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零華に降る雨  作者: さらに、さららに
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序章一輪の青い薔薇 第一話 出逢い

降り止まぬ雨

あやかしと人間の住まう街

仕組まれた任務

必然として消される灯火

運命と呼ぶにはあまりにも悲惨な出逢い

1輪の青い薔薇に込められた淡い想いとは


VTuber薄荷あをいの企画〖妄想マロ〗《プロポーズ編》から産まれた 恋物語


薄荷あをいに捧げる ラブレター


VTuber薄荷あをいさんのツイート⬇

https://twitter.com/awoi_hatsuka/status/1678665910306091011?t=ljIcCPZFiog4OxgOYYttGA&s=19

昼間の色鮮やかな喧騒が嘘のように

闇が世界を包み込み暗色が彩る時間

そんな真夜中を独り歩くのは好きだった

でもこの時は違った

空はどんよりと曇り

幼子が泣き喚いたような土砂降りの豪雨が降り続いている

酒が切れていなければ外に出ることも無かっただろう


 コンビニの帰り

 薄汚れた路地裏

降り止まぬ雨

雨の匂いに混じる生臭い匂いが鼻についた

俺はため息を一つつき

「またか…」そう呟いた

視線を暗がりに向ける

そこには血塗れの人影

特に珍しい訳では無い

この街では日常だ

いつものように何事もないように通り過ぎればいいだけの話

視線を向けたのはただの気まぐれか…

壁を背に座り込んでいたのは、まだ若い女性

服装からして祓魔師(ふつまし)だろう


  ん?…誰?…

  目の前にいるのは…あやかし…追手かしら……

  私はほんとに運が悪いなぁ…

 

「大丈夫か?」

何故声をかけた?

いつものように通り過ぎればいいはずだろ

そう自問しながら彼女の顔をみる

もう、意識はないか…

立ち去ろうとした瞬間

彼女と目が合った

ほっといて そう言いたげな顔をこちらに向ける

まだ意識はあるものの言葉を発するほどの気力は無いようだ

明日には物言わぬ肉塊になっている事だろう


 昨日の豪雨が嘘のように晴れ渡った朝

一軒のボロいアパートの3階の1室

女性が目を覚ます

「知らない天井、知らないベット

ここはどこ?私は何故生きてるの?」

ベットから起き上がり

「うぐっ!」身体を少し動かしだけで、全身を激痛が支配する

彼女は激痛に堪えながら両手で印を結び祝詞を唱える

彼女の全身を淡い青色の光が包み込み

その光が消えると共に彼女は全身を支配している痛みが抑えられている事を実感する

ベッドから起き上がり端に腰を下ろした

ちょうどその時

 

 トントン

扉を叩く音

扉を開けて入ってきたのは、昨日見た黒い(あやかし)

手にはパンと目玉焼きとベーコンの乗った皿を持っている

 

 軽くノックをしてドアを開ける

「あをいさん起きてる?」

彼女の名前は薄荷(はつか)あをい

血塗れの彼女を1階の喫茶店まで運びマスターを叩き起して応急処置をしてもらった

その時に名前を聞き、彼女は薄荷あをいと呻くように呟き、そのまま眠るように意識を失った

名前を呼ばせたのは魔に魅入られないため

この街は生と死の狭間を揺蕩う者に入り込む魔物もいるからだ

彼女は全身に包帯を巻き痛々しい姿で

ベッドの端に腰掛けていた

声のした方に視線を向けた彼女に

「寝てなくて大丈夫か?」声をかける

彼女は俯きながら

「大丈夫です。」と答えた

気丈な女だ

少し動くだけで意識を失いそうになるくらいの激痛が走るだろうに

あをいに朝食を手渡し

「知り合いに腕のいい闇医者が居る

動くのは辛いと思うが行くか?」

あをいの横に座り彼女の返答を待つ


  闇医者…病院ではなく闇医者を進めるって事は

  私が祓魔師だってバレてるのね…

  まぁそうか

  服装で分かるか…なら何故?

  この妖は何故私を助けたのかしら?

  私助けるメリットなんて無いはずなのに…

 

あをいは少し苦い笑みで頷いた


人と妖の住まう街《零華町(れいかちょう)

 

 真っ黒いローブを目深にかぶった性別の分からぬ者と真っ黒い妖が重なって歩いている様は傍から見ればかなり怪しげな様で妖達がひしめく零華町ではそうでも無かった


「あをいさん大丈夫?」 

黒い妖があをいに声をかける


「ええ、大丈夫です」


祓魔の秘術で痛覚を6割ほど遮断してなかったら

歩く事すら出来なかったけどね……


朱雀地区第三商店街

様々な妖が商店街を歩き様々な妖が店を開いてる

見た事も無いようものが店先に並び

見た事の無い食べ物を売る妖が客の妖と談笑してる

今まで妖と関わって来なかったあをいにとって見るもの全て新鮮な驚きで満ちていた

あをいは活気に溢れた商店街を見渡し呟く


「住み分けされてるみたいね」


商店街に人の姿は少なく人が営んでいる店は見当たらなかった

 

「違うよ」


「えっ?」


「需要の問題だよ。ここは妖が使う日用品や種族的な物を扱う店が多い。 だから人間が少ないんだよ

第一商店街は主に食品を扱ってるから、妖も人も多いよ」

 

