隠れ城のカルゥァン
金のライオン月を見て
我が世たれぞ空に吠え。
黒のライオン月を食べ
我が世たれぞ空に吠え。
隠れ城のカルゥァン
俺の名はカルゥァン
赤毛で髪はくせ毛がとれず、それでいてあまり風呂にもはいらねぇから、きっと乞食と間違えられてんじゃねぇかな。
だろ?そこのあんた?
おっと、この時点で行っちまうならもったいねぇ。少しだけ耳を傾けてみなよ。
なんせ俺はこの国の情報屋。
俺の親父は、この国の南守り城の城主様なんでね。
他国の情報を入手していち早く伝えねぇと、南から敵が攻めてきたらそれこそ国の存続に関わる。
だから常に耳をピンとたててるんだよ。
よって俺も情報通ってわけ。
まぁ難しい話はよしとしよう。
俺と親父は別人生。
俺は気ままに街を歩き、自由に人生を謳歌する感じ?
じゃ、俺の話はここら辺で終わりにして、そろそろ話の本題に入ろうか。
そう、俺の人生に絡む面白そうな人たちの話3本
え?つまんなかったらさっさと帰るって。
いいさ、いいさ、
どうせ今夜はそのボロ屋の軒下に転がってる予定だから。パンのかけらでも置いてって。
ピエロ
ピエロは金の髪を絡ませている。
王は恐ろしく綺麗な金の髪を持つ。
何故かこの国は、王以外に金の髪を持つやつを嫌う。
でもさ、持ってるやつは思うわけ。
(俺って、王の血が流れてんじゃねぇの?)
ってさ。
「俺たちは、王の子孫なんだ」
ピエロは真っ白な化粧にのっぺりと付けた赤い口紅を肉につけながら、それを頬張る。
肉汁がそこらじゅうに散らばるが気にしない。
下手に塗りたくった白い化粧が肌に油絵具のように乗っている。
「だからよ。迫害されるなんて、そりゃ理不尽なわけよ。」
「ふう〜ん。」
カルゥァンは、興味なさげに相討ちする。
彼が興味があるのは、今晩の飯を目の前のピエロから頂けるのかどうかだけだ。
「で、情報屋。
今日はまた金になりそうな話持ってきただ ろうな。」
ピエロが喉を鳴らしてワインを食らい、赤や黒で煌びやかに飾られた袖で口をふく。
カルゥァンはゴクリと唾を飲み、ポケットからなにやら炭で書き殴った古い布を取り出した。
ピエロはそれを彼の手からむりしとると、眼球を見開いてそれを読み始めた。
まったく自然な様子で、カルゥァンは開いたグラスに彼のワインを注ぎ、食べ残した肉の骨をしゃぶった。乾いたパンはポケットに詰めるだけ詰める。
「ふうん。王城下城下町では、
黒の集団に地下の集会を荒らされてんのか。」
「ふぁうみたひだね。」
皿に乗っているチップを頬張りながらそっけなく答える。
口の中の物をワインで流し込むと、唇を軽く舐めながらカルゥァンは付け加える。
「黒の集団の正体はまだ掴めない。
そして、
地下の集会はピエロを主導者に盛り上がってる様子。」
義務的に伝えると、カルゥァンは空の皿をピエロの前に出して、木の器に注がれたスープに手を伸ばす。
ピエロはその手を掴み、薄汚れた銀貨を握らせると、冷えたスープを一気に飲み干した。
「黒の集団の根拠地。
それから正体を調べろ。見つけたら金貨3枚だ。」
「命懸けの情報の割に安いね。」
器についたスープをポケットから取り出したパンにつけ口に運ぶ。
全て拭き取り、ピカピカになった器を前に、カルゥァンは立ち上がる。
「黒の集団は、地下の集会を荒らして、
皆殺しにしてるのに。おぉ怖い。」
わざとらしく身震いすると、睨むピエロに舌を出す。
「同胞が集まる場所を狙う黒の集団。
あんたは、さぞ悔しかろうよ。」
同情の言葉を上辺で吐き、カルゥァンはヒラヒラと手を振った。
店を出ると、石畳の長い道が港町の城に続いている。
道の両脇にはいろいろな店が並び、店先のランタンが風に揺れる。
潮風が彼の髪を更にぐしゃぐしゃに乱す。
カルゥァンは明かりを避けるように裏通りに滑り込むと、崩れかけた家の軒にある長椅子に体を預けた。
細い月が雲の切間から見えた。
金のライオン月を見て
我が世たれぞ空に吠え。
黒のライオン月を食べ
我が世たれぞ空に吠え。
「俺は1日好きなように過ごせれば幸せだなぁ。」
カルゥァンは大あくびをして、長椅子にだらしなく寝転がり、そのまま深い眠りについた。
情報はつづく




