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西銀河物語 第四巻 ミルファクの夢  作者: ルイ シノダ
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第四章 新たな遭遇 (3)

第四章 新たな遭遇


(3)

「こちらレイサ、ADSM98方面監視衛星が見つかりません。既に設置した宙域に到達しています」

「宙域の状況はどうだ」

「以前着たときより、少しデブリが多い気がします」

「了解した。もう少し捜索と警戒監視を続行してくれ」

「了解」

一度声を止めると

「ジャック、キリシマ、ウォッカ、どうだ。監視衛星は見つかった」

「こちらジャック、見つかりません」

「こちらキリシマ、見つかりません。もう少し広範囲に捜索します」

「こちらウォッカ、こちらも同じです。引き続き捜索します」

「全機聞け、こちらはカワイ大佐だ。ADSM98方面監視衛星が見つかるか、その破片が見つかるまで捜索を継続しろ。以上だ」

第一七艦隊は、ADSM98方面跳躍点まで後五〇〇〇万キロまで迫った時、ADSM98監視衛星がレーダーにまったく捉えられないので、特殊戦闘偵察隊レイリアを発進させた。

最初は、姿勢制御スラスタが何らかの原因で故障した場合を考え、監視衛星が宙域のデブリと同じ方向へ流れていったと考えた。そこでレイリア隊をその方面を捜索させたが、捜索を開始してから二時間経っても破片も見つからない状況になっていた。

「どういうことなんだ。流されただけなら、当にアトラスのレーダーに引っ掛っている筈だ。万が一デブリと衝突しても残骸くらいは残っているだろう」

独り言のようにつぶやくアッテンボロー主席参謀にヘンダーソンは、

「主席参謀、レイリア隊を一度帰還させろ。補給を行った後、ADSM98方面跳躍点付近五〇〇〇万キロの宙域にあるデブリの回りを調査させてくれ。但し、気をつけてくれ。 前回のこともある。レイリア隊が補給している間に、A2G、A3Gの哨戒艦と航宙駆逐艦を同地域に進宙させてくれ。補給後に発進させたレイリア隊がちょうど追いつくだろう」

一呼吸置くと

「未確認の物体があった場合、直ぐに報告を行い、その後捕獲させろ。極力戦闘は控えるように。但し攻撃された場合、この限りでない。以上だ。直ぐに連絡してくれ」

アッテンボロー主席参謀は、総司令官の方を向きながら敬礼をして

「はっ」

と答えると命令を復唱した。復唱内容は、直ぐにメッセージ化されA2G、A3Gの各哨戒艦と駆逐艦に伝達された。


A2G一七八隻の内、哨戒艦四八隻、航宙駆逐艦四八隻が第一分艦隊として、A3Gの同数が第二分艦隊としてADSM98星系跳躍点方面のデブリに潜んでいるかもしれない物体の捜索に当った。

単純に捜索と言っても、跳躍点の近くは、物理エネルギーの正と負が入り混じった宙域である。そこに浮遊する岩礁は、数百万を下らない。その岩礁のうち跳躍点のエネルギーが強い二〇〇〇万キロより外側かつ三〇〇〇万キロ未満の宙域を捜索するのだ。

それだけでも、数十万個ある。第一分艦隊と第二分艦隊は、これを四つの宙域、ちょうどドーナッツを四等分にしたような形に分けて捜索した。更に捜索対象も双方向に干渉しない岩礁を集中的に捜索した。これは、干渉しあう岩礁の宙域は物体が潜むに不適切考えられるからだ。


 捜索を開始して二時間、

「隊長、レーダーに反応あり、一一時の方向二万キロの岩礁帯に岩礁とは別の物質が張り付いています」

レイリア隊、第一、第二分艦隊の哨戒艦は、捜索をするに当って岩礁の密度に狙いを定めた。一つの岩礁に自然界に浮遊する物体と人類的に言えば、“人工的な物体”が一つの質量としてまとまっているはずがない。

これに目をつけた捜索隊は、岩礁一つ一つを質量分析の対象として捜索したのだ。これならば岩礁に人工物が隠れていれば、否応無しに見つけることが可能だ。

「了解した。近くの哨戒艦に再度調査させろ」

「はっ、分かりました」


「うわーっ」

「どうした」

「バイパーが攻撃を受けました。左側にいた無人機バイパー消滅。回避行動に移りつつ、攻撃した物体の補足を優先します」

「直ぐに同宙域の駆逐艦を呼べ。決して単独で行動するな」

「了解」

「全機、最大走査モード、周辺宙域の警戒監視を厳としろ。決して単独で行動するな。ジャック、キリシマ、ウォッカ、聞こえるか、配下の編隊に連絡しろ」

「こちらジャック、隊長、了解」

「こちらキリシマ、大丈夫です」

「こちらウォッカ、交戦中です。一機やられました」

「ウォッカ、駆逐艦は」

「こちらに急行しています」

「敵は、哨戒艦レベル、武装しています。攻撃の許可願います」

「ウォッカ、攻撃を許可する。実行は適宜判断しろ。無理をするな」

「隊長、了解。大丈夫です。最初は不意を衝かれましたが、今は、補足状態です。逃がしません」

謎の物体から攻撃を受けたのはレイリア隊の通称ウォッカ編隊、カール・ゴードン少佐率いる一二機からなる無人アトラス編隊だ。

実際には、航宙軍パイロットは、ゴードン少佐を含め四人しかいない。このようは特殊戦闘偵察には、うってつけの編隊だ。故にミルファク星系航宙軍は、無人アトラスで構成する自律飛行編隊を早く作りたかった。


