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世界を救った(元)勇者の放浪記  作者: 太陽と月
第一章:ファントム家での日々
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プロローグ

 はじめまして。初めての投稿で至らない点もありますが、どうかよろしくお願いします。

「あ……ぁあ……あああ」


 激しい雨が降り注ぐ中、俺は戦場のど真ん中で“仲間だった”者達の死体を抱きしめている。共に冒険をし、笑い合い、時には喧嘩をした、かけがえのない俺の大事な人達。ずっと一緒に居ような、って約束したのに……もう、動かない。手に感じる体温は、氷のように冷たい。


「なんでっ……なんでだよ……!」


 このどうしようもなく悲しい気持ちを、地面を殴りつけることで抑えようとする。しかし、殴っても殴っても収まりが聞かない。ただ単に自分を傷つけているだけで、逆に惨めになってくる。


「俺を残して、行かないでくれよ……頼むよ……」


 そんな事を言っても、もう彼女たちは戻っては来ない。分かっている。分かってはいるんだ。でも、そう言えば戻って来るんじゃないかって期待する自分がいるんだ。

 けど、彼女たちはもう戻っては来ない。何度も何度も声を掛け、揺さぶっているが反応がない。当たり前だ。もう、彼女たちは死んでいるのだから。


「死ん……だ、のか。はは……ははは……うぅ……ぁあああああああああ!!!」


 認めたくない事を試しに言ってみると、張り詰めた糸がぷつんと切れた。雨に混じって涙が止め処なく溢れ、俺は激しく慟哭した。もう、二度と彼女たちは戻ってこない。決して、会うことが出来ないのだと分かってしまったから。


 仲間の死は何よりも辛い。そう、誰かが言っていた。正にその通りだと思う。いっその事、死んで楽になりたい。許されるなら、いまここで舌を噛んで自殺したい。そして、仲間の元へ行きたい。

 けれど、それは決して許されない。なぜなら、俺はこの世界を救わなければならないから。二代目勇者として、この世に蔓延る怪物。“ファンネル”を倒さなければいけない。初代から託されたタスキを、手放すわけにはいかないんだ。


 だから俺は、仲間を置いて戦場を駆け巡る。ひたすらに無心になって、襲い掛かってくる怪物共を機械的に殺していく。中には命乞いをする奴らもいるが、関係ない。皆殺しだ。お前らが殺した仲間の仇、討たせてもらう!




*************



「……もう、疲れた」


 ファンネルとの大戦争に勝ち、俺は結界で守られていた仲間たちの亡骸を連れ、とある場所に移動していた。誰もここを知らず、寄り付かない。果ての大洞窟。正に、一人になれる最適な場所だ。戦争に勝ったら国に戻って来いと言われたが、知ったこっちゃない。俺はここで、仲間との甘い思い出に浸るのだ。夢という手段でな。


「アイン……ツヴァイ……リリー……クロノス……俺、頑張ったよな。生まれてからずっと勇者としての育成を施されて、十八年も辛い日々を過ごした。それでやっと、役目を果たしたんだ。もう、眠ってもいいよな」


 俺の傍らには、四人の仲間の亡骸が横たわっている。それぞれが多数の傷を浴び、酷く損傷している。出来ることなら元の状態に戻してやりたい。でも、いくら勇者といえど万能ではない。体の修復など出来る訳が無い。

 けど、服を着せてやることなら俺でも出来る。黒い服を常に着ていたアインには、ファンネルの革を使った黒のコートを。鎧が大好きだったツヴァイには、ミスリルを使った最高級のプレートアーマー。ひらひらとした服がお気に入りのリリーには、ピンク色のゴスロリを。そして、俺と同じ格好を真似ていたクロノスには、今羽織っている黒色のブルゾンを着せた。


「似合ってるよ、みんな。カッコいいし、かわいいよ」


 ああ……心なしか、みんな笑っている気がする。幻覚でもいいから、笑顔が見れてよかった。これで心置きなく、眠ることが出来るよ。


 最後に全員のまぶたを閉じさせると、俺も横になり、自身に“封印”の札を貼った。これで、一生目を覚ますことはないだろう。勇者は三百年と寿命が長いが、それまで眠ることが出来る。何も考えずに死ねるって、素晴らしい事じゃないか。


 封印の札が作動し、俺は強制的に眠りに落ちていった。

 プロローグなので短めでした。次から物語が進んでいきます。

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