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西銀河物語 第四巻 ミルファクの夢  作者: ルイ シノダ
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第四章 新たな遭遇 (1)

第四章 新たな遭遇


(1)

ADSM72星系のミルファク星系方面跳躍点が揺らいだ。いつもは、ほんの少し揺らぐような表情が強く歪むような感じだ。

最初に現れたのはホタル級哨戒艦だ。全長一五〇メートル、全幅三〇メートル全高三〇メートル、前部及び両舷側に直径三〇メートルのレーダーを持ち、半径七光時の全象限を索敵範囲に持つ、索敵レーダー艦である。

最初数隻が現れたと思うと瞬く間に全哨戒艦が現れた。哨戒艦は、全方向へ展開する。その強力なレーダー能力で小さな変化も見逃すまいと急いで哨戒宙域へ展開する。

次に現れたのは、ヘルメース級航宙駆逐艦だ。全長二五〇メートル、全幅五〇メートル、全高五〇メートル、上面前方が傾斜している。その細身の艦体に似合わずレールキャノンが上下に六門ずつ計一二門装備されており、その上面後部にパルスレーザ砲6門その後ろにアンチミサイル発射管一二門が装備されている。

更に両舷側に少しはみ出た筒状の近距離ミサイルランチャーが三門ずつ六門装備されている。まさにブレードと呼ぶに相応しい艦だ。

次々と現れる艦の中でも一際大きい艦が現れた。ミルファク星系軍航宙軍アガメムノン級改航宙戦艦だ。全長六〇〇メートル、全幅二〇〇メートル、全高一二〇メートル。側面からみると傾斜が大きく三階段状になっている。

上から見ると両脇前方に突き出た二〇メートルメガ粒子砲四門、胴体下後部に一六メートルメガ粒子砲三門、中間部が居住区と後部に連絡艇のハッチ、そして上部が艦橋(CIC)になっている。

両舷側上面に長距離ミサイル発射管一二門、近距離ミサイル発射管二四門、アンチミサイル発射管二四門、パルスレーザ砲一〇門を装備し、中間から後部にかけて大型核融合エンジン四基を持つ航宙戦艦である。

「半年ぶりですね。この星系に来るのは」

アッテンボロー主席参謀の言葉に頷きながらスコープビジョンに映る映像を注視していた。


旗艦アルテミッツは、高精度の光学センサーに加え、最大走査範囲一四光時と広範囲なレーダー走査能力を持っている。大型の星系一つを全て表示できる能力だ。

そのレーダー能力を最大限に引き出しているのが、3D型マルチスペクトル・スコープビジョン(通称スコープビジョン)だ。その奥行きのある映像を始めて見るものは、目を奪われる。ヘンダーソンも始め見た時は、驚いていた。

「レーダー管制、イレギュラーはないか」

「前方防御シールドは最大にしておけ」

「航路管制、進宙方向に障害物はないか」

「攻撃管制システムはオンにしておけ」

「慣性航法、異常はないか」

次々とハウゼー艦長が指示を管制フロアにいる各管制官に出している。

やがて、最後に特設艦を包むようにアルテミス級航宙母艦がその巨体を出現させた。

ハウゼー艦長が、ヘンダーソン総司令官の方を振向き敬礼しながら

「ヘンダーソン総司令官、全艦跳躍空間から出ました」

ヘンダーソンは、軽く頷くとコムを口元にして

「第一七艦隊全艦に告ぐ、こちら総司令官ヘンダーソン中将だ。これから我々は“未知の生命体”との接触を行うべくADSM72外縁部を時計回り方向に進宙する。途中、前回ここに来た時に設置した無人監視衛星の回収と新しい監視衛星の設置を行う。以上だ」

コムを口元から離すとハウゼー艦長の顔を見た。

ハウゼー艦長は、航宙軍式敬礼を行うと前に向き直り口元のコムに向って

「全艦左舷四五度、下方一〇度方向に進宙する。前方及び左右のレーダー走査能力を最大にしろ」

やがて、哨戒艦が前方に進むと共に艦隊の進宙方向上下左右に展開した。哨戒艦は全部及び側面に三〇メートルのレーダーを備え、最大レーダー走査半径七光時を持つ。

 そして哨戒艦の側面に航宙駆逐艦が付いた。十字に広がった哨戒艦が艦隊の先頭を頂点として今度は大きな円錐状になるように上下左右の哨戒艦と駆逐艦が後方に下がっていく。 

正確には、前方へ制御スラスタを噴射している間に艦隊全体が前に進んでいる状況だ。更にワイナー級軽巡航艦、アテナ級重巡航艦が所定の位置に着くべく動き始めた。ヘンダーソン総司令官の中将付武官として今回もオブザーバシートに座っているルイ・シノダ中尉は、その艦隊の運動に見入っていた。


