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冒険の門出

 翌日の早朝、老人が話しかけきた。


「いつ出発するのじゃ?

 それと荷物が何もないようじゃが、旅の用意とかしているのか?」


「えっっと・・。」


 ロイは命からがらに鉱山から逃げてきたため、旅の用意もしてなければ、荷物もない。

 そのため、言葉に()まる。


「ちょっと待っておれ」


 老人は奥の部屋に行ったかと思えば、何かゴソゴソと動いている。

 ロイは彼が何をしているのか気になったが、待つことにした。

 しばらくすると、古びたリュックサックと小さな包みを持って戻ってきた。


「これを持ってゆけ。旅に必要なものが少し入っとる」


 ロイは驚きながらそのリュックサックを受け取る。

 重さはそれほどでもないが、確かな存在感があった。


「えっ...いや、さすがにこれは悪いよ」


「気にするな。わしも昔は旅をしていたからのう。

 これぐらいのものならいくらでもあるのじゃ」


「本当にいいの?」


 戸惑いながら尋ねると、老人は頷く。

 その言葉に感謝の気持ちを感じながら、リュックサックの中を覗き込んだ。

 中には簡単な食料、地図、少しの薬草、そして小さなナイフが入っていた。


「こんなにたくさん…ありがとう」


 頭を下げると、老人はその姿を見て、微笑む。

「お前さんは、強い心を持っとる。それを忘れてはいかんぞ」


 その言葉に胸が熱くなるのを感じた。

 ロイは自分がまだまだ未熟であることを知っているが、

 これでまた前に進める気持ちになる。


「うん。俺、頑張るよ」


 その言葉に老人は、また微笑む。

 さらに、何かを思い出したかのように動こうとしていた。


「ああ~そうじゃ!いかんいかん。

 まだ渡すものがあるんじゃった。ちょっと待っとれ」


(なんだろう?・・)


 老人はすぐに戻ってくると、手に何かを持っていた。


「老いてしまうと、物忘れが激しくてかなわんわぃ」

「ほれ、これも持ってくのじゃ」


 老人の手から、小さな剣が差し出された。

 その剣は簡素だが、刃は鋭く光っている。


「これは…?」


 ロイが驚きながらも剣を受け取り、

 それを眺めていると、静かに説明しだす。


「それはわしが若い頃に使っていたものじゃ。どんな時でも役に立つ、旅の友じゃ」


 ロイは剣を握りしめると、強い重みを感じた。

 それは、今までに老人が共に戦ってきたその剣の歴史と重みを、受け取っているからである。

 また、自分が剣を持つ日が来るとは思っていなかったため、嬉しさとどこか安心した気持ちになる。


「本当に…ありがとう」


 再び感謝の気持ちを述べ、剣をリュックサックにしまう。

 彼の決意が、さらに強く固まった。


「これで準備は整ったかのぅ」


 老人がそう言うと、深呼吸をして頷く。

 ロイの中には、新たな旅への期待と不安が混じりながら、

 自由と冒険の楽しみにワクワクさせているのである。


 また、準備やら説明等により、話し込んでしまっていたため、お昼に差し掛かろうとしていた。


「じゃあ、そろそろ行くよ。」


 旅に出ようとした際に、ロイはふと何かを思い出したかのように、老人の方へ体を向ける。


「あっ、そうだ。

 おじいさんの名前を聞いてなかったよ」

「名前教えてくれる?いつか必ず、会いにくるから」


 ロイは、この小屋に来てから老人の世話になりっぱなしになりながらも、名前をうっかり聞き忘れていたのである。


「ほっほっほっ!伝えておらんかったかのぅ」

「...わしの名前は、モーセルじゃ」


「モーセルじいさん。いい名前だね」

「じゃあ、モーじぃちゃんだね」


「ありがとう、モーじいちゃん」


「ほっほっほっ!モーじぃちゃんとな」

「なんだか、そう呼ばれたのは、久方ぶりじゃのぅ。」


 ロイがそう言ってドアに向かう。

 モーセルも一緒に立ち上がり、彼を見送るためにドアを開けた。


「じゃあ、モーじぃちゃん。行ってきます!」


「ロイや。気をつけていくのじゃぞう。

 まぁ~お前さんならきっと大丈夫と思うがのぅ」


 ロイはその言葉に勇気をもらい、モーセルに深くお辞儀をしてから小屋を出る。

 外の風は暖かく、昼の森の中は気持ち良いそよ風が、通っていた。


「これからだな、俺の旅は…」


 再度、小屋の方を振り返り、もう一度だけ手を振る。

 モーセルは笑顔でそれに応え、その姿が見えなくなるまで見送ってくれていた。


 ロイは森の中を、リュックサックの重みを感じながらも、

 心は軽くなるのを感じて、優雅(ゆうが)に歩く。


 そして、ロイを(つつ)むかのように、綺麗(きれい)な光が差し込み、

 新たな冒険の門出を祝福し、道が照らされているのだった。

読んで頂きありがとうございます。


自身の創作小説です。

面白かったらいいね!をください。よろしくお願いいたします

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