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西銀河物語 第四巻 ミルファクの夢  作者: ルイ シノダ
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第一章 ジュンとサリー (1)

ユーイチ・カワイは、無人機「アトラス」との三位一体の厳しい訓練を行っていた。本来の目的とは、異なった方向に進む無人機「アトラス」との関係に悩むカワイは、ユール准将に相談を持ちかけるが、一笑にふされてしまう。

それとは別にマイとユーイチの新しい始まりがあった。

第一章 ジュンとサリー


(1)

 宇宙空間を浮遊するデブリの間を三機のアトラスが飛行する。

ヘッドアップディスプレイに映るデブリの隙間に赤い点を見つけ攻撃の指示を出すと同時に瞬時に右上方を思考する。

 カワイの脳波からの指示を受けレイサは、赤い点に向って荷電粒子砲を放つと瞬時に右上方に遷移した。

左右後方に位置する二機のアトラスも同時タイミングで同じ動作をする。

刹那、ブルーのエネルギー波は、今までカワイ達のいた位置に殺到した。

ヘッドアップディスプレイには、先程まで映っていた赤い点が消えている。

カワイは、右上方に遷移した状態で大きく右に旋回するとヘッドアップディスプレイに先ほどより少し大きな赤い点を見つけた。赤い点の側に二.五万キロと表示されている。

「ジュン、サリー、デルタフォーメーション」

口で言うわけではないが、脳波から伝わった指示にレイサは、左右両舷に装備されている荷電粒子砲を艇の下部に遷移させる。他の二機も同時に同様の形態になるとそれぞれ三機のアトラスが艇の下部を寄せ合うように三角形に形に近づいた。

その時間、コンマ二秒。ほとんど接触寸前まで近づくとカワイは赤い点に向って攻撃を指示した。と同時に右上方を思考する。

三機から放たれた収束型荷電粒子が、トルネードの束となって二.五万キロ先の赤い点に突き刺さった。

側面シールドが一瞬輝くと薄い布切れのように引き裂かれ、航宙駆逐艦の側面装甲に激突し、少しだけ耐えたかに思われたが、発泡スチールの直方体の横を熱く熱せられた鉄の棒が突き抜けるように反対側の装甲まで突き抜けた。

全高五〇メートルの駆逐艦の側面にポッカリと穴が空き、漂うだけになっている。核融合炉の損傷は免れたもののあれでは、戦闘には使用できない。

カワイは、結果を見るまでも無く三機一体で右上方に旋回すると、急激なGと共に急上昇した。パイロットスーツが一瞬体を押さえ込むように圧が掛かると体が締まるようにシートにホールドされ“ぐっ”思わず喉元から声が出て体がフィットした。

スペシャルパイロットスーツでなければ人間の体では耐えられない加速である。直後、今までいた宙域に青白い光が突き抜けていった。

「デルタフォーメーション解除」

その指示に三機のアトラスが機体を通常モードに戻す。艇の下部にあった荷電粒子砲が左右両舷に戻ると同時に他の二機がレイサの左右後方に遷移する。

「ふうっ」

と青銀色に光るヘルメットに同着されているマスクの中で息を抜くと直ぐに別の標的を認識した。一度デルタフォーメーションを解くと、三機が一糸乱れない等距離を保ちながら右前方に飛び去る。

 次の目標を右に旋回しながら見つけると再度デルタフォーメーションを取った。距離一.五万キロ、至近である。ヘッドディスプレイに映る赤い光点。先程と同じ位の大きさだ。 

カワイは脳波から攻撃を指示するとレイサと同時に他の二機が収束型荷電粒子砲を一斉に放った。

合計六門から放たれた荷電粒子エネルギーの束が今度は拡散され航宙する駆逐艦の側面全高五〇メートルを越える大きさで襲った。

側面シールドは何の意味も無く突きぬかれ、やがてエネルギーが消滅するとそこには、中心部から前方がお辞儀をするように前に垂れて、後部が切られたように漂っていた。

 カワイはヘッドアップディスプレイに映る目標が消えるのを確認するとエネルギー残量が三〇パーセントになっているのを見た。

「ジュン、サリー帰還する」

カワイの意識の中に“カチ、カチ”と言う音が聞こえるとデルタフォーメーションを解いて左舷下方に飛び去った。


「カワイ大佐は、UF1、UF2とのシンクロモードを完全に身に着けましたな」

航宙母艦ラインの司令フロアからマルチスペクトル・スコープビジョンに映るアトラス三機の訓練飛行を見ていたアティカ・ユール准将は、隣に立つ航宙機開発センター課長シゲル・タナベに言うと