「すごい、まるで一つ一つの艦が大きなマスゲームのような動きで所定の位置に着いていく」

スコープビジョンを夢中になって見ているシノダ中尉の姿にアッテンボロー主席参謀が

「シノダ中尉見事だろう。ヘンダーソン中将指揮下の第一七艦隊の日々の訓練の成果だ。ミルファク星系航宙軍二〇艦隊の中でもトップクラスの艦隊運動だ」

シノダ中尉の驚きを横目にそう言うアッテンボローも3Dで映る見事な動きに感心していた。

 やがて中央にアガメムノン級改航宙戦艦、アルテミス級航宙母艦、タイタン級高速補給艦、特設艦、最後にポセイドン級航宙巡航戦艦が配置されると第一七艦隊は〇.五高速の巡航速度で進宙し始めた。

ADSM72星系は、五つの惑星を持つ星系だ。ADSM72恒星の周りに惑星と呼ぶには小さい岩礁・・と言っても直径七〇〇〇キロはある大きさの岩礁が2つほどあり、その遠く一二.五光分のところに人類が生存可能な第一惑星がある。現在、入植中だ。そして恒星から二〇光分に第二惑星、三四光分に第三惑星があり両惑星共に資源衛星として注目されている。更に表面ガス惑星の第四惑星が一光時に、まだ固まりきらない巨大なガス惑星の第六惑星が二.八光時にある。

ミルファク星系方面跳躍点から星系外縁部を時計回りに八光時のところにX2JP(X2方面跳躍点)、更に三光時先にX3JP、そして前回調査したADSM98星系方面跳躍点が4光時先にある。ミルファク星系方面跳躍点に戻るには更に一〇光時進宙しないと今の場所に戻れない。全工程二五光時の長い行程だ。

 ADSM72恒星を右舷に見ながら星系外縁部の岩礁帯の更に外側を〇.五高速で進宙する。

「第一惑星は現在入植中と聞いていますが、“未知の生命体”の話が漏れた途端、急に人々の流入が止まったそうですね」

「第二惑星、第三惑星は、豊富な資源があると聞いている。資源が見つかった時は、色々な企業が、我先にと“マイグレーション・アグリーメント(入植許可書)”を申請したらしいが、今は見る影もない。第一惑星と第二惑星との間に行き来している輸送艦も数える程だ」

スコープビジョンに映る第一惑星と第二惑星以降、カイパーベルト挟んで見ているヘンダーソンとアッテンボローが言葉を交わしている。

X2JPまで後六光時(二.五日)の行程だ。惑星周回軌道を上から下に進まなければならない為、あえて星系内に入らず外縁部の外側を進宙しながら惑星周回軌道の下側に遷移しようとしている。

 ミルファク星系方面跳躍点は、ADSM72星系の惑星周回軌道の上部にあるが、X2JPは、惑星周回軌道の下側にあるのでしかたがない。

「レーダーには何も補足されていないようだ。映るのは岩ばかりだ」

レーダー管制官が独り言を言いながら第一七艦隊がカイパーベルトの外を上から下へ抜けようとした矢先、岩礁の影で岩にしがみつくような姿で艦隊を見ている物体がいた。

 全長一〇〇メートル程の長方形に近い形状の本体から両脇に足が二本ずつ出ているような形をしている。人にとっては巨大な虫が岩についているような光景に映る。その物体の先端、いや後端と言うべきところから薄明るい光が発せられている。

