表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/13

3-3.18年という鏡(3)

 ――そういう、期待通りには行かないことはよくありますから……たぶん、この先も。

 ――そうですよねえ……あの、大学って、やっぱり大変ですか?

 ――いや、楽しいですよ。確かに、大変かもしれないですけど。今考えてもそうだし、その時にも、やっぱり楽しかったと思います。まあ、なんか途中で見なくなる人もいたりするんですけどね……その先どうなったのかは、知らないんですけど。

 ――なるほど……現実ってやつですねぇ。

 ――まあ少しは、歳のおかげで、経験して知ってることもあるんで。楽しそうでうらやましいくらいだったんですけど、ちょっと心配になっちゃって……あー、余計なこと言っちゃいましたね。

 ――いえ、お姉さんのおかげで、ちょっと安心できました。でも、ちょっと怖いなあ。私も結構、うじうじするタイプですし。死にたいとか、また思っちゃうのかなあ。

 ――受験のせいで、そうだったんですか?

 ――ああ、もっと前のことですよ。中二病ってやつです。変なこと考える子供だったんです。今でも、まだちょっと残ってますけど……この船から落っこちたら、いい感じに消えてなくなれるんだろうなあとか、考えちゃいました。あはは、大丈夫ですよ、本気じゃないんで。

 ――ふふっ……でも、どうしていい感じなんです?

 ――だって、真っ暗で、誰にも見られずにできるじゃないですか。今はダメですけど。お姉さんが目撃者になっちゃうんで。

 ――それはまた、残念ですね。

 ――あはは、いやあ、本気でするつもりだったら、出直しですね。それで、落っこちた後も、見つからないでしょうし。そしたら、本当に、消えてなくなるみたいな感じで、一人っきりで死ねるんじゃないかなあって。

 ――同感ですね。都合のいい場所だなって、思います。

 ――ですよね! 道路に飛び出すとか屋上から飛び降りるとか、一瞬で終わるし確実だと思うんですけど、相手とか周りとか、迷惑が大きすぎるよなあって。自分で刃物とか使うのだって、ビビっちゃいそうですし。ああ、うーん、でも……すぐには死なないんですかね? ここから落っこちても。睡眠薬でも、ガバガバ飲んでからとかじゃないと、いつまでも浮かんでたりしそうで……あ、今は水が冷たいから、そうでもないのかな。

 ――溺れたことって、あります?

 ――ないんです。小さい頃から、水泳やってたので。だから、溺れて死ぬってどういうことか、よく分からないんですよねえ……なんかやっぱり、死ぬまでに時間かかって苦しそうだし、ダメですかねえ。

 ――すぐ楽に、とは行かないかもしれませんね。あと、このフェリーだと、たぶん降りるときにチケットの確認がありますから。それで、乗ったのに降りなかった人がいるって、発覚しちゃうかもしれませんね。

 ――なるほど……じゃあ、完全に誰にも知られずに、迷惑もかけない、って感じじゃないですね、うーん……いい方法に思えたんですけどね。

 ――かなり上位に入るんじゃないですか。私も同じで、いろいろ考えちゃって。だから私も、かなり都合がいいとは、思ってるんです。

 ――やっぱり、そうですよね。でも乗ってる間がこんなに楽しいと、決心、できなさそうだなあ。

 ――その楽しさがもう続かないって分かってれば、できちゃうでしょうね。

 ――そんなに深刻な気持ちだったら、確かに。でも私は、そこまで行かないんだろうなあ……死ぬこと考えてたような時も、結局、すぐに持ち直してましたから。怒られた時とか、夏休みが終わる時とか、友達に何かされた時とか、そのときはめっちゃ深刻でも、少し時間が経ったら、意外と平気だなって、けろっとしちゃう、単純な子供だったんですよ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