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魔王の仇し草  作者: 夢乃
第3章 対決編

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062 邂逅

 森を飛び出した、エルテリスを護る50騎の騎馬がローランディア軍の簡易砦に向かって全力で駆ける。砦まではおよそ1テック。

 ラビトニア軍も同じ合図で砦攻めを敢行しているはずだ。ただ、ラビトニア側に作戦を伝えているものの、エルテリスたちの思惑通りに動いてくれるとは限らない。もしもラビトニア軍が動いてくれなければ、50騎程度のミナンディア軍別働隊は瞬く間に蹂躙されてしまうだろう。


 簡易砦まで残り約半分、50テナーほどにまで近付いた頃、砦の西側で鬨の声が上がった。ラビトニア軍はミナンディア軍の要求に応えてくれたようだ。それに後押しされるように、騎馬の一団は残りの距離を一気に詰めようと速度を上げる。


 簡易砦に残っている騎士たちは、そのほとんどが砦攻めを敢行しているラビトニア軍に対応しているが、もちろん反対側にも警備の騎士がいた。その騎士たちがミナンディア軍別働隊に気付き、槍を向ける。


「何者だ!」

「止まれ!」

 ローランディアの騎士が誰何するが、それに対する答えは魔術に覚えのある数人のミナンディア騎士からの炎弾だった。


「なっ!」

「敵襲っ!」

 警備兵は魔術で強化した槍で炎弾を弾きつつ、大声で緊急事態を知らせる。しかし。


「「あばばばばば」」

 ミランディア別働隊が30テナーにまで近付いた時、コルテの広げた魔力が警備兵に届いた。コルテは即座に、雷撃魔術を行使する。遠距離からの攻撃でない不可避の魔術に、警備兵2人は感電し、倒れた。ミナンディア別働隊は、警備兵の守っていた粗雑な門に向かって馬を駆る。


 彼らが門に辿り着く前に、丸太で雑に造られた壁のに隙間から、駆けて来る騎士が見えた。警備兵の声が聞こえたのだろう。

「敵襲っ!」

「迎撃しろっ!」

 騎士たちが叫び、壁の向こうで抜いた剣を構える。


 ミナンディア別働隊は、魔術炎弾を撃ちながら砦に突入する。門に炎弾が集中し、脆くなったところに先頭の騎馬が突っ込んで突き破った。その勢いのまま、近くにいた騎士たちを複数人で馬上から斬り付け、攻撃力を奪った。

 魔術を使っていたためにやや遅れていた騎士たちも、壁の内側に飛び込んで来る。

 ミナンディアの騎士たちは、壁の内側で一斉に下馬した。周囲を気にしつつ、隊長が短く命令する。


「予定通り、分散して元凶たるランゼを探す! 見つけたらすぐに連絡せよ! 散開!」

 ミナンディア騎士たちは数人ずつのグループに別れ、四方に散って行く。すぐにローランディア騎士と遭遇するも、手早く無力化する。ほとんどがラビトニア軍の攻撃に対処しているのか、遭遇する人数が2~3人と少ないことが、ミナンディア騎士の有利に働いた。数を頼りに制圧していく。ラビトニア軍が砦攻めを敢行していなければ、こうは行かなかっただろう。


 エルテリスも、コルテと5人のミナンディア騎士と共に、ランゼの姿を求めて簡易砦の中を駆けて行く。

 簡素とは言っても、この砦はただ壁を造っただけではなく、ある程度の区分けもされていた。1万5千の騎士が滞在するために、それなりに造り込まれている。その分、と言うべきかどうか、屋根のある部屋などは皆無で、雨露は天幕を張って凌いでいるようだ。


 コルテは魔力を広げて探査結界を張り、ローランディア騎士の接近をいち早く察知して、数が少なければミナンディア騎士と共に奇襲して無力化し、数が多ければ迂回してやり過ごした。

 コルテの魔術の腕は、騎士としては突出している。魔術を使える騎士でも、広域の探査結界を張り続けられる者はそういない。コルテのおかげでエルテリスの分隊は比較的に労少なく砦の中を進んだ。


 騎士の無力化だけでなく、天幕を見つけるたびに火を放って混乱を煽っている。もちろん他の分隊も同じことをしている。あちこちで火の手があがり、ローランディアの騎士たちはそれにも手を取られている。


 見も知らぬ広い砦の中、目標であるランゼを探すのはそう簡単ではない。それでも、砦の外からも見えた監視塔が怪しいと、一行はそこを目指して歩みを進める。

 遠くから、叫び声や怒声、悲鳴が聞こえる。他の分隊も予想通り、暴れているようだ。コルテのお陰で、エルテリスたちの侵攻が最も速いだろう。


「殿下!」

 抑えられてはいるが鋭いコルテの声に、飛び出しそうになったエルテリスは足を止める。ずっとコルテの後ろを走っていたエルテリスだったが、気が逸る彼はコルテの前に出そうになっていた。


「殿下は奴との対決まではお力を温存ください」

「うん。解っている。ごめん」

「お気持ちは解りますが、抑えてください」

「うん」

 エルテリスはここまで、まったく剣を抜いていない。コルテやミナンディア騎士に任せっ放しだ。けれどそれも、父母の仇であるランゼとの対決のため。コルテや騎士たちに任せきりの今を歯痒く思いつつも、エルテリスはそれをグッと堪えて、6人に護られる形で、簡易砦を駆けて行く。



────────────────────────



 先頭のコルテがパッと手を上げ、エルテリスと騎士たちが即座に止まる。彼らの右手には丸太を立てた壁があり、少し先が入口のように空いている。

 コルテは前を向いたまま、ハンドサインで中の様子を示す。それにより、騎士たちもこの壁の向こう側がそこそこ広くなっていて、目の前の入口とは反対側から、三人が入って来るという状況を知る。


 3人の騎士が素早く入口の反対側に行き、コルテと2人の騎士はこちらに残る。エルテリスはコルテの後ろで待機。しかし後方警戒は怠らない。


 コルテは立てた拳を、サッと下ろした。7人が一斉に入口から中に入る。

 反対側の入口から入って来たのだろう、ローランディア軍の騎士3人が四角い広場の中央辺りにいた。

 やや後方にいた2人の騎士が剣を抜くと同時に、中央の1人の盾になるように前に出た。


 その、護られるような中央の1人の姿を視界に収めた瞬間、エルテリスの瞳が燃え上がる。

「ランゼ!! 父上と母上の仇はボクが取る!! 覚悟しろ!!」


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