三〇分後、四隻の謎の物体は、三隻が攻撃を受け消滅か自爆をしたが、残り一隻が、推進炉の自爆に失敗し、捕獲される事となった。

「第二分艦隊第二三航宙駆逐艦隊司令に伝えろ。自爆に気をつけろ。先に無人偵察艇を接舷、マイクロスコープロボで内部調査を行った後、乗り込め。万一新たな生命体がいた場合、絶対に殺すな。捕獲しろ」

司令フロアの3Dパネルに移る第二分艦隊第二三航宙駆逐艦隊司令に強い口調で指示を出すとヘンダーソンは、スコープビジョンに映る、哨戒艦ほどの大きさの攻撃艦らしき物体を見ていた。


「気をつけろ。ロボからの映像はどうだ。生命反応はあるか」

「まだ、ありません。あっ、ちょっと待って下さい。これは」

「どうした。何か有ったのか」

「ちょっと見たことのない装置があります」

「映像をこっちに回せ」

第二分艦隊第二三航宙駆逐艦隊指令は、回されてきた映像をみて唸った。

「なんだ、これは」

艦隊指令に送られてきた映像には、単純に四角い金属らしい箱があるだけだった。ただ、その箱の回りから箱を包むように青白いスモークが“ゆらゆら”と掛かっていた。

「直ぐに旗艦に映像を送れ」


ヘンダーソンとアッテンボローそれにハウゼーは、第二分艦隊第二三航宙駆逐艦隊から送られてきた映像に、金属らしい箱に青白いスモークが掛かった物体があるのを見て

「首席参謀、艦長どう思う」

「分かりません。既に特設艦の技術員の方には回してあります。結果を待つしか有りません」

「司令、生命反応ありません。無人です。艦内は、我々の攻撃で破壊されコンパートメント以外は、綺麗です」

「本当か」

「艦橋の状況はどうだ 」

「艦橋が有りません」

「どういうことだ」

「コンソール類が見当たりません」

マイクロスコープロボによる調査の後、乗り込んだ調査隊員は、例の箱以外何もない百メートルにおよぶ艦内を捜索したが、何も見つからなかった。

窓一つない箱のような艦である。有ったのは推進エンジン室だけだった。その推進エンジンも人類が創造したものとは、全く別の理論で作られている事は、陸戦隊から選ばれた調査隊員でも分かるレベルだ。

第二三航宙駆逐艦隊司令は、その報告を聞くと少しの間、考えた後、口元の込むに向かって、

「よし、調査隊員は、全員退艦しろ。牽引する」

「了解しました」

第二三航宙駆逐艦隊の調査隊員が艦内から撤退すると、先程の黒い金属の箱の周りを覆っていた青白いスモークが大きくなり艦内全体を充満するまでになった。

「司令、捕獲した戦闘艦から信号が発信されています」

「なに、先程は?何も無かったと報告したではないか」

レーダー管制官と艦隊司令との会話を割って入るように

「司令、あれを」

他のレーダー管制官の声に艦隊司令は、スコープビジョンを見た。航宙戦艦ほどの大きさではないが、物体を確認するには十分な大きさのスコープビジョンに、調べた時は何もなかったはずの岩礁の後ろから捕獲した艦と同じ大きさの戦闘艦が現れた。

突然と言った方が合うかもしれない。その戦闘艦が、ADSM98跳躍点方面にものすごいスピードで飛び去った。


「まずいな」

旗艦アルテミッツの高性能レーダーと光学センサーが捉えた映像を映し出すスコープビジョンを見て、ヘンダーソンは言葉を発した。その言葉にアッテンボローは、

「はい、仲間を呼びに行ったのだとしたら、非常にまずいことになります」

ヘンダーソンは、スコープビジョンを見ながら少し眉間に皺を寄せ

「主席参謀、もう一度指定宙域に監視衛星を敷設しろ。レイリア隊は戻せ。軽巡航艦、重巡航艦にADSM98方面跳躍点を即時戦闘態勢で警戒させる。全戦闘攻撃システムをオンにし、全艦防御シールドを最大にして第一級戦闘隊形で維持するように伝えてくれ」