 カイパーベルトを過ぎたところで第一七艦隊は惑星周回軌道を下に潜る様な方向でX2JPに向きを変えた。


「レーダー管制官、周辺宙域異常ないか」

「有りません」

「航路管制官、進宙方向に障害物はないか」

「ありません」

管制フロアでは、定時確認の声が聞こえている。

「静かですね」

「ああ、何も無い。少し静か過ぎる。先の事があるから、もう少し何かあると思っていたが」

アッテンボロー主席参謀とヘンダーソン総司令官の会話を耳にしながらハウゼー艦長は、“長年の感”というものから違和感があった。

“何か見落としている。感知できないものがある”そう感じながら後一光時に迫ったスコープビジョンに映るX2JPを見つめていた。


「マコト、なあ、さっきから気になるんだが」

「カルメ、何だ、いつもの感ってやつか」

「いや、レーダーには映らないんだが、さっきからほんの少しノイズが入っている気がする」

第一七艦隊の右舷後方に位置して哨戒を続ける第六哨戒分隊哨戒艦カリュケの乗組員がわずかな反応に気がついた。

「マコト、やはり連絡したほうが良いんじゃないか」

「むーっ、そうだな。お前の感は案外当たるからな」

上級曹長レーダー監視員マコトと二曹レーダー監視員カルメは、階級は違うが幼い頃からの知合いで二人だけの時は、名前だけで呼んでいる。

「ヘンダーソン総司令官、右舷後方にいる第六哨戒分隊の哨戒艦カリュケからレーダーにわずかなノイズが入っていると連絡が入りました」

「ノイズ」

「はい、ある周期的な信号の様ですが、断片的で何か良く分からないそうです」

「艦隊の分析官には回しているのか」

「はっ、既に送って解析中です」

「分かった」

“やはり居たか”ハウゼーは、ヘンダーソン総司令官とアッテンボロー主席参謀との会話で自分の“長年の感”と言うやつが当たっているのを感じた。


 X2JPまで後〇.五光時の位置に来ると第一七艦隊は、進宙の足を緩めた。アルテミス級航宙母艦ラインから有人機一機につき二機の無人戦闘機アトラスが発艦し始めた。三機一組で一六組四八機の新しく編成された特殊戦闘偵察隊レイリアだ。

「特殊戦闘偵察隊レイリアが発艦しました」

ヘンダーソンはハウゼー艦長の報告に黙って頷くとスコープビジョンを見た。前方にいる二隻の哨戒艦と八隻の航宙駆逐艦が進宙し始めた。

「レイリア全機に告ぐ。こちら隊長のカワイ大佐だ。全機、予定通り無人監視衛星の全象限に展開。後から来る哨戒艦と駆逐艦が監視衛星の回収、新しい監視衛星の設置が終わるまで周辺宙域を警戒しろ。イレギュラーが生じた場合、個々の対応はせず、必ずラインへ連絡しろ。お互い連絡を密にして監視に専念してくれ。くれぐれも勇敢な行動には出るな。以上だ」

コムを口元から外したカワイは“今、無人機と一緒に飛んでいるパイロットは、ミルファク星系航宙軍の中でも一流といわれる連中だ。しっかり締めないと直ぐに英雄になりたがるやつが多い”そう思いながら前を見つめた。

 先の件があって以来、レイサ、ジュン、サリーは、航宙母艦ラインを発艦する前にシンクロモードにしている。何回もの訓練のおかげで三機がまるで一機のような動きになっている。

監視衛星まで二〇〇万キロと近づくとカワイは、

「レイリア、散開」

と口元にあるコムに向って言うと直ぐに頭の中で

「ジュン、サリー付いて来い」

と指示を出した。

 カワイの担当宙域は監視衛星を中心として今の場所から反対側四五度の宙域だ。意識を上方向一五度に向けるとヘッドアップディスプレイに映る姿勢制御スラスタが天頂方向に向って一五度へ移動し始める。旧型戦闘機スパルタカスに比べ、推進力も三〇パーセントアップしている。

スペシャルスペーススーツが体液の移動をホールドする為、体が“キュッ”と締まる感覚を覚えながら前方を見た。航路管制システムと航法管制システムが目の前のデブリを避けながら上下左右にアトラスを誘導しながらものすごいスピードで飛んでいく。

ジュンは右舷後方三〇〇メートルの位置にサリーは左舷後方三〇〇メートルの位置にいる。宇宙空間では、目鼻先より近い位置だ。その位置をまったく変えないでレイサと同じ動きをしている。

