05.噂の3人
沙々羅濱家で小6三人衆が悪巧みをしている頃、瀰符中学校の教室では……。
「はあっ、んんっ、はあ……。ん、はぁ」
汰依雅が、酷く息切れしていた。
この“かぎかっこ”だけを見れば、アダルティなものにもとれてしまうが、全然そんなことはないので安心してもらいたい。
しかしホームルームまでには余裕がある。わざわざ急ぐまでもなかった、と少し後悔した。
「どうしたんだよ。汰依雅」
机に突っ伏していると、汰依雅の先輩で、仲の良い闇相良 亜陰が笑いながら声をかけた。
むくりと顔を上げ、説明を始める。
「いや……寝坊をしてしま」
「汰依雅おっはよー!!」
誰しもセリフを途中で遮られたら不愉快なものだ。
めんどいやつが来た、と小声で呟くものの、とうの本人にはきこえていない。
彼は、汰依雅と同学年で隣のクラスの、栗佐喜 桃也。
「へっへへ、情報通の俺がやってきたんだ。新たな情報を届けに来たんだぜ!」
そういえば彼は、自称「情報通」。
とは言っても、今までろくな情報を届けに来たことがない。
「へいへい、なんだ情報通さん」
「よくぞ聞いてくれた。現在進行型の新鮮なネタなのさ!」
「ためんなよ。少しでも気になった自分が恨めしくなる」
「まあまあ。この瀰符中学校の校門の辺りに、小学6年生くらいの女子が3人うろついているんだよ!」
小6、女子、三人……。
接点がありすぎる。
自分の、妹たち……?
「お、おい汰依雅?」
でも何故ここに来る? 理由は?
ない。
なにか、俺に用でもあるのか? なら放課後でもいい。
登校時間ではなきゃいけない理由。
何か、忘れ物でもした……?
「ちょ、汰依雅。何故急にカバンの中をまさぐり始めたのかな?」
いつもの持ち物、今見える中で欠けているもの。
青と白の布地……四角いアレがない。
「ほんで、それを見に行かないかってお誘いをしに来たわけなんだけれどもね」
「ああ、望むところだ。桃也!」
「今日はノリがいいんだな……」
俺らは教室を出た。