「完全です。我々が予想していたシンクロレシオを上回っています。しかし、残念ながらカワイ大佐だから出来る事です。先の“航路開発派遣”の時のテスト飛行が成功したおかげで、我々も次の開発に映る事が出来ましたが、UF1、UF2のダウングレードしたアトラスでもデルタフォーメーションはおろか、シンクロモードにさえ移れないパイロットが多くいます。今は選抜されたパイロットに集中的に訓練を行っていますが、隊を組ませるまでにはなっていません」

「そうか。しかし、早く見たいものだな。シンクロモードを利用できるパイロットの編隊を」

そう言ってユール准将は、司令フロアを後にしてアトラスの格納庫に向った。


“ジュン”と“サリー”。元はカワイの能力を最大限に引き出す為に開発されたアトラスの無人戦闘機UF1、UF2だ。カワイが訓練中に呼ぶのが面倒と考え付けた名前だ。

ジュンとサリーは、高密度に集積されたコンピュータをアトラスに積み込み、カワイの脳波と体液の流れを感知して完全なシンクロが出来る戦闘機だ。

本来ならばパイロットの数だけ同じ機能を持ったアトラスがあれば、パイロットの三倍の数の戦闘機を前線に就かせることができるが、これにはカワイと同じ器量を要求される。 

残念ながらミルファク星系の航宙軍戦闘機隊の中でカワイ程、純粋にシンクロレベルを同期するパイロットがいないのが実情だ。

今は、航宙軍開発センターでテスト飛行の成功を認められ現在のレベルからダウングレードした無人アトラスを後継機として開発し訓練を行っている。

カワイから見れば唯一の欠点は、自分の思考が全て筒抜けになるところだ。これは、カワイが被弾した時、他の二機がカワイの意識を判断して乗機を母艦まで連れて帰る役目も担っているのだから仕方ない。


ラインが視覚に入ると・・と言っても点にしか見えないが・・

「ライン、レイサ、ジュン、サリー着艦する」

言うが早いか目の前にラインの艦底が迫ってきた。全長六〇〇メートル、全幅一五〇メートル。全長二〇メートルのアトラスから見れば、巨大なドームに入るように感じる。

航宙母艦の下に入るレイサ他二機は、自動的に格納される。カワイは、計器類がノーマルモードであると確認すると“着いたか”と思い少し気を休めた。

三機のアトラスが誘導ビームに沿って上昇すると、ランチャーが伸びて来た。やがてランチャーに乗機がロックされると徐々に宇宙空間が見えなくなって白いドーム(発着艦格納庫)に入った。

アトラスが完全にドームに入るとドームの底が横からスライドしたプレートでロックされる。

「レイサ、エアーロックオン、ドームオープン、カワイ大佐お疲れ様」

聞きなれた声に少し頬が緩むとやがてレイサを包んでいたドームが両側に開いた。

整備士が寄って来て、外側からアトラスのパイロットシールドを開ける。既にオールズビューモニターは消え、肩から上の開いたカバーから

「カワイ大佐。ご苦労様です」

と言うと、カワイのパイロットスーツの左手前に着いているケーブルホースを抜いた。

カワイは、ヘルメットのロックを外し上に取り上げると、にこやかな顔をして整備士に笑顔を見せた。そして同時に着艦したジュンとサリーを見た。パイロットの位置になるコンピュータヘッドがブルーホワイトに“カチカチ”と光り、

「ユーイチ、ご苦労様」

としゃべった。

最初は、違和感が有ったカワイも、今は自分の分身という思いに変わっている。

「ジュン、サリー、お疲れ」

と言うと笑顔で二機の無人戦闘機に話しかけた。

「ユーイチ。少し体が疲れを表示している。ここ一週間の訓練で体の体内エネルギーバランスがマイナスを示しています。今日は早めにベッドに入るのがよいと考えます。アルコール残量は検出されない程度に飲まれるのは良いと判断します」

一瞬“くっ”と感じたカワイだが、まるで古女房・・カワイは独身だが・・のように体をケアするジュンとサリーに最近はちょっとあきらめ気味になっている。事実、自分より連中の方が、自分の体の調子を知っているのも事実だ。

