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西銀河物語 第四巻 ミルファクの夢  作者: ルイ シノダ
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第三章 リシテア (3)

第三章 リシテア


(3)

 ミルファク星系航宙軍第一九艦隊が自星系方面跳躍点まで後二光時と迫り、リシテア星系外縁部まで到達していた時、その反対側の外縁部では、既に開発済みのRDSM12・・リシテア星系の開拓済み星系番号・・方面跳躍点が揺らいでいた。

 最初は、小さな点しか見えなかった光が、段々数を増していく。最後の光点が出現した時には、数え切れないほどの数になっていた。

「こちら、RDSM12方面跳躍点監視衛星ダブルエックス三二。跳躍点から未確認物体が多数現れました。"アンノーン“と思われます」

「監視衛星ダブルエックス三二、艦数と艦型は分かるか」

「まだ遠くて分かりません」

「ダブルエックス三二、レーダーをパッシブモードにして監視を続けろ」

 監視衛星ダブルエックス三二は、RDSM12方面からの対“アンノーン”監視用に設置された有人監視衛星だ。

レーダーをアクティブからパッシブに変えるのは、敵から自分の位置を知られないようにするためであり、衛星そのものは、岩礁をくりぬいている為、姿勢制御ブースターを除けば、外側からでは宇宙に漂っている岩と見分けが付かない。

 そしてこのダブルエックス三二を中心にRDSM12方面に扇形に半径五〇〇万キロ毎に無人監視衛星を浮かべている。

もちろんこれも岩をくりぬいて作られたものだ。その無人監視衛星の一つがダブルエックス三二に“アンノーン”の襲来を知らせて来たのだ。

「また、来やがった。今年はこれで二回目だ。珍しいな半年に二度も来るとは」

「ええ、最近動きが活発化しています。これもミルファクの連中がやつらを刺激したからでしょうか」

「分からん。同じ種族かどうかも分からないが、それがきっかけかも知れない」

有人監視衛星の中で縦横二メートルの大きさで四象限分四枚並んでいるスクリーンの一つに映る光点の群れを監視員の二人が話している頃、リシテア星系首都星テーベでこの報告を聞いたテレンバーグ代表とカレラ評議委員、ドイッツエル大将の三人が頭を抱えていた。


「代表、直ぐに迎撃の艦隊を出撃させます。ステルス機雷は所定の位置にあります。やつらがあれを越えて星系内に入る事はないでしょう。いつもの偵察行動かも知れません」

ドイッツエル大将の意見に

「分かりました。すぐに対応してくれ」

「はっ」

と言うとドイッツエルは星系評議会代表執務室を出た。

「しかし、航宙軍の失態で首都星を守る軍事衛星四つを失いました。“アンノーン”が星系内に入る事はないと思いますが不安です。直ぐに新しい軍事衛星の建造に取り掛かりましょう。今度はもっと強力なやつを」

「今は無理だ。ビルワーク星系とアルファット星系からの資源供給を止められた今、新たな軍事衛星の建造は無理だ。三ヵ月後のミルファク星系訪問を片付けて両星系からの供給を再開してもらう事が優先課題だ」

カレラの言葉をさえぎるように自分の考えを言ったテレンバーグは、これから展開しなければいけないことを考えていた。


 その頃、有人監視衛星ダブルエックス三二では、いつもと違う“アンノーン”の行動に注目していた。まだ航宙軍は来ていない。

「おかしいな。“アンノーン”の艦隊はいつも跳躍点を出ると真直ぐにステルス機雷の方向に向っていくが、今回は跳躍点を出てから一光時の位置で止まっている。どういうことだ」

監視員が疑問の目をレーダースクリーンに投げかけていると突然(といっても一時間前の映像だが)艦隊がリシテア星系惑星軌道の上方向に向って動き出した。

「やつら何をするつもりだ」

監視員がレーダースクリーンに注目していると上方向に三〇万キロほど上昇した後、前進を始めた。

「まずい。あれではステルス機雷を完全に迂回してしまう。直ぐに報告だ」

「しかし今、通信を開始すれば“アンノーン”にこの位置を探知されてしまうかもしれません」

「構わん。ステルス機雷を越えられたら一挙に星系内への進入を許してしまう」

 “アンノーン”の艦隊は、航宙重巡航艦級の大きさを持つ戦闘艦が中心部にいて進行方向に円筒状の隊形を取っていた。その周りを航宙駆逐艦級の戦闘艦が重巡航艦の円筒を包み込むようにやはり進行方向に縦長の円筒形を取っている。そして先頭、中央、後方に円筒から羽が生えたように両横方向に小型の戦闘艦がついている。

