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一乗寺ラーメン戦線異常あり! 前田家と前田家のラーメン戦争! まつと利家の、恋と麺  作者: イサクララツカ


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23/25

第23話 日曜朝、一乗寺――親子の勝負とラーメン戦争

 日曜日の朝。

 一乗寺は、まだ少しだけ静かやった。

 ……はずやった。

「なんでや」

 まつが店の外を見て、ぽつりと言う。

「まだ九時やで?」

 ラーメン屋カブキモノの暖簾はまだ出てへん。

 仕込み中の時間や。

 それやのに。

 店の前――

 すでに行列。

「……ほらな」  お母ちゃん――たけ子が言う。

「今日は“爆弾の日”やから」

 まつが額を押さえる。

「まだ開店二時間前やで」

「常連はな、情報戦やねん」

 台所の奥では、寸胴の前で腕を組んだ男がいる。

 まつの父、慶三。

 寸胴から立ち上る湯気を、まるで敵を見るみたいに睨んでいた。

「……まだや」

 低い声。

「豚骨は、まだ起きてへん」

 ぐつぐつぐつ。

 骨が溶ける音。

 脂が浮く匂い。

 この匂いだけで腹が減る。

「お父ちゃん」  まつが近づく。

「今日のスープ、どう?」

 慶三はレンゲを差し出した。

「飲め」

 まつがすすった。

 ……。

「……うん」

「どうや」

「骨の甘み出てる。

 脂は重すぎへん」

「せやろ」

 慶三がうなずく。

「今日は勝負やからな」

 今日は普通の日やない。

 一乗寺ラーメン戦争・通常運転。

 ……に加えて。

 親子勝負の日。

 まつは今日、

日替わり25食

を出す。

まつ限定

・泡系豚骨ラーメン

・餃子

・ニンニク炒飯

 対して。

 お母ちゃん。

 たけ子の年12回だけの爆弾。

竹子スペシャル

・豚骨味噌ラーメン

・〆の小さなコーヒー

・竹子スペシャルブレンド

 月一回の限定。

 常連はこれを爆弾と呼ぶ。

 なぜなら。

「並びが三倍になる」

 まつが言う。

「今日は倍どころやないで」

 たけ子が笑う。

「親子対決やし」

 そこへ。

「おはよー」

 二階から降りてきたのは妹二人。

次女 さくら(中1)

三女 うめ(小6)

「え、もう並んでる?」

「うわ、マジや」

 うめが窓から覗く。

「外国人おる」

「今日SNS回ってるみたい」

 さくらがスマホを見せる。

「“Kyoto best ramen battle today”って」

 まつが固まる。

「……なんで」

「知らん」

「SNSは戦場やから」

 たけ子が言う。

 外。

 すでに並んでる客。

 地元常連。

 観光客。

 大学生。

 外国人。

 カオス。

 その中でもひときわ目立つ人物。

 椅子を持ってきて座ってる老人。

 ラーメン仙人 吉岡爺さん。

 腕を組み、動かない。

「おるやん」

 まつが言う。

「朝から座ってる」

「開店まで動かへんで」

 慶三が笑う。

「仙人やからな」

 外では。

 京都大学生が話している。

「今日は泡系豚骨らしい」

「まつ限定や」

「いや、竹子味噌もやばい」

「月一やぞ」

「コーヒー付きやで」

 外国人も混ざる。

「What is bubble tonkotsu?」

「Foam ramen maybe」

「Kyoto ramen battle」

 まつがため息をつく。

「……なんかイベントみたいになってる」

「なってる」

 たけ子が言う。

「でも、うちは普通営業」

「普通やない」

 慶三が言う。

「今日は親子勝負」

 まつが腕を組む。

「負けへんで」

 たけ子がニヤリと笑う。

「お母ちゃんもや」

 さくらが聞く。

「どっちが勝つん?」

 慶三が答える。

「客が決める」

 うめが手を上げる。

「うちは?」

「皿洗い」

 即答。

「えー!」

 まつが笑う。

「ラーメン屋の娘やからな」

 時計を見る。

 9:30

 外の列。

 さらに伸びていた。

 吉岡爺さんが静かに言う。

「今日は……荒れるぞ」

 京都大学生が震える。

「仙人が言うなら本当や」

 外国人が写真を撮る。

「Samurai ramen battle」

 店内。

 慶三が寸胴を見つめる。

 たけ子が味噌ダレを仕込む。

 まつがチャーハン鍋を火にかける。

 妹たちが丼を並べる。

 そして。

 暖簾が出る時間が近づく。

 一乗寺。

 京都ラーメン激戦区。

 今日も――

ラーメン戦争、通常運転。

 ……に加えて。

カブキモノ親子戦争。

 開店まで。

 あと少し。

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