しかし、ちょっとでも変な妄想を思考したとたん、連中は読取るから下手なことは考えられない。ヘルメットとスペシャルパイロットスーツを脱いで、シャワーを浴びた後でなければ、脳の思考を戦闘モードから一般モードに変れなくなっているのも普通の戦闘機乗りが無人アトラスとシンクロできない理由の一つだ。

 パイロットレクルームから自室に戻ったカワイは、訓練報告を行う為、デスクに向うとスクリーンパネルに“コンタクト”の文字が浮かび上がっているのを見た。

「うんっ、誰だ」

いつもなら、相手の名前が出ているはずだが、ネームフィールドがブランクである。少し気になったが、緊急でもないと思い、レクルームから持ってきた飲み物を口にすると訓練報告の作成に取り掛かった。

ヘッドレストを頭につけ、イメージを思い出すと脳波感応型イラストレイタは、今行ってきた宙戦のイメージをスクリーンパネルに映し出した。

ラインを発進してからダミースパルタカス(旧戦闘機)の撃破と模擬駆逐艦発見までの途中、シンクロモード飛行を思い出しながら、口頭でコメントをつける。

カワイは、標的の模擬航宙駆逐艦を認識してから、デルタフォーメーションを取るまでの時間の取り方や感覚を脳波からイメージをイラストする。

今回は、目標レッドを視認してからデルタフォーメーションをするまでの時間が掛かりすぎた。荷電粒子砲を発射してから右上方へ退避した時とダミーエネルギーをよけるまでの時間が、ギリギリだった事が反省の材料だ。

「もう少し、早く視認するためには、ジュンとサリーの広域レーダーをもっとうまく使わないとこちらがやられていた」

もう一度、発艦してから模擬航宙駆逐艦を発見するまでオールビューモニターに移る全方位を思い出しながら報告書を作成した。

その時、また”コンタクト”のサインが浮かび上がった。今回もネームフィールドはブランクである。

カワイは仕方なく、コンタクトの文字にタッチすると無人アトラスの航宙中のデータが入っていた。カワイは、驚いてデータを見ると、ラインを発艦してからのシンクロモードに映る時間が遅すぎ、発艦後、既にサリーが捉えていた模擬航宙駆逐艦のデータをロストしていたことがそこにはイラストされていた。

白く丸い円の中心に居るラインから右舷二〇度方向に模擬航宙駆逐艦がいる。

自分の右翼にいたサリーは、発進後直ぐに自機のレーダーで捉えたが、シンクロモードが遅く、カワイにデータを送る事が出来なかったのである。

額に右手を置いて

「ふうっ」

とため息をつくと、発艦シーケンスの見直しをする事にした。その時、カワイは、

「えっ、ちょっと待てよ。僕の部屋のアドレスはあの二機には分からないはずだ。それにアトラスを停止していれば、ジュンもサリーも機能していないはず。どういうことだ」

カワイは、訓練報告も途中にして、急いで部屋を出ると右手エレベータまで五〇メートルを走った。自動走行路を走るのだから早い。佐官以上のフロアにそう人は居ないので全力で走ると、自分のIDをエレベータパネルにかざし、ドアが開くのももどかしくエレベータに入り、アトラスの格納庫のボタンを押した。

格納庫は、ラインの発着フロアの後部にある。エレベータを降りて左に曲がると格納庫である。

格納庫で無人アトラスの側に居る目的の人を見つけると

「整備主任」

と大声で叫んだ。

「なんだ、そんなに大声を出さなくても聞こえる」

立場は大尉だが、カワイより年上でラインでは先任の上、無人アトラスの整備主任であることからカワイも一目置いている。

「整備主任。実は」

自室のスクリーンパネルに送られてきたサリーの航宙データを説明すると整備主任が、

「そろそろ来ると思ったよ。ほれ」

整備主任は、自分の胸ポケットに仕舞っていた小さなメモリを出すと自分の手にあるデータパッドに差し込んだ。

「見て見ろ」

「あっ」

カワイは絶句した。カワイがラインを発艦してからシンクロモードに移行する直前にサリーが右舷前方に捉えた模擬航宙艦の情報を送ろうと試みたが、航宙中はシンクロモードを起動しないとデータコネクトされない為、自機にデータを格納し、着艦後、パワーオフされる前にカワイのレイサを通して部屋のスクリーンパネルにデータを送ったのであった。再送モードにして。

