つちのこうやのラブコメ (それぞれ別々にお読みいただけます)
クラスの美少女委員長に「あけおめー!」と言われて何事かと思ったら年賀状配達バイトを頑張りすぎて筋肉がついたのでシルエットだけクラス一のイケメンと完全一致して間違えられただけだった
平凡な高校生である俺、城山悠はお金が欲しいと思った。
なぜなら某巨大イベントで同人誌などを買いすぎてしまったからである。
しかし! 俺は既にお金を得るための準備をしている。
そう。それは年賀状配達バイト。
俺はバイクの免許を持ってないし、チャリで配達することになるのだが、気合いで何とかなるだろう。
というわけで、頑張って働いてきます。
☆ 〇 ☆
時は過ぎて。
今日から新学期ということで、俺は朝から学校に向かっていた。
足取りは重い気分だけど軽い。
無駄に筋肉がついた証拠だ。
陰キャだったはずなのに年賀状配達バイトで一変。
俺は筋肉質で、シルエットだけは一人前どころか、モテる要素しかない者になっていたのである。
中身は何も変わってないのに。
教室に入ると、クラスの男子が俺を見て
「あれ、吉田……? じゃねえ!」
と驚いていた。
ちなみに吉田って言うのはクラス一イケメンと話題の男子である。ちょうど身長こそ俺と一緒なものの、彼はスポーツマンのような雰囲気を兼ね備えているので、俺とは全然違う雰囲気のはず……だったけれど。
今間違えられたってことは……
「おまえ、まさか筋肉ついてシルエットが吉田と完全一致してね?」
「マジ?」
どうやらそういうことらしい。
しかも、今日は吉田は風邪で休みらしい。
なら、なおさら俺が吉田だと勘違いされそうだ。
なぜって、俺はそもそも普段から存在感薄いからさ。
吉田がいなくて俺がいる世界線っていうのは、みんな想像しないもんなのよ。
「あけおめー!」
ほら、女子も俺に声をかけてきたぞ。
クラスの美少女委員長の小山さんだ。
小山さんは優等生な感じで眼鏡をかけている。
が、今日はかけてない。
視力は悪いはずなので眼鏡をかけてないなら……当然俺と吉田を間違えるってわけ。
てか、吉田は小山さんにこんなに明るく挨拶されてんの?
すごすぎだろ。
俺と見える世界が違いすぎだろ。吉田が逆立ちすれば普段の俺とトントンか?
「あの、俺……」
「あ、ん? ほんとだ! 似てて間違えましたすいません」
最後のほう丁寧語になるの陰キャに対する反応としてリアルだな。
なんだ。やっぱり俺の中身は変わってなかったってことだ。とりあえず、今日家に帰ったら今期のアニメ何見るか決めよ。
☆ 〇 ☆
☆ 〇 ☆
「で、それがきっかけで、初めて城山君にタメ語で話しかけることに成功したの! 普段だったら何か話せても丁寧語なのに! 私、好きな人には丁寧語になっちゃう体質だからさ」
「あそう」
「すごいでしょ」
「いや……ていうか小山の恋愛の進むスピードって、ボルボックスの全力疾走くらいなの?」
「それよりはちょっと速い」
「あ、遅いってことすね」
「そりゃそうでしょ。でもしょうがなくない? だって、城山君だよ。あの、モテすぎてみんなが話しかけられないでいる城山君」
「あれ、城山君ってそんなポジションだったっけ。クラスで」
「そうよ。あなた知らないの?」
私はため息をついた。
ちょっとクラスで浮いてるけど絶対実はかっこいい城山君。はー尊い。いつか付き合えたらなあ……。
☆ 〇 ☆
☆ 〇 ☆
☆ 〇 ☆
「っていうオタク気質な両親から生まれたから私もオタクなわけですよ」
「ほう。なるほど」
もうすぐ新学期が始まるという1月7日。
今年初めて一緒のクラスになってから、オタク趣味が合うという理由で仲良くなったクラスメイトの女子の城山の家に俺は招かれていた。そしてごろごろしている。
城山はとても可愛くて余裕で俺は意識しまくってるのだが、向こうは俺のことをオタク友達としか思ってなさそうである。
「それで……貸してた漫画は全部読んでくれましたか?」
「もちろん。ちゃんと読んだぞ。ちなみに感想と考察だけで2時間ほどはしゃべれちまうな」
「えへへ。なら私と合わせて4時間ですね」
幸せそうに笑う顔は本当に可愛い。同い年だけど、なんだか可愛い後輩に見えてくる。
というのも、早口オタクっていうわけでもないのに、城山はいつも丁寧語なのである。
「そういえばなんで丁寧語なんだ? 話すとき」
「え……? それは……」
なぜか恥ずかしそうにしている。あっ、これってラブコメシーンだ。
彼女は続けた。
「それは……私がとってもママに似ているからですよ。どういう意味か、分かってくれますか……?」
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