04.厄介な小6三人組
その後も汰依雅は、驚異的なスピードを崩さず、無言で家を出た。
妹が話しかけても、から返事ばかりするからイジリようがない。
まぁ、それほど焦っていたのだろう。寝坊なんて滅多にしない兄だから。
紅麗亜の朝練も終わり、美乃浬は水を出してやろうとソファを立った。
美緒浬と紅麗亜がニュース番組の12星座占いで盛り上がっていると、
「あああ!!」
キッチンの方から、美乃浬の驚いたような、甲高い声がリビングまで突き刺した。
「どうした美乃浬?!」
包丁を落としてけがをしたのか? ポットで沸かしたお湯で火傷したのか?
仮にも今いる中で一番年上の美緒浬は双子の妹のもとへと飛んでいく。
途中コケそうにもなった。次からは廊下を走らないようにしたい。
でも、妹が心配で心配で仕方がない。こんなに妹を思うなんて、ついに自分は兄に似たのか?
「美乃浬!」
「み、美緒浬。こ、これ……!」
冷蔵庫にもたれかかりながらも、美乃浬の指差すモノを見る。
「そ、それ……」
青と白のギンガムチェックで包まれたそれは。
「お兄ちゃんの、お弁当!」
「え……? なんで? なんで家に……?」
「ありゃ、お兄さん見事に忘れたんだねぇ」
そして紅麗亜も現場に到着。
なぜ、兄の弁当がこんなところにあるのか?
答えは、兄が忘れたから。
「これは……チャンスっ!」
ドMな、妹たちには、チャンスだ。
大好きな玩具の兄上が通う中学校に訪問できる機会なのだから……!