていて、主が虐げたりすると逆に厳罰が下ることもある。

 ……なお、男女共に見目麗しいとなると娼館で働くことが多いっていうのは、まぁ、事実らしい。



 一つが、契約奴隷。

 借金奴隷が、借金返済という契約で縛られているのに対して、こちらはまた別の契約によって奴隷になった者を指す。簡単に言えば絶対服従の部下ってところか。

 勿論こちらも法律の庇護はあるし、主人側も契約を履行しなければならないって縛りがあるらしい。


「……契約奴隷ってのが、よくわからんのだが」


 と俺が問うと、クラサが実例の一つを説明してくれた。


「こんな話がある。ある有力な冒険者の元に、一人の村娘がやって来て、奴隷契約を結びたいと言う。理由を問えば、彼女の村は強力な魔物に襲われて全滅。その仇討ちを求め、報酬として自分の身柄を差し出したわけだ」

「なるほど」

「仇を討つまでの間、娘は冒険者の使用人だ。仕事のサポートもこなしたらしい。二年ほどかかったが仇討ちは相成ったそうだ。その後は二人で幸せに……とかまぁ、そんな感じだ」


 やっぱりこの世界においても、そういう物語って言うのがあって人気もあるらしい。

 俺のいた世界と違うのは、奴隷とか冒険者とか騎士とか、そういうファンタジー的職業が実際にそこらへんを闊歩しているところかな。

 俺もいまや冒険者だし。


 あと、闇奴隷ってのもあるそうな。

 こっちは他の三つと違って、本当に犯罪商品としての奴隷。

 奴隷の売買には公的な認可が必要なのだが、それを通していない場合は全てコレになる。当然、奴隷自身には人権なんて無い無残な扱いが待っているらしい。


「で、俺たちがリオールさんに持ちかけられたのが契約奴隷の購入、か」


 ジャネイレーラ商会は途轍もなくでかい。

 いわゆる総合商社というやつで、扱っている商品も多岐に渡っている。

 奴隷売買自体は小さな部門だが、ちゃんと認可を貰った奴隷商でもあるわけだ。


 だから、奴隷購入自体は別に違法というわけではない。

 問題は、どんな奴隷を購入するか、だった。


 ……実のところ、奴隷購入自体は、話を持ちかけられて殆ど即決だったのだ。

 というのも、俺とクラサの現状認識は次の段階に移っている。

 つまり、人員の増加だ。


 クラサがなぜ、ホムンクルスである俺を生み出したのか?

 それは単純に、人手の問題があったからだ。


 クラサの父親は独りでランクA冒険者になる程の実力者だが、やはり単純に人数が多いと、解決しやすい問題も出てくる。冒険に関わらない日常でも、単に使用人として日常の食事の準備でもしてくれるだけでも大違いだからだ。

 

 現在の俺はまだ低ランクだが、それでも居ないよりはマシだ。

 同じように、もう一人誰か雇うことで別の部分の負担を減らせば俺たちの仕事の効率はアップするだろう。


 ただし、別の冒険者たちとパーティを組むのは問題だった。

 予めそういう、複数パーティが同時に雇われる指定の依頼ならともかく、俺たちの取り分が減るのは可能な限り避けたいからだ。


 そういった金銭が絡む問題は拗れるからこそ、クラサの親父さんも滅多に臨時パーティを組むことすらしなかったらしい。


 ついでに言えば、冒険者たちがパーティを組むっていうのは、共通の目的が存在するからの場合が多い。伝説に語り継がれるアイテムを手に入れたいとか、名を上げて仕官したいとか。

 そう言った目的にズレがあると、分裂や対立の原因になる。


 そのため、俺とクラサも他の冒険者たちをパーティに加えるのは躊躇われた。

 なにせ俺たちの目的は、ズバリ『金』だからな。

 どうしてもクラサから離れられない俺はともかく、他の奴だと絶対トラブルになる。


 だが、金銭トラブルが起こる可能性が限りなく低い奴隷なら。

 使用人として雇うより安くつくし。


 一考の余地など無かった。即決だ。


 問題は、購入する奴隷に、どんな役割を与えるのか――だ。


「俺と同じく、仕事に連れ回す奴がいいと思うんだが。そろそろ俺もランク上がるらしいし、簡単な仕事だったら複数を分担できる」

「いや、早めに裏方役を用意するべきだろう。いずれ必要になる。なら何時用意するのか? ――今でしょ!」


 クラサの意見も間違ってはいないんだよなぁ。

 戦闘に連れ出すとするなら、前衛系か後衛系でまた話が違ってくるし。


 王都フェアーズウェル郊外の、朽ちた館へと帰りつくまで――いや、帰り付いてから食事の支度をしながら、そして飯を食べながら。

 気がつけば、朝になっていた。

 

 その間ずっと相談を続けて、出た結論。


 戦闘に出れるなら前衛系。

 ガチムチで筋骨隆々、龍人族の血を引く獣人。性格は戦闘ではバーサーカーさながらだが、日常では超のつく子ども好き。だけど顔が怖くって子どもたちが寄って来ない。寄って来ても親御さんたちに一発で誤解されていつも傷ついている。


 サポート役だったら、兎の獣人で、メイド服の似合う人。

 どこがとは言わないが、デカイとなおいい。耳の形はいわゆるロップイヤー型。過去のつらい経験から、孤独を何よりも嫌うため、嵐の夜など枕を抱えて一緒に寝て欲しい、と寄って来る美女。


 ――となった。


 …………アレだね。

 煮詰まり過ぎると思考が変になるっていう典型だと思うの。

 

 徹夜でハイになっていた俺たちは、翌日リオールさんに詰め寄りながら自分たちの希望の奴隷を興奮して説明し、


「……そんな奴隷がいると本気で思ってらっしゃるのですか、姫?」


 という、実に冷静極まる第三者の意見を頂いて、我に返ったのである。







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