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魔王の仇し草  作者: 夢乃
第2章 大陸南方編

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039 次の町へ

 すべての地竜を倒したことを確認すると、《雷獣》の魔術士べアールが火弾を空に放ち、後方に退避していた商隊に討伐終了を伝えた。3輌の馬車が、4人の護衛に守られてやって来る。

「5体とも全部倒せたのか」

 止まった馬車から降りたマルチェルが感嘆の声を上げた。

「何とかね。最大の功労者はレイトとレテールだ。本当に1人で2体ずつ倒しちまった」

 ボークルが護衛のリーダーとしてマルチェルに報告する。


「それでどうする? 解体して持っていくか?」

 ボークルが続けてマルチェルに確認する。護衛任務中なので、狩った獣の所有権は雇い主にある。

「地竜は皮も肉も牙も高く売れるから持って行きたいところだが、積荷もあるから無理だな。爪と牙、それに一番でかい奴の皮を剥いでそれだけ持って行く。それから肉も食用に少し切り取っていくか」

「解体するとなると、1体でもそれなりに時間がかかるが」

「1日くらいは遅れても構わん。その分の代金も出す。契約通りだ。そうだな、護衛任務に影響が出なければ、ハンターの諸君も肉でも皮でも切り取って構わない」

 雇い主の発言に、ハンターたちは笑顔になった。地竜など、そう多く遭遇するものではないし、討伐も困難だ。その分、素材は高く売れる。ハンターたちは早速、半数を馬車の護衛に残し、残り5人と商人2人で地竜の解体にかかった。


 爪と牙はすべての地竜から剥ぎ取り、皮は一番大きな地竜からできるだけ大きく切り取る。その地竜からはある程度の肉も切り取った。生のままでも魔術で冷やせば日保ちするから、旅の間の食糧とするくらいは十分だ。燻製や塩漬けにすれば魔術を使い続けなくても日保ちするが、今はそれをするだけの時間はないし、馬車にも大量に積むだけの空きはない。

 ハンターたちも地竜の皮を荷物にならない程度に剥いだ。そんな中、レテールは牙と爪を捥がれた小型の地竜1体を丸ごと圧縮し、シュバルの身体に括り付けているバッグに納めて、《雷獣》たちに呆れられた。


 地竜は5体もいたので、大部分は捨てることになった。商人たちからすれば、ハンターたちにとっても、勿体無いことこの上ないが、持ち運べる量に限りがある以上、致し方ない。

 残った地竜の死骸は、土に埋める。少なければ外皮だけ切り裂いて放置しておいても、肉食の野獣が片付けてくれるだろうが、量が量だ。街道からそう離れていない場所に、肉食獣を大量に引き寄せる餌を放置するわけにもいかず、埋葬するしかない。


 一通りの作業を終えると、小さな商隊は旅を再開する。当初の予定では、今夜は台地を下りたところで野営することになっていたが、台地の上で夜を明かすことになるだろう。




 その日の野営は、台地の半ばを過ぎた辺りで野営となり、ハンターたちには焼いた地竜の肉が振る舞われた。もちろん、料理を担当した商人たちも、予定になかった焼肉を頬張った。

 焼ける肉の匂いに引き寄せられて野獣が襲って来たが、レテールが広い探査結界でいち早く察知し、護衛のハンターたちが仕留めた。


 次の昼前には、一行は台地の端へ辿り着き、街道は下り坂になる。登った時と同じく、緩い坂だ。その坂を中程まで下りた時、レテールが探査結界に獣らしき存在を捉えた。ほぼ同時に、最後尾の馬車に乗っていた剣士のパナルスが、目の端に狼らしき影を捉える。

 レテールは、シュバルを馬車に近付けた。

「見たか?」

「ああ。ボークルに連絡する」

「数は6だ」

 パナルスが懐から笛を出すのを見て、レテールが伝える。パナルスは頷くと、独特の調子を付けて笛を吹いた。《雷獣》にはそれで伝わるのだろう。


 ボークルはすぐに動いたようだ。笛の音が前方から響く。

「ソールとエバに対処してもらうようだ。レテールは、2人が狼に抜かれたらその対応を頼むとのことだ」

「了解した。レイト、手綱を頼む」

「はい、姉様」

 ソールとエバが馬を後方に下げ、シュバルのさらに後ろについた。狼たちはまだ襲って来ない。が、街道の両側の岩や木立に隠れるように、付いて来る。パナルスはいつでも馬車から飛び降りられるように警戒し、レテールも探査結界を張ったまま、いつでも魔術を放てる構え。


 そして、街道の左右後方から一気に飛び出した6頭の狼が、商隊を襲おうと駆けて来る。それを察知したソールとエバは、すぐに馬首を返した。

 ソールが狼たちに雷撃魔術で攻撃する。

「ギャンッ」

 それで2頭が他に倒れた。死んではいないようだが立ち上がることなくヒクヒクと痙攣している。

 続けてエバが馬を駆り、騎乗したまま狼の背中を斬り裂く。狼のような体高の低い獣に馬上から剣で致命傷を与えるのは骨が折れるはずだが、エバは苦もなく2頭の狼を仕留めた。


