初依頼
「『十帝』か…結局何のスキルか分からなかったな…」
ロイは水晶に映し出された自分のジョブスキル『十帝』の謎に頭を巡らせる。スキルの正体が分からないまま、ステータスも初期の段階では全く高くなかった。
「まあー、これから強くなればいいよな」
明日のことを考えながら夜の街を歩き、夜風が冷たくなってきたので、野宿できるところを探す。
すると、草や木が生えた大きな広場があり、今日はここで寝ることにする。
(明日からだな・・・)
翌朝、ロイは早く目を覚ました。広場での野宿は思った以上に快適で、久しぶりにぐっすりと眠ることができた。彼は軽く身支度を整え、ギルドへと向かう。
ギルドの扉を開けると、すでに多くの冒険者たちが活動を始めていた。前日と同じように賑やかで、その活気に再び胸を躍らせた。
「今日から、冒険者として働く一歩だな」
嬉しそうに表情を緩め、ロイは受付の女性に向かって歩く。彼女は昨日と変わらず、忙しそうに書類を整理していたが、ロイに気づくとにこやかに微笑んだ。
「おはようございます、ロイさん。今日は依頼を受けに来られたんですね?」
ロイは頷き、少し緊張しながらも自分の目的を伝える。
「うん。昨日の登録の続きで、依頼を受けたいんだけど…」
女性は頷き、書類を取り出しながら説明を始めた。
「まず、冒険者にはランク制度があります。Fランクから始まり、最高ランクのSSSランクまであります。ロイさんもご登録されたばかりなので、Fランクからのスタートになりますね」
「Fランクか…始めたばかりだし..そうだよな」
少しだけ肩を落としたが、それでも仕方がないとすぐに気持ちを切り替える。初めての冒険者生活が、本格的に始まるのだ。
「Fランクでは、基本的な依頼が多く、危険度の低いものが中心です。まずは冒険者としての経験を積むことが大切ですから、少しずつ慣れていきましょう」
彼女の説明を黙って聞きながら、頭の中で段取りを組み立てていた。
「ありがとう。そうするよ」
受付の女性は頷き、ロイに説明を続ける。
「最初の依頼として、おすすめなのは『薬草採取』です。街の近くにある森で、特定の薬草を集めてくるだけです。危険度も低いので、初めての依頼としては最適です」
「それならできそうだな。薬草採取か…分かった、それを引き受けるよ」
ロイは少しホッとしながら、彼女の言葉に耳を傾け、
彼女は手早く書類に記入し、依頼書を渡した。
「こちらが依頼の詳細です。薬草の場所や特徴も書かれているので、確認してから出発してください」
「ありがとう。早速、行ってくるよ」
依頼書を受け取り、彼女にそう言って立ち上がりかけたが、ふと思い出してもう一度声をかけた。
「あ、あと一つ聞いてもいい?訓練できる場所と、長く泊まれる宿屋を教えてもらいたいんだけど…」
「訓練場所なら、街の西側にある広場がおすすめです。そこにはいくつかの訓練場があって、剣術や戦闘の基礎を学べますよ。特に初心者にはうってつけです」
その質問に、すぐに答えてくれたが、ロイはさらに続けて聞く。
「宿屋は?できれば、長く滞在できて、そんなに高くない場所がいいんだけど…」
「街の南にある『風の宿』がいいかもしれません。料金も格安で、初心の冒険者や安く長く滞在したい冒険者も多いので良心的です」
「風の宿か…ありがとう!助かったよ」
ロイは感謝の言葉を述べて、ギルドを後にする。彼女から聞いた訓練場所と宿屋の情報が、これからの冒険者生活にとって大きな助けになるのだ。
「まずは薬草採取だな…」
気を引き締め、森へと向かって歩き出し、依頼書に記された薬草の場所は街から少し離れた森の中にあった。そこは比較的安全なエリアだが、それでも油断は禁物なことは変わらない。
森の入り口に立つと、木々の間から冷たい風が吹き抜け、彼の髪を揺らす。森の中はしんと静まり返っていて、周囲の音がほとんど聞こえない。
「よし…行くぞ」
心を落ち着け、森の中へと足を踏み入れた。木々の間を抜けながら、慎重に足を進めていく。森は静かで、動物の気配も感じられないが、緊張はしていた。
「薬草は…どこにあるんだ?」
依頼書を確認しながら、特定の場所を目指して歩いていた。しばらく進んでいくと、ついに薬草が生えている場所を見つける。
「これだよな…」
ロイは膝をつき、薬草を丁寧に採取し始めた。手に取ると、柔らかい葉と独特の香りが鼻をくすぐる。
彼は依頼書に書かれた薬草の特徴と照らし合わせながら、慎重に数株を集めていく。
「もう少しだな…」
数株の薬草を手に入れたところで、周囲を確認した。何の気配も感じられず、安心して薬草の採取を続ける。しかし、その静寂が突然破られた。
「何だ…?」
彼の背後から微かな物音が聞こえてくる。振り返ると、茂みの中から小さな影が動いているのが見える。ロイはとっさに剣を握りしめ、身構えた。
「またか…!」
飛び出してきたのは、コボルトだった。太い木の棒を手に持ち鋭い爪を振りかざし、ロイに向かって突進してくる。
「前に倒した時に、動きは把握済みだ!」
ロイは剣を構え、コボルトに向かって突進する。前回に戦った際に学んだ動きと培った反射的な行動で、コボルトの攻撃をかわしながら一瞬の隙を狙う。
「今だ…!」
渾身の力で剣を振り下ろし、コボルトの脇腹に突き刺した。コボルトは苦しそうな叫びを上げ、地面に倒れ込む。
「ハァ..ハァ..勝った…」
ロイは肩で息をしながら、コボルトの動かなくなった姿を見つめる。薬草採取の依頼ですら、命を賭けた戦いになること。それを実感したロイは、冒険者生活が厳しくも楽しいものになる事を感じていた。
そして、再び薬草を集め始めたのだった。
読んで頂きありがとうございます。
私の創作小説です。
また、面白かったら、読んで頂けると嬉しいです。
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