『黒色』『犠牲』『業務用の大学』
一応昨日の続きというかアナザーストーリーを意識して書いてみました
ところで業務用の大学って何ですか?
「黒色」「犠牲」「業務用の大学」でジャンルは『指定なし』
* * *
いつの間にか当然のように私の隣にいて当たり前のようにキスしてくる。
私は彼の名前を未だに知らない。
いつ出会ったのかも覚えていない。ただ私にも彼にもお互いが必要だった。それだけの関係だ。
あれ、そもそも何で彼のことについて今考えているのだろう
ぼやけた視界が徐々に鮮明になっていく。
そうだ。目の前のこの人に告白されたんだ。
彼はどうやら誤解しているみたいだ。私に恋人なんてものはいない。だから振られるのを分かった上でこの人は告白してきたのだろう。
今までにこういう人は何人かいた。
しかし目の前の彼は今までのとは少し雰囲気が違う。自分の為に、気持ちの区切りを付けたいとかそういうのが微塵も感じられない。
「ごめんなさい。少し考えさせて下さい」
俯き気味に言う。
相手が動く気配が全く感じられず、思わず顔を上げる。
ーー悲しそうな顔をしていた
振られてもいないのに何故そんな顔をするのだろう。
「今日告白された」
いつものように迎えに来た彼の車から窓の外の景色を眺めながら言ってみた。
予想していたがやはり沈黙が続いた。
「私たちっていつ出会ったか覚えてる?」
「さあ?いつ?」
質問を質問で返された。むかつく。
「大学には行かなくていいの?」
少しでも仕返しになればいいと嫌味を言ってみる。
「あんな所行けるかよ」
「じゃあ何で入学したの」
「あー…うん、あれだよ、あれ。業務用の大学だ」
「何それ 初めて聞いた」
「生産性が無いんだよ。あの場所には。」
「わがまま」
「うっせ」
こんな人の為に私はたくさんのものを犠牲にしてきた。
周りの異性とは当然のように距離を置き、友達にはこのおかしな関係を悟られないように嘘をついて。
あんな馬鹿みたいに銀色に染めた髪の野郎のどこに惹かれたのだろう
この先の未来を犠牲にしない為には彼から離れなければならないのだろうか。
それはすごく寂しいことだ。
でも、寂しいだけだ。
彼と一緒にいてもーー生産性が無い
だから私は黒色の髪をした彼を受け入れようと思う