 その間にソールは、作った魔術陣から先ほどより強い雷撃を放つ。雷撃を向けられた狼は身体を捻って躱そうとするも、ソールは雷撃の軌道を曲げて狼に当てた。狼はそれで動かなくなる。

 残りの1頭は、馬を戻して来たエバが、これも馬上から剣を振り、背中を大きく斬り付けた。

 絶命した狼は2頭ないし3頭。しかし、残った狼も戦意を失ったようで、もう追っては来ない。ソールとエバも、(あぶみ)で馬の腹を蹴って、馬車の列に追い付いた。


「アンタたちもなかなかやるじゃないか」

 いざと言うときには馬車から飛び降りて参戦するつもりだったパナルスが、警戒レベルを下げて言った。

「そりゃ、コレで食ってるからな」

 ソールはパナルスに笑い掛けて答えると、そのまま2輌目の馬車の位置まで馬を進めた。エバも。


「2人とも、強かった?」

 短い戦闘の間、後ろを意識しつつもシュバルを駆ることに務めていたレイトがレテールに聞いた。

「5~6頭なら抜かれないと言っていたのは事実だった。かなりの腕はあるな」

 レテールも前を見たままではあったが、戦闘の様子は探査結界でずっと見ていた。


「姉様よりも?」

「いや、それはない。単純な戦闘能力なら、レイトも2人より上だろう」

「でも?」

「ああ。経験の差は大きい。戦闘能力で上回っても、今のレイトでは敵わないだろうな」

「戦闘経験、か。……アイツも、戦闘経験は豊富だろうね」

 レイトが瞳を細める。

「だろうな。奴は元々、経験豊富なハンターという触れ込みだ。私も対峙したのはあの一度きりだが、その言葉に嘘はないだろう」

「ボクももっと、経験を積まなくちゃ」

 レイトは、手綱を握る手にグッと力を込めた。



────────────────────────



 その後は大きなトラブルもなく、商隊は予定した翌日の昼前にはマナクールの町に到着した。

「今回は思わぬトラブルがあったが、皆のお陰で我々も商品も無傷でこの町に辿り着けた。そればかりか、思わぬ収入も得られそうだ。報酬は大幅に上乗せさせてもらおう。

 我々はここに2~3旬滞在して次の町に向かう予定だ。君たちがそれまでここに滞在するなら、また護衛を頼みたいくらいだが、そうもいかないだろう。だが、機会があればどこかでまたワタシの依頼を受けてくれ」


 町に入ったところの広場でマルチェルは雇ったハンターたちを労い、それぞれに報酬を支払った。さらに、依頼達成書類をボークルに渡す。本来であれば依頼主のマルチェルがハンターギルドに直接赴いて伝えるのだが、今回はマルチェルも満足しているので、ギルドへの報告もハンターに一任した形だ。

 《雷獣》は、ボークルと他3人でハンターギルドに向かい、残りの2人は宿を探すようだ。


「地竜の報告は任せて構わないか?」

 レテールがボークルに聞く。

「構わないが、お前たちはギルドに行かないのか?」

「先に馬を預けてからだ」

「そうか。なら、先に行っている」

 《雷獣》とはそこで別れたが、ソールとエバは着いて来た。


「まだ諦めないのか?」

「もちろん。ってか、2人の実力を見たら諦められないな」

「ふん、勝手にしろ」

 レテールは素っ気なく言うと、レイトを促して馬屋へと向かった。




 シュバルを預けると、その足でハンターギルドへと向かう。今日はもう仕事をするつもりはないが、情報は抑えておく必要がある。ソールも当たり前の顔をしてついて来たが、エバは別行動をとった。

 ギルドの情報掲示板は、3日前にリンデールの町で見たものとそう変わらない。元王太子エルテリスと護衛騎士コルテの手配書の内容も同じだ。


 そこへ、ギルド職員が足早にやって来て、新しい情報を貼り付けた。



         地竜警報


 ここマナクールとリンデールを結ぶ街道の通る

 マクナリン台地にて、地竜の出現情報あり。

 目撃された地竜は討伐されたが、別の地竜が

 棲息している可能性あり。

 リンデールに向かう者は十分に注意されたし。




 それを貼った職員は、そのままギルドの外へと出て行った。他のギルドや町の主だった者たちへ知らせるのだろう。

「ボークルの報告だな。さすがに対応が早いね」

「何しろ地竜だからな」

 後ろで言ったソールの言葉に、つい反応して答えたレテール。言ってから、『しまった』と言う顔をして口を噤んだ。

 ソールは気にした風もない。


「ボークルはいないな。奥に呼ばれたかな? それとも、地竜の皮を売りに行ったかな?」

 地竜が5体も現れた、それも街道に、となれば、話は大きくなるから、ギルドの上層部に呼び出された可能性は十分にあった。それとは別に《雷獣》もマルチェルの許可の元で地竜からそれなりの量の皮を回収していたから、買い取りを頼んでいるかも知れない。


 そんなソールの言葉を流しつつ、レイトとレテールは情報掲示板に続けて依頼掲示板を確認し、窓口で買い取り場所を聞いて、そこに向かう。

「あんまり無視しないでくれよ」

 ソールが泣き言を言いながら着いて来たが、レテールは無視を貫き、レイトも気の毒そうな目をソールに向けつつも、レテールから離れないように続いた。


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