「おう!黒いの!珍しいなお前がヒト連れとはな」

近くの妖が声をかけてくる

それに気づき鎌を売っている店のイタチに似た妖が

「おっ!黒さん珍しいですね彼女さんですか?」

にやけ顔で尋ねてきた

黒い妖が適当にあしらっているのを見ながら


  名を持たぬ妖は多い

  中には種族名すら持たぬ妖も…

  この妖は多分混妖(こんよう)

  別々の種族の妖が混ざった雑種の妖ね


「あなた名前は?」尋ねるあをいに

 

「名は捨てた」


「えっ?」

 

「好きに呼びな」


 そう言われ、あをいは妖を見つめる

遠くから見れば黒い靄を纏っているような妖

近くから見れば……ぼろ雑巾…

 

  一応実態はあるのね

  黒っぽい顔も整ってはいるわね


 黒い妖は人としての形は成していた

その全身に黒い布のようなものを生やし

頭から生えているのも髪ではなく布だ

その上ややこしい事に黒いシャツと黒いズボンを履いている

あをいは近くで漂っている妖の布のようなものを触り

 

  これは柔らかいわね

  絹かベロアのよう

  さっき触ったのは帆布のように固かったわね


黒い妖は少しこそばゆいそうに、あをいを見て

「決まったか?」


「…まっくろくろすけ」


「…却下」


「えー」


「ススワタリの別称だろ、それは」


「うーん」

再び考え始めるあをい


「ようクロノ珍しいなお前が女連れとは」


 爬虫類に似た大柄の妖が声を掛けてくる

その後ろから、これまた似たような爬虫類のような妖が

「クロノ聞いたかい!祓魔師がこの街に来てるんだってよ!怖いわね!!まぁ飫慈(よじ)様が返り討ちにしたって言うから安心だけどね」

声高に言う妖に

目を伏せるあをい

「まぁもう生きちゃ居ないと思うけど、あんたも気をつけな」

妖2人に別れを告げ

あをいの方を見る

あをいは俯きながら


「へぇ~慕われてるのね。 …マフィアのボスさん」

意外そうに言うあをい


「いや、そうでもないよ。ただそれ以上に祓魔師が嫌われているだけだ」


「…そう………そうね…」

 

「ねぇ?クロノって?」


「ん?あぁ最初は黒いのって呼ばれてたんだが、段々と省略されて最近じゃ俺の事クロノ呼んでるな、アイツら」


「じゃあ私もクロノって呼んでいい?」


「好きにしな」


賑やかな商店街を通り抜けて、寂れた裏路地を進んだ先は簡素なアパートが立ち並ぶ静かな場所

道端には枯れた植物がそのままの朽ちた鉢植え、古びたタオル、どこにでも落ちている軍手、何に使われたか分からない注射器が落ちている

壁にもたれ掛かるように座る歯のない妖がニタニタ笑い2人の動向を伺っている

その横には、ぼろ切れを纏いうずくまる人か妖か分からぬ者


壁には若者のグラフィティアートがあちらこちらに描かれ

いくつか廃墟になったアパートも見受けられる

薄汚れた廃アパートが目立つ中

目の前のアパートは手入れが行き届いてた

頻繁に誰かが出入りしているのだろう


妖の天敵の祓魔師を始末するには

ちょうどいいとこね

そんな事を考えながらあをいは支えられながらアパートに入いっていく


静まり返ったアパートの廊下

ヒトが生活している雰囲気は無い

一見すると廃アパートのようだが確実にヒトの気配はする


見張られてる?


「ここだ」

連れてこられた場所

そこは看板も何も無い

ごく普通のアパートの一室

病院とは到底思えない場所


ドンドンッ

扉を荒く叩き

「俺だ! いるか?」

暫くしてドアが開く

出迎えたのは角のかけたヤギのような妖だった


「お前か…また厄介なもんを…」

そう言って奥の診察室へ2人を招き入れる

「これはまた随分と酷くやられたね、よく意識を保って居られるものだ…まぁ治せと言うなら治すが…」

ヤギ医師は少し戸惑いながら

「治す意味はあるのかね…」

皮肉げに笑いながら、あをいを治療する

 

  …厄介…私の事か…

祓魔師である私を治療しても

どうせ殺されるのに…

そう言いたいのね

 

 怪訝な顔で治療を受けるあをいにクロノが声をかける

「大丈夫だよ、口は悪いし見た目も怪しいが腕は確かだ、それに口も固い」

あをいはクロノを見上げ皮肉げに苦く笑う

 

 零華町は表向きは安全な街だが裏では人を襲う妖と妖を捉えようとする人間が暗躍する危険な街

怪我をした祓魔師が身を隠せる場所は、そう多くない

多分同じ祓魔師にも当分は頼れないだろう

「なぁ、あをいさん もし良かったら俺のアパートでしばらく療養しないか」


クロノを不思議そうに見つめるあをい


この妖は何を考えているのだろう

私を助けたところでなんのメリットもないはず

なのに


「優しいのですね

ありがとうございます、お言葉に甘えさせて頂きますね」


  あをいは優しく微笑みながら、それを了承した

  その目の奥に警戒の色を忍ばせながら…


拙い文章ですが読んで読んでくださり、ありがとうございます

心より感謝致します

続きます!

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