「カワイ大佐。発艦前からシンクロモードにしたほうが良い様だな」

整備主任は、カワイの顔をちらりと見るとデータパッドをカワイの手から取り上げ、また整備に戻った。

カワイは、シンクロモードにすると全て二機に自分の状態が捉えられる為、あえて発艦後までシンクロモードをしないでいた。今回はこれが裏目に出たようだ。

カワイは無言のままの無人機二機が、自分を見つめているような気がした。部屋までの道のりが長く感じた。

自分の部屋に入るとデスクには向わずにベッドに体を“ドサッ”と預けると“参ったな”天井の光を見ながらつぶやくと自然と目が閉じた。遠くに映る星々を見ながらカワイは何も考えずにいた。

艦内時間午後八時。

「シンクロモードは確かにすばらしい技術だ。しかし・・・・」

「そうだ」

カワイはベッドから起き上がるとデスクのスクリーンパネルのボタンを押した。

「どうしたんだ。こんな時間に」

突然のカワイ大佐からの連絡にいぶかる航宙機開発センターのタナベ開発課長に

「課長、相談があります。今よろしいですか」

「いいから何だ」

「実は・・・」

カワイは、シンクロモードに対する自分も考えを言った。

「つまり貴官は、UF1、UF2の自律航宙を試せというわけか。面白い考えだが、彼らが納得するかな」

「彼ら?」

「UF1、UF2の事だ。彼らは貴官への依存度が高い。UF1、UF2にはあらかじめある程度の航宙能力、攻撃、回避能力、帰還能力をインプットしてある。貴官の戦闘、航宙能力が“さほど”のものでなければ、彼らはこれほどまでに貴官に依存する事はなかっただろう。しかし貴官のパイロットとしての能力は、それを遥かに凌駕するものだった。つまり彼らは、貴官を頼れるマスター(主機)として認めた訳だ」

ここまで話すと少し間を置き、カワイの目をしっかりと見つめると

「当初、貴官の考えと同じ開発思想だった。ある程度のパイロットの能力をマスターから吸収した後、自律航宙できるようにプログラムしていたのだが、どういう訳かUF1、UF2は、マスターとのシンクロを望むようになった」

「望むようになった」

カワイは、開発課長の言葉が理解できないでいた。

「カワイ大佐、違うんだ。自律航宙させる為には、単純な操作能力を持つ機械ではだめなんだ。自律的に思考できる能力をプログラムしてある。それはマスターが優秀であればあるほどマスターの能力を吸収していく」

カワイは、絶句した。

少し乾いた時間が過ぎると

「カワイ大佐。UF1、UF2のプログラムは君に依存することを望んでいる。もっと言えば君をマスターとしてシンクロする事を望んでいる」

何も言えないまま無言のカワイに“もういいだろう”という視線を向けると開発課長の3Dが消えた。


カワイは、デスクの前のタナベ開発課長の3D映像が消えると立ち上がって自分の部屋を出た。

佐官クラスの部屋は、格納庫から四階ほど上にある。ミルファク星系軍アルテミス級航宙母艦ラインは、全長六〇〇メートル、全幅一五〇メートル、全高八〇メートルの大型艦だ。艦の半分は、発着艦フロア、戦闘機の格納庫と核融合推進エンジンだが、更に司令フロアや管制フロアを除いても十分に居住エリアを取る事ができる。

カワイは、自分の部屋を出て上級将校用の食堂に行くと当番の交替要員がいた。

「カワイ大佐どうしたんですか。こんな時間に。もう休まれていると思っていました」

宇宙空間における時間は惑星上のそれよりも少し早い。中世期にサマータイムというものがあったようだが、それの“三時間前倒し版”だ。

カウンターに居る当番の給仕にフローラル星系のジャスミンティにミルクを入れるよう注文した。

カワイは、この紅茶が好きだ。淡く湯気のたった紅茶を飲みながら開発課長との会話を思い出していた。

“マスター(主機)に依存している”とても難しい事であった。

“AIが人間に依存する”そんな事があるのだろうか。現実的とは思えない事象をカワイは理解できなかった。

紅茶を飲み終わると自室にもどりUF1とUF2をマスターデータベースから検索した。それを見てカワイは、一言

「まいったな」

と言った。


航宙戦闘機隊のブレークルームで壁に映し出される外の映像を見ていた。

二時方向に第六惑星アルキメディアがミルファク恒星の光を受けて輝いている。まだ、点にしか見えない。

カワイは悩んでいた。“AIが人間に依存”する。それは人間の感情で言う“服従”だ。もちろん恋愛感情などあるはずもない。“部下は上司に従う”当たり前の事だ。人間ならば。