 やがて、監視衛星も後方に過ぎると速度を落とした。

「ジュン、サリー何か感応しないか」

「ジュン、ありません」

「サリー、ありません」

自分のレーダーにも何も感応しない。少し落とした速度で所定の宙域に着くとレイリアの他のアトラス全機が、所定の位置に着いた連絡がカワイに入った。

“さて、監視衛星の交換まで何も無ければよいが”と思いながら担当宙域を時計回りに航宙しながら監視していると

「ユーイチ、こちらジュン。右舷前方五〇万キロの位置に感応波有り」

「分かった、ジュン。直ぐにラインに連絡する」

カワイはジュンからの報告をラインに転送した。

「総司令官、ラインから発艦したレイリア隊のカワイ大佐より報告が入りました。X2JP監視衛星より右舷前方二五〇万キロの位置にあるデブリ(岩礁)より信号が発信されているとの報告です。先の信号パターンと一致しています」

「よし、直ぐに哨戒艦と駆逐艦を向わせろ。監視衛星の作業はそのまま継続する」

「はっ」

ヘンダーソンの指示にアッテンボローは直ぐに前を向き直してスクリーンパネルにタッチした。


「ユーイチ、感応波が動き始めた」

「なんだって」

感応波を出しているデブリをレーダーから見失わない様に周辺宙域を警戒しているレイサ、ジュン、サリーの三機は、今まで同じ位置に居た物体が動き出したのを知った。

カワイはレーダー走査を最大にしながら物体が隠れている岩礁へ少しずつ進んだ。確かに岩礁と感応波を出している物体が少しずつ離れていく。まだ、哨戒艦も駆逐艦もこない。


“あれはっ”光学レーダーがはっきりと感応波を出している物体を映し出した。オールズビューモニターの前方に映る物体は、全長一〇〇メートル程の長方形に近い形をして先頭と後部が円錐状になっている。

長方形の両脇からはそれぞれ二本の足みたいなものが出ている。その物体が、胴体を縦にして両脇から出ている足みたいなものを両方へ大きく張り出すとカワイ達の方へ前進してきた。

“何だ”と思ってカワイは見ていると、後残り五万キロという所で四本の足の先頭が光った。そして突然スモークのような縦横一〇〇メートルほどのシールドを打ち出した。

「ユーイチ、回避して」

突然のジュンからの声に自分が反応するより早くレイサはジュンの位置する右後方へものすごい旋回速度で遷移した。

“くっ”急な動きに慣れているカワイでも体にストレスの来る動きだった。

直後、スモークのシールドは、カワイの位置していた場所を通り過ぎ、少し進んだところで岩礁にぶつかったと思った瞬間、岩礁が消えた。同時にスモークのシールドも段々薄くなり消えていった。

カワイは、背中から汗がにじみ出るのを感じた。

“何だ、あれは”消えた岩礁の辺りを見ているとサリーが

「ユーイチ、感応波を出している物体が」

そこまで頭に入ってきた言葉の途中で直ぐに振向くと足のようなものが四本とも長方形の胴体の中に仕舞い込まれた。そして後方の円錐が胴体の中に少し入るとその回りから青白い光のようなものを出した。と思った瞬間、X2JPの方向へ一瞬にして消え去った。


「何だ、今のは。サリー映像取ったか」

「もちろんだよ。ユーイチ」

「よし、直ぐにラインに送ってくれ」

「了解、ユーイチ」

カワイは、元の監視宙域まで戻るとしばらくして哨戒艦と航宙駆逐艦が到着した。カワイは直ぐに先程まで感応波を出していた物体が居た岩礁の座標を航宙駆逐艦に送ると哨戒艦と駆逐艦は、カワイたちが攻撃を受けた方向へ進んで行った。

「アッテンボロー主席参謀、この映像をカテゴリAで直ぐに特設艦に居る技術者へ送ってくれ」

「はっ」

ヘンダーソンの指示にアッテンボローはスクリーンパネルの映像にカテゴリAをタッチして、映像を送信した。

「我星系のものとは違いますね。しかし何でしょうか。あのスモークのシールドのようなものは」

「分からん。しかし今回伴っている特設艦の技術者たちが、明らかにしてくれるだろう」

そう言って、まだ回収と設置が終わっていない宙域が映し出されているスコープビジョンを見た。


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