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マカラート王国へ帰還

 ロイはやっと森を抜け出し、マカラート王国の街の風景が目に見えてきた。どこか懐かしい街並みが広がっており、3年前と変わらぬ活気が感じられた。冒険者たちが行き交い、子供たちが道端で遊び、露店の商人が忙しそうに客を呼び込んでいる。


「戻ってきたな.......」


 静かに呟くと、彼の胸の中には懐かしさと同時に高揚感が湧き上がってくる。この街で冒険者としての一歩を踏み出したあの頃と違い、今の彼は強さと自信を手に入れているのだ。街の中を歩きながら、ギルドの建物を目指す。


 ギルドの扉を開けた瞬間、懐かしい匂いと賑やかな声が彼を包み込む。冒険者たちが集まり、依頼を受けたり談笑したりしている。木製のカウンターの向こうには、見覚えのある受付女性のルルカが立っており、彼女の顔を見た瞬間、ロイは思わず微笑んだ。


「ロイ......君なの?」


 彼女の驚いた声が響き渡り、周囲の冒険者たちが一斉にロイに視線を向けた。彼女はすぐにカウンターから出てきて、ロイの前に立ち止まった。その瞳には、驚きと安堵が交錯しているのが見えた。


「まさか、戻ってくるなんて......みんなで君を探したけど、結局見つけられなかった。どこに行ってたの?」


 ロイは少し照れくさそうに目を伏せながら、答えた。


「少し修業に出てたんだ。色々と.....鍛え直すために」


 彼女は安心したように、目を涙をためながらロイの肩を軽く叩いた。


「本当に無事でよかった。街を出て行ったと聞いて、心配でたまらなかったんだから!」


 その言葉に、ロイは少しだけ申し訳ない気持ちを抱いたが、彼女の顔を見て、再びギルドに戻れたことへの安堵感を覚えた。彼はカウンターに戻り、周囲の冒険者たちが興味津々に話しかけてくるのを感じながら、少し照れくさそうにしていた。


「おい、ロイ!久しぶりだな!あの時の奴が帰ってきたって本当か?」


「本当だ。俺はここに戻ってきたんだ」


「3年も経つと、大きくなったなー。ロイ」


「ああー、3年だからな。」


 ロイは静かに答えながら、仲間たちの熱意と興味が自分に向けられているのを感じていた。以前の自分とは異なり、今の自分がどれだけ変わったかを改めて実感していた。


 受付の女性が優しく彼に微笑みかけ、再びカウンター越しに向かい合った。


「さあ、ロイ君。久しぶりに依頼を受ける気はある?」


 彼女の問いかけに、ロイは少し驚いたが、すぐに顔を引き締め、依頼書の束を確認した。


「もちろんだ。さあ、どれでも持ってきてくれ」


 受付の女性は彼の言葉を聞き、驚いた顔をしながらも満足げに頷き、前より少し高いDランクの依頼書を手渡してきた。


「Dランクか、もう少し高くても、大丈夫だけど?」


「そう?修業してきたからかな?」


 新しく依頼書をかつて挑むことができなかった高難易度の依頼も含まれていたが、今の彼にはそれを引き受けるだけの自信がある。


「ああ。問題ないよ」


「そう。今の君なら大丈夫そうね。でも気をつけてね」


 ロイは、[Cランクのオーク討伐]を受け取った依頼書を手に、深く頷いた。彼は再び冒険者としての一歩を踏み出す準備が整ったことを確信し、街の喧騒の中で新たな挑戦が始まることを実感する。


(ここに戻って、また冒険者として生きる)


 そう心に言い聞かせながら、ロイはルルカに別れを告げ、再び街の中へと歩き出した。彼の胸には、かつての弱かった自分を超えた喜びと、新たな旅への期待が満ちていた。


「久しぶりの討伐依頼、楽しみだな」


 ロイはギルドを後にし、街の喧騒の中へと歩み出した。周囲を見渡しながら、かつての自分がこの街でどう過ごしていたかを思い返す。薬草を集め、低ランクの依頼を必死でこなしていたあの日々が、今では遠い昔のことのように感じられる。


「こんなに人が多かったか.....」


 街の道を歩くうちに、露店の商人たちや、道端で遊ぶ子供たちの姿が目に入った。彼らの賑やかな声が、まるで自分を歓迎しているかのように聞こえる。かつてはただ通り過ぎるだけだった景色も、今ではどこか愛おしく感じられた。


 ふと、自分が初めて薬草採取の依頼を受けた場所が目に入る。今となっては懐かしい思い出だが、あの頃はその依頼一つこなすのにも四苦八苦していたことを思い出す。


「俺も、随分変わったな」


 ロイはそうつぶやき、再び歩き出す。街の奥に向かうにつれ、かつての冒険者仲間たちの顔もちらほらと目に入る。彼らの表情は、以前の自分を見下すものではなく、何か嬉しい気持ちがあるような表情を含んでいるように感じられた。


「ロイ、久しぶりだな!ずっと探していたんだぞ」


 突然、背後から声をかけられ、ロイは振り向いた。そこには、かつて一緒に依頼を受けたことのある冒険者ガイウスの姿があった。彼は懐かしそうにロイを見つめ、親しげに肩を叩いてきた。


「お前、いつの間にこんなに大きくなったんだ?街を出て行った後、どこにも見当たらなかったぞ」


 ロイは軽く笑みを浮かべ、答えた。


「修業してたんだ。森の奥でな」


 その言葉に、彼の仲間は目を見開いて驚いた様子を見せたが、すぐにニヤリと笑みを浮かべた。


「お前ならやりかねないと思ってたよ。でも、無事に戻ってきてくれてよかったぜ」


 ロイは再び歩き出し、ガイウスと共に街の中を歩き回った。かつては感じられなかった仲間との絆が、今では自分を支えていることを実感する。彼は今、かつての自分とは違う。仲間たちの声が、まるで彼を祝福しているかのように響く中、ロイの胸には新たな旅への意欲が湧き上がっていく。


(この街に戻ってきて、新しい道が始まるな・・)


 ロイはガイウスと別れを告げ、静かに街の夜景を見上げた。空には星が輝き、彼のこれからの冒険を祝福しているかのようだった。

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