幸せ夫婦と精霊石 3
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ウェルズ様とともにお屋敷に帰ってきた。
そのまま手を引かれて夫婦の部屋に向かう。
「……驚きました」
扉が閉められて二人きりになった途端、私は事態に混乱しながらつぶやいた。
「マークナル殿下とアイリス殿下の魅了の力は、本当になくなったのですか?」
「……なくなったというよりは、コントロールできるようになったのだろう」
「そうですか……」
魔力がないせいで二人の魅了の力をまったく感じられない私には、違いがわからなかった。
けれど、強靱な精神力と魔力で二人の魅了の影響を受けていなかったウェルズ様には違いは明確にわかったのだろう。
「……これでマークナル殿下こそが、王子殿下の中で最も王位にふさわしいと誰もが認めるに違いない」
「そうですね、私もそう思います」
民を思う気持ち、精霊に愛される力、洞察力、行動力、王族としての品位……王族としてどれも他の王子殿下よりも優れている。
「精霊石にそんな力があったなんて」
「……そうだな。だが先々代の国王陛下は、似たような体験をしていたようだ」
「そうだったのですね」
マークナル殿下にとって私は一つの鍵だったのだろう。そんなことを思いながら、そっとウェルズ様に近づいて上衣を脱がせていく。
「……積極的だな」
「何を仰っているのですか。背中、見せてください」
「……」
ウェルズ様は何かを言おうとした。呑み込まれたそれは、もしかすると拒絶の言葉だったのかもしれない。
以前の私だったら、そんな態度に拒否されたと感じたかもしれない。
「……ひどい傷。しかも、新しいように見えます」
「完全に塞がっていたのだがな……君を選ぼうとした精霊様の意趣返しといったところか」
「痛いでしょう……」
ポツリとつぶやいた瞬間、手首を掴まれて引き寄せられた。
「――捕まえた」
「……ウェルズ様?」
「君が手に入るなら、俺は何だって差し出すだろう」
次の瞬間、抱きしめられていた。
素肌に触れた頬が熱を帯びて、じんじんと痛いほどだ。
「やっと俺だけのカティリアになった」
「……私の心はずっとウェルズ様のものでしたよ」
そう、ずっと好きだった。
それは間違いなく事実だ。
ウェルズ様が緑を帯びた青い瞳を細めて微笑む。
それと同時にやわらかく唇が塞がれた。
こうして私たちは、ようやく二人きりの幸せを手に入れる。長かった3年の空白を埋めるように。
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