監視衛星ダブルエックス三二が首都星方向の中継監視衛星に連絡を取り始めた頃、“アンノーン”の艦隊中央に位置する羽の部分にいる小型戦闘艦一〇隻がダブルエックス三二へ向って動き始めた。


五時間後、本艦隊から離れた一〇隻の戦闘艦がダブルエックス三二のレーダースクリーンに現れた時、監視員は目を見張った。

「何だ、あれは」

一〇隻の戦闘艦が上下左右に展開し大きな直方体の各支点と支点を結ぶ中央に艦を置く配置になった。そのまま進んでくる。

「なんだ、やつらどうするつもりだ」

相手の意図が見えないまま見ていると各戦闘艦がダブルエックス三二を包む配置になった。

突然戦闘艦が光ったと思った瞬間、各支点にいる艦と艦の内側がスモークのようになった。それがダブルエックス三二を覆い始めると有人監視衛星となっている岩が、周りから消え始めた。

「なんだっ。うわーっ」

と言うが早いか目の前のスクリーンが消え、外宇宙が見えたと思った瞬間・・実際には見えなかっただろうが・・有人監視衛星の岩が完全に消えた。監視員は痛みを感じることもなかった。ダブルエックス三二と共に回りに浮遊していたデブリや岩が、まったく無くなり、一部の空間をエアインテークしたような状態になった。

「ダブルエックス三二。完全に消えました」

中継監視衛星のレーダー監視員が叫ぶような声で伝えると

「本当か」

「これを見てください。レーダーから完全に消滅しています」

「何があったんだ」

一瞬、間をおいて

「通信員、既にこちらに向っている艦隊及び首都星に対して今の状態を報告しろ。正確にだ」

「はっ」

中継監視衛星の司令官が命令を飛ばす中、レーダー監視員が、

「司令、無人監視衛星も消えました。RDSM12方面跳躍点周辺宙域の監視衛星が次々と消滅して行きます」

通常では、デブリか浮遊している岩礁にしか見えない無人監視衛星だ。それもパッシブモードで周辺から発進される信号や電波のみを拾っているだけだ。常識では考えられないことが起こっている。

「通信員、モードレベルAで首都星とこちらに向っている艦隊へ連絡。RDSM12方面跳躍点周辺宙域の監視衛星が全て消滅。監視モードを緊急レベルに引き上げることを要請する。直ぐに送れ」

「はっ」

と言って復唱した通信員は、自分の前にある通信パネルにタッチすると直ぐに送った。

「まずいな。ステルス機雷網を突破されてもこれでは感知できない。もしそうなれば星系への進入を許してしまう。迎撃艦隊が間に合ってくれれば良いが」

 その頃、既に"アンノーン“は円筒状の片側三枚の羽を両方に広げたような隊形でステルス機雷が敷設されている宙域を超えていた。


「司令官。“アンノーン”の艦隊をレーダーが補足しました。真直ぐに星系外縁部に向ってきます」

「“アンノーン”との距離は」

「はっ、〇.五光時です」

「約五時間で接触か。しかし・・」

主席参謀の報告に艦隊司令は

「今日はいつもと違う。跳躍点から出た後、ステルス機雷の反応範囲前で止まり数日留まった後、戻っていく。今回の様に監視衛星を攻撃するなどなかった。どうやって見つけて攻撃したのか。相手の攻撃方法が分からなければ・・我々と同じ武器か。ならば連絡できる時間が有ったはずだ。ミサイルの一本や二本で破壊されるほど“やわ”ではない」

答えも見えないまま時間が過ぎていった。

「艦隊司令、"アンノーン“との接触まで後一時間です」

今度は艦長からの報告に艦隊司令はコムを口元にすると

「第二防衛艦隊全艦に告ぐ。こちら艦隊司令のステファン・アレンバーク中将だ。“アンノーン”の艦隊との接触まで後一時間だ。一〇分後一七〇〇に第一級戦闘隊形をとる。やつらとの戦闘は初めてだが、我々はリシテア星系航宙軍だ。負けはしない。諸君の検討を祈る。以上だ」


