鉱山
ロイが連れ去られてから数日が経った。目隠しと手枷をつけられたまま、馬車に揺られてどこか知らない場所へと運ばれているのは分かる。
耳に届くのは、馬の蹄が石畳を叩く音、他の奴隷たちのすすり泣き、そして冷たい風の音だけ。
僕はただ、家族のことを考えていた。
「母さん…父さん…」
何度も心の中でその名前を呼び、目の前の現実を否定しようとする。
しかし、馬車は止まることなく進み続け、不安は募るばかりだ。
やがて、馬車が急に止まり、無理やり引きずり出された。
目隠しが取られると、目の前に広がる光景に息を呑む。
目に映るのは、荒れ果てた山々と、その奥に口を開けた巨大な鉱山だった。
黒煙が漂い、金属の打ち鳴らされる音が絶え間なく響く。恐怖が一気に胸を締め付ける。
「ここは…どこなんだ…?」
監督者の荒々しい声が響く。
「お前たちはここで働くんだ。さあ、動け!」
背中を無理やり押され、鉱山の中へと連れ込まれ、周囲には大人も子供も混じって働いており、彼らの表情は疲れ切っているように見える。鉱山の中は薄暗く、石と鉱物の冷たい匂いが鼻を突く。
「僕も…ここで…?」
思わず呟いた声は、鉱山の奥深くに吸い込まれるように消えた。
重いツルハシが手渡され、「これで岩を砕け」という無慈悲な命令が飛んでくる。
力任せにツルハシを振り上げようとするが、その重さに手が震え、何度も石に弾かれる。
手のひらにはすぐに豆ができ、痛みが走る。
「こんな…こんなの…できない…」
しかし、監督者は弱音など聞き入れない。
「さっさと握れぇぇぇ!」
僕を殴るような勢いで容赦なくツルハシを握らせる。
歯を食いしばりながら再びツルハシを振り上げるが、その度に体中が悲鳴を上げて今にも心が折れそうだ、、。しかし目の前の岩が、まるで巨大な壁のように身体も心も押し返す。
「家に…帰りたい…」
疲れ切った心が、その言葉を繰り返す。それでも、黙々とツルハシを振り続ける。
母さんと父さんの元に戻る日を、ただ信じながら。
読んで頂きありがとうございます。
自身の創作小説です。
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