「はっ」

と言って航宙軍式敬礼をしたアッテンボローは、復唱すると直ぐに指示に取り掛かった。


二時間後、第二分艦隊第二三航宙駆逐艦隊は、捕獲した戦闘艦を牽引して本体に戻ってきた。第一分艦隊も本艦隊に戻ってきている。

「総司令官、特設艦の技術員から報告が入りました」

「こちらに回してくれ」

ヘンダーソンの言葉にハウゼー艦長は、未開封のままのメッセージをヘンダーソンに送ると、ヘンダーソンは“レベルA”トップシークレット扱いになっているメッセージを見た。

「アッテンボロー主席参謀、シノダ中尉。私と一緒に司令官公室に来てくれ」

そう言ってハウゼー艦長に“宜しく頼む”と目配せすると総司令官席を立った。

司令官公室に入ると大きなテーブルと壁側に向って3Dスポットがある。三人は3Dスポットが見えるようにテーブルに着くとヘンダーソンは、“レベルA”のメッセージを開封した。

3Dスポットに第一七艦隊技術官アレッジと技術員のクレアが映し出されていた。

「総司令官、ご報告します。非常にいい難い事なのですが、あの箱の正体ははっきり分かりません。ただ言えるのは人類の作ったものではないという事です。そしてある種の信号を定常的に出しています。自分の位置を誰かに送っているようです。あの青白いスモークもはっきり分かりません。何か生命のような気もするのですが、何せ人類の生命に対する常識は固体です。もし、“未知の生命体”が固体を持たない種族であるならば理解できるのですが」

 ヘンダーソンは技術員からの報告に唖然としていた。

「固体を持たない生命体とは、どういうことだ。もっと解り易く言え、アレッジ技術官」

「アッテンボロー大佐。人類の常識の生命体とは固体です。しかし、宇宙においてそれが通用しているのは人類が進宙して見つけた世界です。我々が開発した星系に固体以外の生命体がいても不思議はありません」

技術官の説明にヘンダーソンは、目をきつくして

「アレッジ技術官、君は“未知の生命体”が、固体の体を持たない種族だといっているのか」

「そうであろうと申し上げています」


ヘンダーソンもアッテンボローも言葉を失った。

「閣下、発言をお許し頂けますか」

言葉のする方向に目をやるとシノダ中尉が、何かを見つけたような顔をしていた。

シノダ中尉は中将付武官だ。中将の身の回りを世話する役目であり、上級士官の会話に入ることはない。

「シノダ中尉、何か分かるのか」

疑問の目を投げるヘンダーソンに

「はっ、以前ここに来航した時、そして今回も彼らは自分たちの存在を隠す為、全て自爆の道をとりました。通常、人類の様に固体の体を持つ生命体であれば、個体が破壊されるとは、“死”を意味します。故に敵に捕まっても生きる望みを持ちます。“未知の生命”がもし“ガスのような”というのは正しい表現ではありませんが、固体を持たない生命体であれば“死”という概念はないのではないでしょうか。故に半壊になった艦は全て爆破する事により自分たちの存在を隠す事が出来ると考えていると思います」

「しかし、固体を持たない生命体が、何故人類と同じ様な艦を持つのだ」

「それは、彼ら“未知の生命体”の世界に入った人類から捕獲したものをコピーしているのではないかと思います。移動手段として」

「移動手段」

アッテンボローの言葉に

「はい、固体を持たない生命体が、どのように移動するかはわかりませんが、人類の使用している移動手段に興味を持ったと思えば理解可能です」

映像の向こういるアレッジ技術官とクレア技術員もシノダの考えに驚いていた。

アッテンボローは感心した顔をして

「シノダ中尉、説得力があるような、ちょっと無い様な感じだが、まあいい、アレッジ技術官、どう思うシノダ中尉の考えは」

「はっ、シノダ中尉の考察はすばらしいと思います。我々ももっと多角的に調査しますが、シノダ中尉の視点からもぜひ考えさせて頂きたいと思います」

ヘンダーソンは、

「分かった。アレッジ技術官、引き続き調査を続けてくれ。報告ご苦労だった」

敬礼をする二人の技術者の3D映像が消えると

「驚きました。ヘンダーソン総司令官、シノダ中尉は深い洞察を持つすばらしい士官です」

ヘンダーソンも目元を緩め、顎を引いて“その通りだ”という表情をすると三人は司令官公室を出た。


それから更に五時間後、ADSM98方面跳躍点から“未知の生命体”の出現も無い事を確認すると、ヘンダーソンは第一七艦隊を転進させた。

「第一七艦隊全艦に告ぐ。我々が接触しようとした“未知の生命体”は、極めて好戦的な種族と判断した。しかし我々の使命は、“未知の生命体”と接触し、我々の未来に通じる技術の習得をすることが目的だ。よって、我々は、新たに発見された“未知の生命体”と接触をすべくX2JP方面跳躍点に転進する。以上だ」


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