コムを口元から外すと艦長に目で合図した。

「全攻撃管制システムオン」

「レーダー管制最大走査モード」

「前方防御シールド最大強度」

艦長から矢継ぎ早に命令が出される。やがて一〇分後、第一級戦闘隊形を取った第二防衛艦体の旗艦パシテのスコープビジョンに明瞭に"アンノーン“の艦隊が映し出された。

「あれが、“アンノーン”の戦闘艦か。大きくとも重巡航艦クラスだ。ほとんどが駆逐艦クラスではないか。しかしなんだあの隊形は」

始めて見る“アンノーン”の艦隊に呆れていると

「艦隊司令、攻撃管制システムが“個艦攻撃の力が著しく低”と報告して来ています」

「著しく低いとはどういうことだ」

あいまいな表現をとる攻撃管制官にもっと解り易く言うようにただすと

「そのう、粒子砲やミサイル発射管がないんです」

「何だそれは、攻撃システムが見落としているのではないか」

「いえ、何度もスイープしています。見落としはありません」

それを聞いた艦隊司令は、少し考えるとコムを口元にして

「第一分艦隊、第二分艦隊。“アンノーン”に対してミサイルを発射しろ」

第二防衛艦隊の両脇に布陣している二つの分艦隊の攻撃管制システムがいっせいにミサイルを発射した。四〇〇本のミサイルが横一列になって進んでいく。

リシテア星系第二防衛艦隊・・戦艦二四隻、巡航戦艦二四隻、重巡航艦三二隻、軽巡航艦三二隻、駆逐艦六四隻、哨戒艦六四隻からなる艦隊である。

リシテア星系は周辺星系の中では後発で開発された星系で、技術、経済力、開拓資源星系共にミルファク星系などから比べれば大きく劣っている。それだけにリシテア首脳陣は、西銀河連邦への参加をする事によってその溝を埋めようとしていた。


ミサイルが“アンノーン”の艦隊まで後五万キロまで迫った時、円筒状の隊形が三つに別れた。それぞれに小型戦闘艦が構成する羽が付いている。その各艦隊が正三角形の頂点の位置に来ると羽の部分が前進した。

「連中何をしているんだ」

“アンノーン”の艦隊の理解できない動きを見ていると突然羽が光を発しながら前方に進み始めた。羽と羽との間には、見た目にもはっきり分かるグレーな輝きを持っているカーテンのようなものが張られた。

 ミサイルがそのグレーの中に吸い込まれるように突き刺さると爆発も無く、音さえも無く消えた。

「なにーっ」

信じられない映像が目の前にあった。体がシートの前にせり出すようにスクリーンビジョンを見ながら

「今のは何だ。ミサイルが消えた」

主席参謀の声に艦隊司令はコムを口元にすると

「全艦主砲発射用意。戦艦、巡航戦艦は円筒状の中心部にいる艦を、重巡航艦、軽巡航艦、駆逐艦は前進してくる艦を狙え」

「全艦主砲斉射」


荷電粒子砲は戦艦一隻に四門、巡航戦艦に一隻に四門、重巡航艦一隻に四門、軽巡航艦、駆逐艦にそれぞれ二門装備されている。その荷電粒子砲が一斉に発射された。

 荷電粒子がグレーのカーテンに届くと、始めに当たった荷電粒子は消滅したが、その後に同じところに届いた二本目以降の荷電粒子の束は、円筒状を形成している艦に突き刺さった。荷電粒子が”アンノーン“の戦闘艦に到達すると、防御シールドがまるでなかったかのように荷電粒子は戦闘艦の中央を抉り取り最後尾へ突き抜けた。

やがて、重巡航艦、軽巡航艦、駆逐艦が羽の部分を形成している戦闘艦を破壊し始めるとグレーのカーテンも消え始めた。

「なんなんだ。やつらの艦には防御シールドがないのか」

一方的に”アンノーン“の艦隊を攻撃する第二防衛艦隊は、始め圧倒的な数の敵を前にあった不安が徐々に消えていった。

やがて、半数にまで減らされた"アンノーン”の艦隊は、急遽方向転換すると信じられない速度で跳躍点方面に逃げて言った。

「アレンバーク艦隊司令。完勝です」

主席参謀の声に笑顔を見せたアレンバークは

「主席参謀、駆逐艦を出して“アンノーン”の艦で完全に破壊されていない艦を捜索して“アンノーン”の正体を掴め」

「はっ」

と言って前を向き直すとスクリーンパネルにタッチして指示を出した。

やがて航宙駆逐艦の半数三二隻が前進して“アンノーン”の艦の前まで来た時、半壊状態にあった全ての艦が、突然爆発した。

“アンノーン”の艦の爆発は異常であった。戦艦レベルの核融合エンジンが爆発でもしない限り起こりえない大きさであった。爆発のエネルギーは、激烈な衝撃波として一瞬にして三二隻に航宙駆逐艦を包み込んだ。

スクリーンビジョンに映る、航宙駆逐艦が衝撃波で破壊されていく信じられない光景にシートから体を完全に前のめりにしたアレンバークは、

「ばかな」

と言うとシートに沈みこんだ。

やがて、爆発のエネルギーが静まるとそこには、ぼろぼろに打ち砕かれた航宙駆逐艦の姿があった。

「艦隊司令」

主席参謀の声にアレンバークは、力なくコムを口元にすると

「哨戒艦全艦、最大の警戒で破壊された駆逐艦の乗員を救え」

それだけ言うとアレンバークは、再度体を深くシートに沈めた。


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