しかし、機械は拒否をしない。戦闘中は無理もあるだろう。その状況の時、自分は彼らを守る行動に出るのか、彼らを犠牲にする行動に出るのか。

そして自分が危機に陥った時、彼らは自分を守る為にいる。自分の能力を三倍に引き出すために有る。彼らを守りきれるだろうか。彼らを守りきれないという事は、自分自身を守りきれない事だ。想像以上の負担である。

昨夜はベッドでもあまり眠れずにいた。こんな状態でレイサに乗れるのか。彼らは俺の体の状態を一瞬にして分析するだろう。


「何を考えているんだ。カワイ大佐」

声の主の方を振向くとユール准将が立っていた。

「カワイ大佐。シンクロモードによる試験航宙テストは今回で終了だ。次からは実戦で使う。その主人公が暗い顔をしていると心配になるぞ」

アティカ・ユール准将・・ユーイチ・カワイが航宙軍に入った時、大尉だった。以来、ずっとユール准将の下で戦ってきた。スパルタカスの戦い方や作戦に失敗した時、成功した時、いつも強く部隊を率いて来てくれた。

カワイにとっては、言葉では現せない人だ。ブルマク戦役の時、カワイが、本艦隊とはぐれ、宇宙をさまよっていた時・・死を覚悟した時・・ユール中佐(当時)の強引なまでの捜索隊の行動がなければ、カワイは今ここに居ない。それだけにカワイは、ユール准将を心の底から信頼している。

「ユール准将」

カワイは、ゆっくりと顔を起こすと准将の目を見た。

「准将・・」

少し間を置くと

「お話したい事があります。ミーティングルームに行きませんか」


カワイは、准将に自分の心の中を話した。准将は少しの沈黙の後、カワイの目を見ながら

「カワイ大佐・・・。ぷっ・・」

いきなり笑い始めた。唖然とするカワイに

「カワイ。本当にお前は純粋だな。俺もそんなお前が大好きだから、今まで自分の隊に居るようにした。しかし、お前ももう大佐だ。そろそろお前が航宙軍を引っ張る立場にならなければならないのに、まるで子供が始めて恋したような話題を出すとはな」

「うわっはっはっ。悪い、悪い。ミルファク星系広と言えど、カワイの右にでるパイロットはいない。しかし恋愛と恋人の扱いはまるっきりだな」

「うわぅはっはっはっ。苦しい。止めてくれ」

呆れて唖然とするカワイは、

「どうしてです。何が何ですか」

「カワイ。本当に分かっていないのか。純粋すぎる。さすが、マイ・オカダ中尉が見初めた事だけはあるな。まあ良い」

笑いすぎて、目じりから涙が出ているユール准将は、手で目を擦ると

「カワイ。よく聞け」

「UF1、UF2はお前をマスター(主機)として望んでいる。それは事実だ。しかしそれはお前がいつも彼らの側に居なければいけないということではない。彼らと編隊を組んだ時、彼らの先頭にいてほしいという事だ」

そこまで言うとわざとらしく咳払いをして

「カワイ。信頼できるパートナー、連添える人と言うのは守り守られる人だ。しかし普段は、人間が何も感じない当たり前だと思っている空気のようなものだ。分かるか」

カワイの可能にクエスチョンマークが依然漂う事を見ると准将は

「カワイ。オカダ中尉をどう思う」

いきなりの質問に

「どう思うって言われても」

それを聞いた准将がまたまた笑いだして

「分かったもう言い。カワイ大佐。私の指示があるまでUF1とUF2をお前の僚機として大事にしろ。そのうち分かる。お前だから任せられる仕事だ。但し、データは確実にタナベに送れ。アイツも楽しみにしているはずだ」

ユール准将の理解できない会話に戸惑いを覚えながら、それでも何か心の中の錘が少し軽くなった気持ちになった。


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